イスラエルのユダヤ人社会にとって、新年は特別な時期です。ユダヤ教の新年であるロシュ・ハシャナは、ユダヤ教の最も重要な祭りの一つで、秋の到来を象徴し、また雨季の始まりを告げる重要な時期でもあります。
ユダヤ暦の一年の幕開けは通常、西暦の9月から10月にかけての間に訪れます。2023年は9月15日の日没から新年となり、イスラエルのユダヤ人コミュニティはこの時期を祈り、祝福、家族の集いで迎えます。ロシュ・ハシャナは、新しい年の幕開けと共に、個人的な反省と改善、また共同体の協力と連帯の機会でもあります。
新年の時期がイスラエルにとって特別である理由は、気象的な要素にも関連しています。ロシュ・ハシャナの後、通常、イスラエルは雨季に突入するからです。また、ユダヤの祝祭日は農業カレンダーにも密接に結びついており、乾燥した夏から雨季への移行は農業にとって特に重要で、土地と水の恵みと、イスラエルのカルチャーと環境の調和を象徴しています。
一方、イスラエルの国土の6割以上を占める砂漠に降る雨は、非常に危険な自然現象を引き起こすことがあります。砂漠地帯では乾燥した土地が雨水を急速に吸収できず、また土地が硬いため、雨水は地表を流れながら土砂を巻き込んで巨大な土石流を形成することがあるためです。旧約聖書の創世記にも、大洪水にまつわる有名な物語「ノアの箱舟」がありますね。
2018年11月には、イスラエルの隣国ヨルダンの世界遺産「ペトラ遺跡」が洪水に見舞われ、土石流が発生し観光客などが亡くなる悲劇が起こりました。同じ洪水で国境を隔てたイスラエル側も被害を被っており、イスラエルの南北をつなぐ重要ルートである国道90号線が一部陥没しました。市街地も例外ではなく、急激な降雨により排水機能が限界となり、特に海沿いの街では洪水被害に見舞われることもあります。砂漠地域での雨季や降雨時には、警戒と適切な安全対策が不可欠です。
ただし、通常は雨季といっても日本のように多くの雨が降るわけでもなく、一般的にこの時期は厳しい夏が和らいで涼しい気温が戻り、アウトドア活動や自然の美しさを楽しむ絶好の機会となります。例えばエルサレム旧市街の石畳は、夏季は照り返しが厳しく散策も苦痛ですが、ユダヤ新年以降は落ち着いて観光できます。シティマラソンなどの屋外アクティビティが楽しめる気持ちのいい気候が続き、冬季も多くの花が咲いているため、日本からはイスラエルの花を見て周るツアー客も訪れます。
この時期のイスラエルを旅行するときは、天気予報をこまめにチェックし、雨が降りそうなら予定を変更して安全を確保しましょう。砂漠の国には不要と思われがちですが、傘、レインコート、長靴などの雨具は必携です。また、観光地の施設などの一般公開時間が変更となったり、短縮されることにもご注意を。
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