ユダヤ暦5784年が2023年9月15日の日没からはじまりました。その10日後の9月24日の日没から、ユダヤ教最大の祝日の一つであるヨム・キプール(贖罪の日)がやってきます。
断食や祈りを通じて贖罪を求める日とされ、一切の労働をせず25時間の断食をします。この間は車の運転もすべきではないとされるため、道路から車が消え、公共交通機関や国際便の発着までもがお休みとなります。ここではヨム・キプールの概要や歴史、この日の過ごし方について說明します。
ヨム・キプールとは?
ヨム・キプールはユダヤ教において一年で最も神聖な日であり、神と魂の本質に最も近づく日とされています。2023年は9月24日の日没から、25日の日没1時間後までの約25時間にあたり、その間は飲食を控え、体を洗ったりローションやクリームを使わず、革製の靴を履かず、車の運転を含む労働をせず、夫婦の営みを慎むべきとされます。宗教家たちは、一日中シナゴーグで許しの祈りを捧げながら過ごします。
ヨムキプールの起源
ヨム・キプールの起源については、旧約聖書の出エジプト記に記されています。天地創造から2448年(紀元前1313年)、それまで数百年に渡ってエジプトで奴隷として使役していたユダヤの人々が出エジプトを果たしました。しかしそのわずか数カ月後、彼らは金の子牛像を崇拝するという罪を犯しました。モーセがシナイ山で神から十戒を受け取るのに40日を要しましたが、その間麓で待っていたユダヤの民はなかなか帰ってこないモーセにしびれを切らしはじめました。そして、全民衆に貴金属を供出させ、鋳物の金の子牛像を作ったのです。
これを知った神は激怒し、一度は民を滅ぼし尽くすとまで言いましたが、モーセが働きかけ思い直しました。モーセが下山すると、民は宴に興じながら金の子牛を拝んでいたため激しく怒り、十戒の石版を破壊し、金の子牛を燃やし、それを粉々にして水に混ぜて民に飲ませ、また偶像崇拝に加担した民の殺害を命じました。これにより3千人の民衆が亡くなり、モーセが山を下りた日(ティシュレイ月の10日)は、永遠に贖罪の日、ヨム・キプールとして知られることになったのです。
どうやって過ごす日?
イスラエルのユダヤ人の半数は世俗派であり、普段はユダヤ教のしきたりを気にせず生活する方が多いのですが、世俗派でもこの日は断食をする人が多いのが興味深いところ。「いいデトックスになる」「自分を見つめ直すいい時間だ」などと考えている人が多いようです。一方、路上から車が消えるため、断食をしない子どもたちにとっては自転車遊びの天国のような日となります。高速道路を含む車道を自転車や徒歩で散歩するという、非日常を楽しむ家族連れやグループで賑わいます。
ヨム・キプールが終われば、わずか5日後に続くスコット(仮庵の祭り)に使用するスッカ(スカーとも)の建設をはじめなければいけません。ユダヤ教の新年期間は、沢山の祝日が続く大変忙しい時期なのです。
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