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BUSINESS

【連載】ワインの世界で活躍するイスラエルの女性たち Vol.3

ノア・シマン・トブ(ワインメーカー ”ヴァンダーホーンワイナリー”)インタビュー

by Sapir Ben-Noun |2024年04月09日

本連載は、イスラエルのワイン産業における注目すべき女性たちにスポットライトを当てるシリーズです。Vol.3 および4 では、ワインメーカーである 2 人の女性に焦点を当てていきたいと思います。本章では、ワイン造りには比較的新しく、今年最初のヴィンテージに取り組んでいるところだという ノア・シマン・トブさんにお話を伺いました。


ノアさんインタビュー

ノア・シマン・トブさん

ーーーご自身の経歴と、なぜワイン造りのキャリアを追求しようと思ったのか教えてください。


私の名前はノアです。シアー・イェシュブからです。最近ナハラルに移り住んで、今はこの地域からワイナリーで働いています。ワイン業界に関わって7年になります。


きっかけは、レホヴォトで生化学と食品科学を専攻したことでした。私はいつも美食や味覚に関するものに情熱を持っていたのですが、在学中にワインの基礎コースを受講したおかげで、ワインがとても好きになりました。ワイン造りが私の天職だと思ったのはそのときです。さらに勉強を続けて、ペルター・ワイナリー (Pelter Winery) でワインメーカーとして幾つかのヴィンテージで働きながら、テルハイ大学でワインの修士号を取得しました。自分の専門性を高めたいと思ったので、海外留学として、アメリカのオレゴン州に行きました。


ーーーなぜオレゴンだったのですか?


オレゴン州はとても美しく魅惑的な場所で、世界で最も好きな場所のひとつ。そこで女性のワイン生産者が大きな存在感を示すのを目の当たりにして、それが心に響いたからです。


前から伝統的なヨーロッパのスタイルとは違うワインを造りたいと思っていて、あるオレゴン産のワインを試飲してから、このようなワインが自分のワインにぴったりと思いました。その後、偶然にネットでそこでワイン造りの仕事の機会を見つけて、オレゴン州で8ヶ月間過ごした後、フランスのブルゴーニュで剪定を専門にするインターンシップを経験しました。その経験を経て、いよいよ自分自身でワイナリーを設立する時が来たと感じたのです。今年は自分のワイナリーで初めてのヴィンテージをリリースすることになりました。


ーーーおめでとうございます! ノアさんの作ったワインはどこで手に入りますか?


最初のヴィンテージなので、量はまだ比較的少ないんです。今のところは主にレストランやホテル、個人的なつながりでワインを販売しています。


ノアさんのワイナリーで作られたワイン

ーーー「私のワイナリー」ではなく「私たちのワイナリー」と表現しましたが、「私たち」とは誰のことですか?


私はワイン造りとブドウ畑の仕事を担当していますが、舞台裏で働いている人がいます。私のパートナーのヤハブです。ワイナリーの名前「ヴァンダーホーン」も彼の苗字に由来していて、今私の苗字にもなっています。彼は全ての工程を通じて大きな支えとなってくれていて、ワインのラベルにも彼にまつわるストーリーが記されています。


ーーーとても興味深いです。 ラベル、そして特にイラストに興味をそそられました。 その背景にあるストーリーを教えていただけますか?


このイラストは、意味のあるものを作りたいという私たちの願いから生まれました。ヤハブの曾祖父は農学者で、1913年にイスラエルに移住しました。ユダヤ人ではなかったのに、オランダから中東へ旅をして、最終的にメトゥラの近くの「クファル・ギラディ」に定住しました。実は、ヤハブと私は10月7日までそこで暮らしていました。曾祖父は農学とブドウ栽培の専門家として有名で、バロン・ド・ロスチャイルドのためにワインを生産したこともありました。


デザインの過程で、デザイナーがヤハブの曽祖父が自分の曾祖父に宛てたお手紙を偶然見つけました。その手紙には、ブドウ畑とブドウ栽培の実践のことが詳しく書かれていました。手紙にあったヤハブの曾祖父の人柄とストーリーが、今日のイラストにインスピレーションを与えています。このイラスト、何に見えますか?


ーーーひげを生やした男性かなと思ったのですが…?


イラストの人物について多くの人に質問を受けますし、中には私だと思う人もいます。ヤハブの祖父を描いているにもかかわらず、この曖昧さは意図的なものでした。抽象的でミステリアスで、考えさせられるような人物を目指しました。伝統とモダンを融合させた、私が造るワインの特徴を反映しているとも思います。この二面性は私のワイン造りのスタイルであり、そこが型破りだと考えています。


ーーーあなたのワインとその特徴について説明していただけますか?


私のワインは伝統的な技術と現代的な技術の融合が特徴です。たとえば、私はあまり知られていないブドウ品種を使います。白ワインはルーサンヌ 80%とマルサンヌ 20% で構成されています。一般的にルーサンヌはオークの影響が強く、オイリーな特徴を受けているブドウ品種ですが、私のワインでは、レモン、グレープフルーツ、アロイシアのアロマが自慢で、もっと軽くてフレッシュです。ルーサンヌでは全房発酵をして、マルサンヌでは1時間のマセラシオンなど、さまざまなテクニックを用いています。さらに、ロゼワインは 100% ネッビオーロから作られていて、ユニークな美食体験を提供します。


ブドウ畑の手入れをするノアさん

ーーーイスラエルではネッビオーロ、特にロゼワインは珍しいですよね。


その通りです。ネッビオーロは、ネクタリンやアプリコットのようなフレッシュでトロピカルな果実の香りをもたらすので、典型的なロゼワインとは違います。食事と合わせるのに適した複雑なワインでありながら、単体でもペアリングなしで飲めます。今も、カルボニックマセラシオンと伝統的な手段を駆使してシラーを造っている最中です。来年にはワインが飲めるようになると期待しています。


ーーーブドウは購入しているのですか?それとも栽培プロセスにも関わっているのでしょうか?


購入していますが、剪定から栽培まで深く関わっています。


ーーーイスラエル北部でワイナリーの設立を選んだ理由は何ですか?


この土地で生まれたわけではないのですが、素晴らしい地域だと感じていて、ワイナリーにもこの地域のスタイルを反映させたいと思っていました。北部に惹かれるのは、ブドウ栽培の選択肢が多様であるのと、テロワール(ブドウ畑を取り巻く自然環境要因)の幅の豊かさからです。さらに、この地域の標高はブドウの品質に影響を与えることも重要です。


ーーーワインメーカーとして大変なことはなんでしょうか?


毎日が挑戦ですが、楽しいです。特に収穫期は信じられないほど忙しいく、常にブドウ畑にいてブドウを味わいながら、沢山の作業に追われます。今年は特に、これが私の最初のヴィンテージなので、必要な機械をすべて手に入れてプロセスを組み立てるなど、ゼロから始めなければなりませんでした。今後についても政治情勢の影響で、北部国境近くのブドウ畑に関してはまだ不確実性が残っています。


ーーー女性ワインメーカーであるがゆえに直面した困難はありますか?


自分の性別に起因する困難は特に感じたことはありません。性別にこだわる必要がないからです 才能ある男性がいるように、才能ある女性ワインメーカーもたくさんいます なので、個人的には難しいとは感じていません。


ーーー今後の計画や目標はありますか?


たくさんありますよ! 今年はワインの生産を拡大して、ボトルの量を増やしたいと思っています。そして新しい個性的なワインを2つ紹介することを目指しています。現在、テル・ハイでワインを教えていますが、将来的には来客やゲストのために自分のスペースを持つことを望んでいます。これからも一歩ずつ前進していくつもりです。




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