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ART

白と黒で世界を描く ― ピルペレド 【前編】

by 中島 直美 |2026年09月10日

白と黒の2色だけで描かれたアート。テルアビブの街角から世界へ。2つの色だけを使って独自の世界を描き続け、PUMA、Nespresso、Coca-Cola Zero、Chivas Regal、Absolut Vodkaなど、世界的ブランドとのコラボレーションも手がけてきたイスラエル人アーティスト、ピルペレドにインタビューしました。 


作品の前に立つピルペレド

初めてのコミッションワークは高校生

子どもの頃から絵を描いていたピルペレド。そんな彼は「絵を描くことが職業になるとは思ってもいなかった」と言いますが、高校生のときにある転機が訪れました。人生で初めて、とあるパンクバンドからコミッションワークの依頼が来たのです。このバンドのために作ったポスターは、完成するとテルアビブの街中に貼られました。自分の作品が至る所にあるのを誇らしく思い、バスに乗って街を回ったと、当時を振り返ります。


PUMAとピルペレドのコラボレーション
PUMAをはじめ世界の有名ブランドとのコラボレーションも豊富なピルペレド。

そして、この作品が次の機会に繋がります。ピルペレドの作品を見たミュージシャンから、アルバムのカバーを作ってほしいと問い合わせが来たのです。さらに、別の人からもポスター作成の依頼が届きました。


ピルペレドの自宅兼アトリエに飾られた作品

「本当に信じられない!そう思ったのを覚えているよ。僕の趣味にお金を払ってくれる人がいるなんて、って笑ってた。でも、その夜、神様に祈ったんだ。これが僕のやりたいことだ、って」


自宅兼アトリエ壁に飾られていたピルペレドの作品。
部屋に飾られていたピルペレドの作品。

シグネチャーは白と黒

彼の大きな特徴である白と黒の作風。一体どのようにして生まれたのでしょうか。パンクバンドのポスターを作った時、使えたのは安いプリンターだったと言います。予算も限られていたため、当時は白と黒だけを使うのが合理的でした。その後、シルクスクリーンにも挑戦し、カラフルな色を使ってTシャツを作成したこともあったといいます。


白と黒、光と影から次々と姿が生まれる、ピルペレドの作品 

その中でも、ピルペレドが「着たい」「この作品には責任が持てる」と感じ、実際に完売したTシャツがありました。それが、黒色でプリントしたウサギのTシャツだったのです。これがきっかけとなって、白と黒を使った作風が生まれました。それ以来20年近くたった今日まで、この2色を使って作品を続けています。


ピルペレドの平面作品を巨大なインフレータブル作品として立体化。 

ストリートアートとインスピレーション

彼がこれまで制作してきた作品には、子どもや動物が数多く登場します。インスピレーションはどこにあるのかと聞くと、迷わず「『人』に尽きる」と答えました。

「人が大好き。友達も大好き。家族も大好きなんだ」

子どもの頃からアートに力をもらってきたというピルペレド。自分もまた、人に力を与えられるアーティストでありたいと語ります。


そしてアートは、彼自身にも多くの出会いをもたらしました。

「アートのおかげで、世界中で本当にたくさんの人たちと出会うことができたし、いろいろな国へ行くこともできた。アートは、人と人を結びつける最高の手段だと思っています」

「アートがなかったら、一生出会うことのなかった人たちもいます」


ハイファの街角にあったピルペレドのストリートアート
2014年、ハイファの街角。写真はピルペレドのサイトから。

訪ねた土地に刻まれた歴史もアートの一部に〜北海道・ニセコに描かれた絵

その言葉どおり、ピルペレドは人とのつながりを通して、世界各地で作品を発表してきました。ドイツやフランス、中国などで展覧会が開かれ、アフリカや日本にも壁画が残されています。作品を見つけた人が「ピルペレドの絵を見つけた!」とSNSに投稿してくれることもあるそうです。

「僕の作品のほとんどは、僕の手元から旅立ってしまった。でも、そうやって誰かが見てくれていることを知れるのが、またいいんだ」


その中でもピルペレドが特に懐かしそうに話してくれたのが、北海道・ニセコでの思い出です。

ピルペレドは、北海道に移住したイスラエル人女性から依頼を受け、夫婦で経営するカフェの壁に絵を描くことになったそうです。 

「行く前はまだ何を描くか決めていなかった。けれど北海道で暮らす人々と出会い、その土地の話を聞かせてもらって、そこから絵のアイデアが生まれた」


北海道ニセコのカフェに描かれたピルペレドの絵
北海道、ニセコのカフェに描かれた絵。アイヌの伝統的な鉢巻を思わせる頭飾りを絵にも取り入れたと言います。

壁に描かれたのは、キツネにまたがる子ども。子どもの頭にはアイヌの伝統的な意匠を思わせる模様の入った布が巻かれ、Tシャツにはじゃがいものイラストが描かれています。

「北海道の大地に刻まれた歴史や伝統とつなげたかった」と話すピルペレド。じゃがいもは、カフェのオーナーのお父さんがじゃがいも農家だったことから、胸元にあしらったそうです。

壁一面に描かれた大きな絵に圧倒されますが、細部に散りばめられたこだわりもまた、ピルペレドらしく、何重にも楽しませてくれます。


ニセコのカフェに描いた絵には、日本語でもサイン。

「あの時、娘さんは1歳だったけれど、今ではもう大きくなっているんだよ。あれは素晴らしい体験だった」

そう言って、懐かしそうに絵を見せてくれました。
「日本が大好きで、自分のアートも日本に影響を受けていると思う」と語るピルペレド。

「日本で展覧会を開いたり、日本のアーティストと一緒にプロジェクトをしたり。そんな機会があれば、夢のようです」

いつか日本で、ピルペレドの新しい作品が生まれる日を楽しみにしたいと思います。


ピルペレドデザインのサングラスのCM。CMではイスラエルの有名な大御所歌手、オメル・アダムと共演しています。

ピルペレド公式サイト https://www.pilpeled.com/

ピルペレド公式Indtagram https://www.instagram.com/pilpeled/