間もなくやってくるクリスマス。12月になると街のあちこちでクリスマスデコレーションを見かけるようになり、世界各地でクリスマスのお祝いムードが広がります。本来、キリスト教の行事であるクリスマスですが、現在では宗教問わず、多くの国でクリスマスがお祝いされています。
一方、イスラエルはほとんどの人がユダヤ教なので、ユダヤ人の住む町ではクリスマスをお祝いしません。しかしアラブ系クリスチャンの住む町も多く、エルサレムのナザレ地域、ハイファ地域などではクリスマスを祝います。
そしてこの時期ユダヤ人の住む街でも、クリスマスと同じく街中にはデコレーションが飾られ、お祝いムードが漂います。その理由は一体何なのでしょうか。これは、通常クリスマスより前に始まる「ハヌカ」と呼ばれる、ユダヤ教の祭事を祝ったものなのです。今回は光の祭典とも呼ばれる、ユダヤ教の祭事「ハヌカ」をご紹介します。
「ハヌカ」の由来
ヘブライ語で「ハヌカ(Hanukkah/Chanukah)」は「献身」を意味し、この祭事はエルサレムの聖なる神殿の奉献を記念しています。紀元前164年、ユダヤ人戦士であるマカバイ(マカビイ)家がギリシャのセレウシディアン軍に奇跡的に勝利したことを祝う祭りです。
当時、ユダヤの人々は、改築されたエルサレムの聖なる神殿のメノラー*を灯すため、純粋な油を探していました。しかし彼らが見つけることができたのは、1日分の精製油のみ。そしてここで奇跡のような出来事が起こります。この1日分の油は、8本枝の燭台のキャンドルに8日間火を灯すことができたのです。この出来事は「ハヌカの奇跡」と呼ばれ、祝日として引き継がれていくことになりました。
ハヌカはユダヤ暦に基づいてお祝いされるため毎年日程が異なり、2022年は12月18日(日)から12月26日(月)までがハヌカにあたります。
*メノラーとは、ヘブライ語でランプを意味し、聖書によると純金で作られた7つのランプ(6つの枝)の燭台で、もともとはエルサレムの第一神殿と第二神殿で使われていました。メノラーは、最も純粋な品質のオリーブオイルを使用して毎日点灯しました。この燭台は、古代からユダヤ教とキリスト教の両方の象徴でしたが、現代では、それは主にユダヤ教の象徴と見なされており、現代のイスラエル国家の紋章です。
ハヌカの祝い方
ハヌカは8日間にわたってお祝いされ、各家庭で「ハヌキヤ」と呼ばれる9本の枝付き燭台に、毎晩1本ずつハヌカのろうそくを取り付けて火を灯します。9本のうち8本は、8夜を象徴しており、毎晩前夜より1本多くのキャンドルに火を灯し、最後の夜には8本すべてのキャンドルが点火されます。9番目の枝のキャンドルは「シャマシ(shamash)」と呼ばれ、他の8本のキャンドルを点火するために使われます。
ハヌキヤはドアや窓の近くに置かれ、ろうそくを灯す際には宗教的な儀式として聖書、詩編の朗読や賛美歌を歌うのが習わし。またユダヤ教の法律では、ろうそくを灯してから1時間の労働を禁じています。この時間には、家族学習としてハヌカについて子どもたちに教えたり、みんなでゲームをしたり、歌を歌ったり、贈り物交換をしたりするのが伝統的な過ごし方です。
ハヌカの食事
ハヌカでは、レビバ (ラトケス)と呼ばれるジャガイモパンケーキやスフガニアと呼ばれるユダヤ式穴なしドーナツのような、油を使った料理を食べる習慣があります。これは奇跡的な油を象徴しています。
ハヌカの伝統的な遊び
ハヌカには、ヘブライ語の「a Great Miracle Happened There(そこで/ここで大きな奇跡が起こった)」の頭文字が書かれた「ドレイデル」と呼ばれる4面のコマでコマ遊びをするのが伝統的です。チョコレートコインを賭けて、ドレイデルを回し、着地した文字に基づいて勝ち負けを決めます。
ハヌカ時期の街の様子
ハヌカの時期のイスラエルは、街のあちこちにハヌキヤが飾られ、毎日灯されるろうそくの火でキラキラと輝き、とても神聖な面持ちです。またエルサレムではハヌカデコレーションに加えて、クリスマスデコレーションも飾られ、非常に美しく輝きます。
また各家庭やシナゴーグからはハヌカを祝う歌声が聴こえ、人々の心を和めます。
ユダヤ教にとって、ペサハ(過越祭)、シャブオット(週の饗宴)、スコット(仮庵祭)、ロシュハシャナ(新年)、ヨムキプール(贖罪の日)と並んで、重要な祭事のひとつであるハヌカ。この時期にイスラエルを訪れる機会があったら、ぜひ本場のハヌカの美しさを満喫してくださいね。