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LIFESTYLE

ユダヤ教の光の祭典「ハヌカ」とは?いつ?どう祝う?

by 木村 リヒ |2020年12月08日

日本で12月といえば、やはりクリスマスでしょう。12月になると日本の街並みはすっかりイルミネーションに包まれ、クリスマスのお祝い雰囲気が漂います。しかしイスラエルでは、イルミネーションはなくいつもと変わらぬ街並みです。変わったのはパン屋のメニュー。この季節になると、普段のバリエーションに加えドーナツが販売され始めます。


イスラエルでハヌカの時期に食べられるドーナツであるスフガニアとスフィンジの写真

それもそのはず、イスラエルの多数派はユダヤ人なのでクリスマスは祝いません。しかし同じ時期に「ハヌカ」と呼ばれる光の祭典を祝います。 今回は「ハヌカ」とはどんな祭りなのか、どう祝うのかご紹介します。


光の祭典「ハヌカ」の歴史・由来は?

ハヌカとは、紀元前一世紀に起こったユダヤ人によるギリシャ軍撃退を祝う祭りです。簡単に説明すると、その昔、イスラエルはセレウコス朝(ギリシャ軍)によって支配されていました。支配は厳しいものであり、ユダヤ人は宗教的しきたりを一切禁止されていました。支配にうんざりしたユダヤ民族の一部、マカバイ家が団結し、ギリシャ軍(セレウコス朝)を反撃。これをマカバイ戦争を呼びます。マカバイ戦争はとても勝ち目があるものではなく、数々の奇跡があり勝利しました。ハヌカではその勝利と奇跡を祝うのです。


「ハヌカ」はいつ祝う?

ハヌカはユダヤ暦に沿って祝われます。なので毎年日程が変更するのが特徴です。行事自体は8日間続きますので、今年、2021年は11月28日から12月6日まで続きます。冬の時期にある唯一の行事なので皆待ち遠しく思っています。

では、実際にハヌカはどう祝われるのでしょう?



窓際をライトアップ、ロマンチックなろうそくのしきたり

ハヌカが光の祭典と呼ばれるのには理由があります。ハヌカの8日間を通してろうそくを灯すのです。この風習は「ハヌカの奇跡」が由来となります。古代イスラエルのユダヤ神殿では、メノラーと呼ばれるキャンドルスタンドを点けるしきたりがありました。しかしセレウコス朝(ギリシャ軍)に支配されていた数年はユダヤのしきたりが禁止されており、メノラーをつけることが出来ませんでした。


ギリシャ軍撃退後、新しく神殿を復活させようとメノラーに光を灯すしきたりを再開します。しかし油がなく火がともせません。ようやく見つけた油のツボには、1日分の量しかありませんでした。しかし、ここで「ハヌカの奇跡」が起こり、1日分の油でなんと8日間メノラーに火を灯すことが出来たのです。

この出来事に由来して8日間を通してろうそくをつけます。


ハヌカの時期に点灯されるハヌキヤと呼ばれるキャンドルスタンド

ハヌキヤとよばれるキャンドルスタンドに毎日ろうそくをともすのですが、1日目は1本のみ(正確にはハヌキヤをつけるためのろうそくを含め2本)、そして毎日一本ずつ増やしていき、祭典の最終日、8日目には全てのろうそくに火がつけられます。


日没になると家族皆で祈りを捧げ、ろうそくに火を灯します。この際に歌を歌ったり、祈った後に一緒に晩御飯を食べたりします。

家族だけではなく友達や仕事仲間とろうそくを灯すこともよくあります。


ハヌカの時期の知人の誘い方はとてもロマンチック。「1本目のろうそくを灯す日に会おう」と誘います。これは、ハヌカ1日目に会いましょうという意味です。

このようにたくさんのお誘いを受けたり、招いたりするのでハヌカの時期はたくさんの旧友、知人や親せきと会うことができます。

このハヌキヤは窓際に置くのがしきたり。外から家の中の明かりを見ることもでき、寒い道端を歩いている際にろうそくの灯った暖かそうな窓際を見ると心落ち着くものがあります。



▲マサダ国家公園でもマイニリハヌキヤに火を灯します。


▲神殿のメノラーの復元。現在でも旧市街のユダヤ人地区で見ることが出来ます。


エルサレム旧市街のハヌキヤ。特大サイズです。
エルサレム旧市街のハヌキヤ。特大サイズです。

太りすぎ注意、揚げ物を食べる行事?!

ハヌカが好かれている理由のうちの一つは料理。驚くことに「揚げ物」を食べる風習があるんです。「ハヌカの奇跡」の際に見つけた油のツボが由来で、油を使った揚げ物を食べます。


ハヌカの時期に食べられる料理であるレビバ(ラトケス)と呼ばれるポテトパンケーキの写真

ハヌカにしか食べられないユダヤ式ドーナツ「スフガニア」

ユダヤ式穴なしドーナツ。冬になると至るパン屋でスフガニアが販売され始めます。伝統的なスフガニアは丸くこねた揚げたて熱々のドーナツに甘いキイチゴジャムを入れ粉砂糖をふりかけ食べます。揚げたてのスフガニアは絶品。ほっぺが落ちるとはこのことです。


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最近の傾向としてはおしゃれなスフガニアが多く、特にチェーンカフェ店、「ロラディン(ROLADIN)」のスフガニアは大人気です。


オススメは濃厚ソースをスポイトで注入して食べる「チェイサー・スフガニア」シリーズ。冬にイスラエルに来た際には是非食べてみてください。


関連記事:スイーツ好き必見!イスラエルのオススメスイーツ6選


このバリエーション!決めるのが難しそうですね。
見た目も可愛いピスタチオ味スフガニア
可愛さ満点。見た目だけでなく味も最高です。

スフィンジ

北アフリカ風ドーナツ。イスラエルは移民国家なので同じユダヤ教徒でも、ヨーロッパ系ユダヤ人や北アフリカ系ユダヤ人など、様々な系統のユダヤ人が存在します。ユダヤ教徒の祭り、ハヌカの祝い方や食べるものも、何系ユダヤ人かによって少し変わることもあります。スフィンジは主に、モロッコ系ユダヤ人やアルジェリア系ユダヤ人が食べるドーナツ。酸味のある生地、サワードウを油で揚げたシンプルなドーナツをたっぷりのはちみつにつけて食べます。


私の家は母方がモロッコ系ユダヤ人なのですが、ハヌカのろうそくをつける時間(日没)になるとあらかじめ作っておいた生地を揚げ、ろうそくを灯した後に皆で食べます。


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レビバ (ラトケス)

ユダヤ式ジャガイモパンケーキ。薄くスライスした野菜を溶き卵に絡め油で揚げます。オーソドックスなのは、ジャガイモのレビバにサワークリームにつけたものです。


しかしハーブたっぷりのレビバや、ビートやカリフラワーなど変わり種を使った特別なものもあります。


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サワークリームとスモークサーモンのせ!おいしそうです。

スフィンジやレビバは家庭料理なので、市場などで買って揚げたてを食べることはできますが、レストランなどではあまり提供していません。


この祭りの料理の素敵なところは、揚げ物を作り近所の人にもおすそ分けすることです。この時期の日没後になるとドアのノックの音が聞こえ、揚げたてドーナツやレビバのおすそ分けがよくあります。心も体も温まる素敵な風習です。


コマ遊び

日本でコマ遊びと言えばお正月ですよね。イスラエルではハヌカにコマ回しをして遊ぶのです!


16世紀にヨーロッパ、主にドイツの子供が4面づくりのコマをサイコロ代わりに使いったのが始まりでした。当時の子供たちは休みの日にコマ遊びをしており、ユダヤ教の子供はハヌカ休みにはもっぱらコマ遊びをして過ごしたようです。その流行が由来となり、今でもハヌカのモチーフがコマとなりました。


今年は世界中がコロナ禍で被害を受けています。日本でも特に小企業は厳しい状況なのではないでしょうか。そんな中、京都在住のラビ(ユダヤ教宗教的指導者)、エディ・グルマフ氏は、京都の伝統的コマ会社と共同でハヌカ向けコマを世界に展開し始めました。


イスラエルと日本、関係ありそうで関係なかった伝統文化がこのような形でコラボレーションされるのは素敵ですね。


ハヌカのコマ。4面にヘブライ文字が書かれています。

様々な宗教の聖地、イスラエル。12月はユダヤ教徒の「ハヌカ」、キリスト教徒の「クリスマス」とイベントが立て続けにあります。イスラエルに冬のイメージはあまりありませんが、冬の観光では普段味わえない冬祭り独特の雰囲気を楽しむことが出来るのでオススメです。


では、皆さま、「ハヌカ・サメーアフ(ハッピー・ハヌカ)!」


ハイファのバハイガーデンにて。ユダヤ教のハヌカとキリスト教のクリスマスを祝います。
キリスト教徒が在住する地区ではクリスマス気分を味わうこともできます。エルサレムにて。
コマとハヌキヤモチーフのクッキー。