少しずつ暖かい日が増え、春の訪れを感じる今日この頃。イスラエルで春一番のユダヤ教の祝日と言えば「プリム」です。世界で仮装のお祭りと言えばハロウィンが有名ですが、イスラエルではこのプリムと呼ばれる大きな仮装のお祭りが有名。2022年は3月16日(水)と17日(木)がプリムにあたります。
今回は、大人も子どもも思いっきり仮装を楽しむイスラエル版ハロウィン、プリムについて紹介します。
プリム物語
プリムの物語は、紀元前586年、第一神殿が破壊された時期の話です。当時の国王アハシュエロスには妻ワシュティがいましたが、王は命令に従わなかったワシュティを退け、新しい妻を選ぼうとしていました。宮廷にはユダヤ人で美しいエステルという女性がいました。エステルの叔父がモルデカイです。
その当時、王室の廷臣であるビッグサンとテレッシュが、アハシュエロス王を暗殺する計画を立てるのですが、ユダヤ人であるモルデカイがこの計画を耳にして、この計画を妨害し、王を救うのです。
この時期、ハマンという王の役人がおり、アハシュエロス王はハマンを副王に任命します。そして王は、ハマンが通り過ぎるときは、宮殿の誰もが彼の前に身をかがめるように命じます。しかし、ユダヤ人のモルデカイはそれを拒否したため、ハマンは彼を怒り、モルデカイだけでなくすべてのユダヤ人を殺すよう、アハシュエロス王に許可を求めます。 アハシュエロス王はこれを許可し、ユダヤ人全体に死刑判決が下されるのです。モルデカイは王の判決をエステルに知らせ、ユダヤ人を救うために王に近づくように彼女に懇願します。彼女はアハシュエロス王に近づき、美しいエステルは王の新しい妻になります。
ある夜、エステルの要望で王はハマンを晩餐会に招待します。晩餐会の後、ハマンは妻ゼレシュの提案で、モルデカイを吊るす絞首台を建てることに決めるのです。
しかしアハシュエロス王は、モルデカイが彼の命を救ったことを知っていました。
第1回目の晩餐会の夜、ハマンは王の下を訪れ、モルデカイを絞首刑にする許可を国王に求めます。そこで王はまず、ハマンに「国王として尊敬する人のために何をすべきであると思うか」と尋ねます。ハマンは王が自分に対して言っていると思い「その男は王族のように扱われるべきです。王室の服を着て王の馬に乗ってパレードするのです!」と答えます。
アハシュエロス王はハマンの考えを気に入り、モルデカイのためにハマンが言ったすべてを行うように彼に命じます。モルデカイの為のパレードが開かれ、ハマンは屈辱に耐えられませんでした。2回目の晩餐会で、エステルはアハシュエロス王とハマンに自分がユダヤ人であり、ハマンの計画は彼女とユダヤの民を根絶することになるので是非これを取り下げてほしいと王に訴えました。アハシュエロス王はユダヤ人への死刑判決を取り下げると同時に、ハマンに激怒し、ハマンを絞首台に吊るすよう命じました。皮肉なことに、絞首台はすでにハマン自身によって設置されていたのです。
モルデカイはアハシュエロス王に次ぐ第2位の地位に就き、ユダヤ人の絶滅から救出することになります。そしてユダヤ人のハマンへの勝利をお祝いする祝日こそがプリムなのです。
ちなみにペルシャ語で「くじ」を意味する「プル」を語源に持つプリム。物語に登場するハマンが、ユダヤ人を根絶やしにする月を決めるために投げたくじにちなんで、この名が付けられました。
プリムに食べる耳の形をしたハマンタッシェンクッキーとは
プリムで忘れてはいけないのは、ハマンタッシェンというクッキー。ハマンタッシェンとは、けしの実のジャムをクッキー生地で三角形に包んで焼いたお菓子です。ハマンの耳の形が三角形だったため、彼の耳を象徴してオズネイ・ハマン(Oznei Haman、ヘブライ語でハマンの耳の意)とも呼ばれています。プリムでは、ユダヤ人を殺そうとしたハマンへの勝利を祝うため、彼の耳の形をしたハマンタッシェンを食べるのが慣習です。
酔いつぶれてもOK!?プリムの祝い方
プリムの祝い方と言えば、大人も子どもも仮装をして、みんなでワイワイ楽しく騒いで過ごすのか一般的。実はユダヤ教では、プリムの日は酔いつぶれるまでお酒を飲んでも良い日とされているのです。
また各町ではプリムパレードが繰り広げられたり、イベントやパーティーが開催されたりします。大人も子どももこの日を楽しみにしており、特別な仮装を楽しもうと準備に勤しみます。
今回紹介したように、イスラエルのプリムはとても楽しいユダヤ教の祝日です。この時期にイスラエルを訪れた際は、ぜひパレードやイベントに参加してみてはいかがでしょうか?