
日本では1980年代から始まったワインブームが定着し、現在国内にも300以上のワイナリーがあると言われています。
イスラエルは日本の20分の1と四国程度の面積でありながら、ブティックワイナリーを含め400前後のワイナリーがあり、今もその数は年々増え続けています。
キリスト教もそうですが、ユダヤ教もやはり儀式や祭日に赤ワインは切っても切れない関係であり、イスラエルでは金曜日の家族ディナーの際に、赤ワインを回し飲みしながら、パンをちぎって分けてお祈りをするのが習わしです。

しかし、飲酒が禁止されているイスラム教に長らく支配されいた現イスラエルの地域は長い間、他宗教の礼拝用ワインを除き、ワイン生産がほぼ禁止されていました。19世紀半ばに、政治的な背景とヨーロッパ全土のブドウが深刻な疫病にかかり壊滅状態に陥った背景から、ロスチャイルド家が輸出用として、イスラエルの地に新たにブドウを植える政策を決定します。
そこから瞬く間に、今迄のうっ憤を晴らすかのようにイスラエル全土でワイン生産が始まり、イスラエルのブドウ園は息を吹き返し始めました。
目次
海外でも人気コーシャワインワイナリー誕生秘話
1998年に誕生したエラ・ヴァレー(Ella Valley)ワイナリーは、イスラエル国内はもちろんの事、アメリカや、ワインの本場であるフランスにも生産量の30%が輸出されている、安定した品質と安心のコーシャワインとして海外でも親しまれているワイナリーです。
ヨーロッパのスポンサーからの願いはただ一つ、「美味しくて安全なコーシャワインが飲みたい」。その思いを叶えるべくワイン作りに適した土地を探していた所、トスカーナでもカルフォルニアでもない、イスラエルにある独自の土壌と気候で成り立つ、忘れ去られつつあったエラ渓谷に白羽の矢が立ちます。

そこは聖書にあるダビデと巨人ゴリアテが戦ったとされる有名な場所であり、また紀元前4000年からおそらく野生ブドウからワインが生産されていた、イスラエルワイン発祥の地と言っても過言では無い土地でした。
立地も歴史もコーシャワインに適合した不思議なこの土地で、異なる3つの標高からヴィンヤード(ブドウ園)をピックアップした後、フランスから専門家を呼び寄せ、どの地域がワインの原料に適しているかを確認したのち、3つの生産場所がついに決定されました。
そもそもコーシャワインって何?

最近日本でも良く聞くコーシャは、元々はユダヤ教の食事規制に基づいて生産されている食品の事。本来はユダヤ人のための物ですが、原材料の受け入れから出荷まで細かくラバイ(ユダヤ教の指導者)が確認する為、近年問題視されている食品業界への不信感から、ユダヤ教以外の人も安心して食べられると、健康志向の意識高めのアメリカンがオーガニックスーパー等で好んで購入する流れがあり、ウェルネスとも繋がりつつあります。
コーシャワインは、ラバイの厳しいチェックの下でユダヤ教の教えを守りながら生活している人物が、ブドウの破砕プロセスから瓶のコルクを閉める瞬間まで行わなければならず、定期的なチェックにより品質は元より、衛生管理もきちんと確認されながら作られています。
そのため味はもちろんの事、世界中のユダヤ人が安心して飲めると言うことからイスラエルワインの人気に火が付き、BIOワインの様に新たな市民権を取得しつつあります。

異色の経歴の持ち主CEOヤリーブ・シムロン(Yariv Shimron)に聞く
ELLA VALLYワインの魅力とは?

―――まずはヤリーブさんの経歴を教えてください。
元々エラ・ヴァレーは私の家族が経営していました。私は弁護士なので、会社の法律関係の業務に関わったのがきっかけで、そのままワインの魅力に取りつかれてしまい、気づいたらCEOになっていました。(笑)
―――エラ・ヴァレーワイナリーのお勧めワインを教えてください。

ワインの好みはその国の文化と気候によってそれぞれ異なります。東ヨーロッパは寒いので、アルコール度数が高くスイートなワインが好まれますが、イタリア、スペインではドライが好まれています。
やはり当ワイナリーのおすすめは赤で、エントリーレベルはオークの香りがして爽やかで日本の夏にもお勧めです。
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エラ・ヴァレー・エヴァーレッド|メルロー・カベルネ¥2,860
―――イスラエルワインのトレンドはありますか?

イスラエルは夏が長く、ビーチに行く事が多いので近年ロゼの売り上げが飛躍的に伸びています。ロゼは赤ワインを白ワインのプロセスで作る30年前に出来た製造方法ですが、爽快な口当たりの為ビーチで飲むのが最適なワインで、ビーチ沿いの都市でよく売れています。フランスでもやはり、更にライトなロゼプロバンスが海沿いの町でよく出ているそうです。ここ1、2年の間は、逆に白ワインを赤ワインのプロセスで製造するオレンジワインをよく見かけるようになりましたが、やはり定番は赤ですね。ワインはシーンと食事によって分けて楽しんで頂けるのも利点だと思います。
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エラ・ヴァレー・エヴァーロゼ¥2,860
―――お気に入りのワインはどれですか?

それぞれのシリーズはキャラクターが異なるので1つを選ぶのは難しいですが、V.C(ヴィンヤードチョイス)やはり当ワイナリーの外せない一本になっています。醸造責任者が納得がいかなければ作る事が出来ないので、その時のぶどうが良くなければ発売される事はありません。2020年はソーヴィニヨン・ブランが不作だったので白ワインのV.Cは生産しませんでした。
テロワールを重視しているので、3つの異なる標高のぶどう園から収穫していますが、この土地で作られていると言う事も私達にとってはとても意味のある事です。よって他のワイナリーにブドウを販売する事はあっても、決して他のブドウ園で育ったブドウを使う事はありません。
ちなみにV.Cの配合は醸造責任者が決めており、そのワイナリーの味となっている為、CEOである私にも教えてくれないんですよ。(笑)
―――COVID-19はワインにどのような影響をもたらしましたか?
イスラエルだけではなく世界的にも外出する機会が減ったコロナ期間は、アルコールの販売が増えたと思います。ワインセラーのおすすめでは無く、顧客が自身の経験と好みでワインを選ぶ直接型のムーブメントがより濃くなりました。
また温暖化現象によってNYでワインが作れるようになり、NY産ワインが注目を集めたりしてますが、コロナがもたらした自然界の回復の流れも、これから世界のぶどうに何か影響してくるのではないかと思っています。
―――日本ではどこで販売しているのですか?
日本ではIJCMドットコムでご購入頂けます。元々2004年から2011年まで日本に輸出していたのですが、醸造責任者が変わりアルコール度数が高くなってしまい、一旦日本への輸出を取りやめる事にしました。私達は自身のポリシーを押し付けるのではなく、ワインの風味はその土地の文化にフィットした物でなければいけないと思っており、その国の文化に私達のワインを選んで貰うべきだと考えています。醸造責任者が新就任したので半年前からまた日本への輸出を開始しました。
控え目ながら情熱を込めてエラ・ヴァレーワインの説明をしてくれたヤリーブさんは、ワインの知識がとても豊富で、いかにワインが好きなのかひしひしと伝わってくる取材でした。

全体的に赤はスモーキーな香りと不思議な甘い風味が多かったのですが、飲んでみるととても軽かったり、良い意味で予想外なテイストが多く、それぞれ全部試したくなるワイナリーでした。
筆者のお勧めもやはり平日の軽い晩酌にも合いそうなロゼ。これからの季節、キンキンに冷やしたピンク色のロゼを飲みながらさっぱりしたみぞれ鍋をみんなで頬張って、来年のビーチバカンスの予定を女子会でワイワイと語りあうのも良いかもしれません。
エラ・ヴァレーホームページ
https://ellavalley.com/en/home/
日本国内購入可能サイト<IJCMドットコム>