イスラエルがワイン大国というのは、イスラエルに興味のある人なら聞いたことがあるかもしれません。
断続的にオスマン帝国などのイスラム教支配下にあった時代、イスラエルではワイン造りが禁止となり、ワイン大国として浸透することはありませんでした。しかし実は、その歴史は5000年以上前に遡り、古代ローマ時代にはイスラエルで造られたワインがローマへ納められていたほど、名産品として愛されていたのだそう。イスラエル建国以降、特に1990年代にワイン復興の動きがスタートしてから、他国の醸造技術を伝統と融合させるなど開発が盛んになり、クオリティの向上とともに改めて世界からイスラエルワインが注目されています。
そんなイスラエルワインの中でも、今回は貴重なエラ・ヴァレー産ワインをご紹介。あのダヴィデとゴリアテが戦った地、エラ・ヴァレーで育まれた美しきイスラエルワインの世界へご招待いたします。
イスラエルのワインといえば、厚みと芳醇さにおいて定評があり、一方で渇いた土地ということでカリフォルニアワインにも近しい果実味が魅力です。香りの強さというよりも、長く続く余韻がとてもエレガント。嫌味のない上品な存在として、ワイン愛好家からも人気を博しています。
イスラエルのワイン産地は、イスラエル北部の火山灰でできた土地「ゴラン高原」、山岳地帯で昼夜の寒暖差が大きい「ジュデアン・ヒルズ」、砂漠でありながら雨の代わりに灌水システムによってブドウを栽培する「ゲネブ砂漠」が主として知られています。
今回ご紹介するワインを造ったエラ・ヴァレー・ワイナリーは、エルサレムから西に40kmほど、あのダヴィデとゴリアテが戦った土地「エラ・ヴァレー(エラの谷)」で3つのブドウ畑を所有しています。紀元前からブドウ栽培に適した土地として知られていたエラ・ヴァレーですが、現代まで土地の伝統は脈々と受け継がれ、1998年に創業したエラ・ヴァレー・ワイナリーは、年間35万本のワインを製造する実力派ワイナリーとしてイスラエルワインを世に送り出しています。そのワインの類にもれずにイスラエルらしい気品は、最高のブドウ栽培ができるように選び抜かれたテロワールの魅力が存分に生かされた結果。常に厳選を重ねて造られたエラ・ヴァレーのワインは、イスラエル国内でも貴重なワインなのだとか。
目次
いざ、美しきエラ・ヴァレー・ワインの世界へ
今回はエラ・ヴァレー・ワインの中から下記6種をご紹介。
③エヴァ・ヴァレー・エヴァーレッド カベルネ・ソーヴィニヨン
エラ・ヴァレー・エヴァーホワイト ブラン
テーブルワインにぴったりな定番のエヴァーシリーズから、まずは白をご紹介。
ブドウ品種:
シャルドネ 60% / ソーヴィニョン・ブラン 26% / ゲヴュルツトラミネール 14%
口当たりはキリッとした酸味が爽やかで、同時にナッツの風味が広がります。次にゲヴュルツのライチ感が口に残り、頬の端にじんわりと優しい塩味が染み出します。
ここからがイスラエルワインの面白いところです。酸味・塩味と来てから、口の中にずっと続く芳醇な余韻が第一印象を覆すよう。後引く果実味は丹念に育てられたことがよくわかるまろやかさで、熟成させたウォッシュ系チーズに合うこと間違いなしです。果実味に薄く被さったハーブの香りがそこにアクセントを加え、飽きのこない独特な魅力も。
爽やかなテーブルワインでありながら、ゆっくりと一口ずつ目を瞑って味わいたくもなるロングトーンが趣深いワインと言えるでしょう。
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エラ・ヴァレー・エヴァーホワイト|ブラン¥2,750
エラ・ヴァレー・エヴァーロゼ
お次は同じく定番エヴァーシリーズより、赤みのやや強いロゼワイン。
ブドウ品種:
メルロー 65% / シラー 15% / カリニャン 10% / カベルネ・フラン 10%
まるでリンゴのような甘い香りが印象的なロゼですが、秘めたる強い意思のような重厚さを根幹に感じられるしっかりとした味わいです。メルローのフローラルな広がりとアンバーで穏やかな酸味は、口に含んでしばらく楽しめる二面性があります。少し早めに収穫されたそれぞれのブドウは、別々に低温発酵されることで個性的な味わいになるそう。
意外にもエヴァーホワイトとは逆に余韻がとても爽やかな点が特徴的。
ウィスキーのようにドライフルーツと合わせて、じっくり飲んでみるのも良いかもしれません。
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エラ・ヴァレー・エヴァーロゼ¥2,860
エヴァ・ヴァレー・エヴァーレッド カベルネ・ソーヴィニヨン
エヴァーシリーズの赤より、カベルネ・ソーヴィニヨンはどうでしょうか。
ブドウ品種:
カベルネ・ソーヴィニヨン 85% / メルロー 10% / プティ・ヴェルド 5%
まず、特筆すべきは色合いです。2019年の若いワインにも関わらず、青みがかっていないボルドーのような深紅が驚きの美しさ。飲む前から、すでに造り手の愛情が溢れています。
夜間に手摘みで収穫されたというカベルネ・ソーヴィニヨンは、エラ・ヴァレーのアデレットとネス・ハリムで採れたメルローとプチ・ヴェルドと合わせてフレンチオーク樽で熟成されているとのこと。
一見、荘厳な果実の風味ですが、口当たりは裏腹に甘さが控えめでさっぱりとしているあたりがなんとも小洒落ています。エスプレッソのような苦味があり、凝縮されたタンニンの旨味を感じる贅沢さ。幾重にも重なる着実なアロマが、イスラエルらしい気品を醸し出しながら、しつこくない後味にグラスが進むでしょう。ビターなチョコレートとの相性も◎。
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エラ・ヴァレー・エヴァーレッド|カベルネ・ソーヴィニヨン¥2,860
エラ・ヴァレー・エヴァーレッド メルロー・カベルネ
品種だけでも心が躍るメルロー・カベルネの味わい深さもお見逃しなく。
ブドウ品種:
メルロー 50% / カベルネ・ソーヴィニヨン 40% / カベルネ・フラン 5% /シラー 5%
抜栓した瞬間、コルクから漂うラズベリーの香りに魅せられてしまうでしょう。グラスに注ぐと、期待を裏切らない軽やかな淡い色味に目を奪われます。
口当たりは滑らかに、カベルネと、くるみやナッツに近しいふくよかな香りが立ちます。いい意味でわかりやすく、土のミネラルも感じられることから、王道でシンプルな魅力です。メルローの香りを引き立たせるためにも、グラスを回してたっぷりと空気を含ませると尚良し。バランスよくシルキーで少しだけオイリーな深みが広がります。そして、最後の余韻が特段に長いというのが、何よりの特徴。果実味がずっと続き、レーズンをずっと口に含んでいるようなフレッシュさが、ここまでインパクトを残してくれます。骨格のしっかりした豊かなワインとして、あらゆる特別なシーンで重宝しそうです。
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エラ・ヴァレー・エヴァーレッド|メルロー・カベルネ¥2,860
エラ・ヴァレー・ザ・エラ ドライ・レッド・ワイン
最後の2種類はドライシリーズです。同じエラ・ヴァレーでも、ドライの赤は別格?
ブドウ品種:
カベルネ・ソーヴィニヨン 55% / カベルネ・フラン 25% / プティ・ヴェルド 20%
ドライの辛口と思いきや、カリフォルニアワインも驚きの、まったりとしたヨーグルトのような香りが広がります。香りの主体はカベルネで、余韻はプティ・ヴェルドでしっかりと。
落ち着いた甘さにスモーキーなカカオのアロマで、厚みは抜群。さらに整ったバランスが上品な深みを感じさせます。
骨太ながらも、直接的なアプローチは避けられており、どこか新しいのはイスラエルワインならではの「伝統と技術の融合ゆえ」でしょう。まさにワイン単体で味わえる愛好家にもおすすめの逸品。ワインバーで見つけたら、ぜひ締めの一杯に。
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エラ・ヴァレー・ザ・エラ|ドライ・レッド・ワイン¥3,410
エラ・ヴァレー・ザ・エラ ドライ・ホワイト・ワイン
最後はドライシリーズから白をご紹介。どうやら特別な楽しみ方がありそうです。
ブドウ品種:
シャルドネ 70% / ソーヴィニヨン・ブラン 20% / ヴィオニエ 10%
こちらもまたグラスの中で輝く美しい琥珀色が、熟したワインを期待させます。
口に含むと優しいミネラルのカウンターが登場。重ねて、ヴィオニエの香りが鼻に抜けます。次に、舌にピリピリと来る酸味が心地よい刺激に。甘いソーヴィニヨンと、フローラルで官能的なヴィオニエ、そして全体をまとめるのはしっとりとしたシャルドネの香りです。
フルボディの厚みが飲み口をまろやかに楽しませてくれて、余韻までゆったりと甘みが続き、酸味のある白ですが塩味は控えめ。しかし、抜栓後に飲んだその時から、しばらく置いて楽しみたい奥行きを感じさせるコクのある後味も印象的です。
一晩置いてからいただくと、角が取れてシャルドネがより一層華やかに広がります。時間をかけて表情の変化を見せるあたり、ついつい追いかけたくなる誘惑のワインです。
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エラ・ヴァレー・ザ・エラ|ドライ・ホワイト・ワイン¥3,300
どのワインを試しても、なんと美しいワインを生み出す造り手なのか…と惚れ惚れしてしまうエラ・ヴァレー・ワイン。こだわりと丁寧さ、そして何より主張しすぎないしたたかな深みが、他にはないビロードのように滑らかに流れる時間を楽しませてくれます。
イスラエルワインでそんなひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか?
エラ・ヴァレーホームページ
https://ellavalley.com/en/home/
日本国内購入可能サイト<IJCMドットコム>