イスラエルが中東のシリコンバレーとして世界から注目を浴びるまでの10年間の歩みを紐解くシリーズ
中東の小国からスタートアップ国家へ、イスラエル激動の2010年代
毎年多くのスタートアップが誕生し、世界から注目を集めているスタートアップ国家イスラエル。
日本企業によるイスラエル企業への投資やイスラエルでの法人設立など、日本とイスラエルのビジネス関係は勢いを増すばかりだ。
しかしイスラエルがこれほどまでに世界で注目されるようになったのは、比較的最近のことであることを知っている人は少ないのではないか。
本連載では、イスラエルが中東のシリコンバレーとして世界から注目を浴びるまでの、激震の10年間の歩みを紐解く。
イスラエル・ドラマが世界の人々の心を捉えた10年
これまで主に、2010年代にイスラエルで急成長した業界やハイテク部門にスポットを当ててきた。しかし勿論このような充実した期間に成長するのはテクノロジーだけではない。長く対外的には無名に等しかったイスラエルのエンタメ業界もまた、2010年代に大きくその世界的知名度とプレゼンスを増した業界である。イスラエルのテレビプロデューサーとスターたちもまた「リスクテイク」というスタートアップ国家の思考を取り入れ、「時代の先端」をそのアイデンティティの主軸とし、広く国際的に認められる結果となった。
今章ではイスラエルのエンタメ業界が世界的な成功を果たした背景を追う。
政治的干渉を受けながら成長したイスラエルのスポーツ
屋外で過ごすことのできる時間が長い温暖な気候、ビーチが身近なためマリンスポーツが盛んであること、兵役においてマーシャルアーツが重要視されること、競争が好きな国民性などの要因により、建国以来イスラエル人にとってスポーツは重要な娯楽であり続けている。しかし一方国際舞台において、イスラエルのスポーツは2010年代においても政治的干渉を避けられない状況であった。今章では困難な状況にも関わらず、テニス選手のShahar Pe’er(シャハル・ピアー)やサッカー選手のYossi Benayoun(ヨッシ・ベナユン)といった世界的スポーツ選手を定期的に排出してきたイスラエルのスポーツ界にスポットを当てる。
イスラエルと日本が同盟パートナーとなるまでの歩み
イスラエルは建国から4年後の1952年、日本との外交関係を東アジアで初めて結んだ国となり、両国の外構樹立から今年で70周年を迎えたにも関わらず、両国は長い間極めて限定的で希薄な関係が続いていた。しかし、外交・ビジネス関係を大幅に改善することを目的に、両政府が協同する動きを見せた2014年頃から潮目が変わってきた。2014年以降の両国関係の急速な接近は、国家安全保障とサイバーセキュリティに関する一連のハイレベルな対話から、初の二国間投資協定に至るまで、両国が多くの重要な政治・経済協定を締結したことなどの歴史的な出来事により明確であるといえるだろう。かつては限定的だった二国間関係が、同盟パートナーとしての特徴をより強めたものに変化していく動きと、その背景を振り返る。