イスラエルに関心のある映画ファンにこの秋、ぜひ手に取っていただきたい1本！
2023年のヴェネツィア国際映画祭、および東京国際映画祭で注目を浴びた、中東の女子柔道を題材とした作品『TATAMI』。イスラエルとイランという、政治的に対立する国の出身監督が史上初めて共同で手がけた柔道映画が、ついに日本でBlu-ray／DVD化されます。
目次
柔道 × 政治 × サスペンスの異色エンタメ映画
『TATAMI』は、女子柔道の世界選手権を舞台に、スポーツと政治の交錯を描いたイスラエルのサスペンス映画。順調に勝ち進んでいたイラン代表のレイラ・ホセイニと監督のマルヤム・ガンバリは、金メダルを目前に、政府から敵対国であるイスラエルとの対戦を避けるため、棄権を命じられます。自分自身と人質に取られた家族にも危険が及ぶ中、怪我を装って政府に服従するか、自由と尊厳のために戦い続けるか ー 国と自分自身、そして家族の命の間で揺れながら決断を迫られる物語です。
柔道世界選手権で実際に起った映画と同じストーリー
あらすじを読んで、イスラエルの柔道選手サギ・ムキと、イラン出身のサイード・モラエイの物語を思い出した方もいるでしょう。この映画には、ベースとなる出来事がありました。
2019年の世界選手権でモラエイは、イラン政府からムキと対戦する可能性のある試合を辞退するよう圧力をかけられました。それだけでなく、家族の身の安全をも脅かされましたが、モラエイは「わざと負けるために柔道の練習をしてきたんじゃない」とイランを離れ亡命。メダルの獲得、そしてムキとの対戦を夢見てモンゴル国籍を取得し、東京五輪に出場しました。実際にオリンピックでの直接対戦は実現しませんでしたが、東京で再会した二人がメダルを手にした写真は、スポーツへの政治干渉を乗り越えた友情を象徴するものとして、見るものに大きな感動を与えました。
東京オリンピックで再会し、それぞれの健闘を称え合うムキ選手（左）とモラエイ選手（右）
イスラエルとイランの映画人による奇跡のタッグ
共同監督は、イスラエル出身でアカデミー賞短編実写賞受賞歴を持つガイ・ナッティヴと、イラン出身でカンヌ女優賞に輝いたザーラ・アミール。両国の映画人が交わる機会は、政治的・文化的な事情から非常に限られています。そんな二人が、ひとつの物語をともに描いたという点で、本作は映画界にとって大きな意義を持つのです。
本作は、イランでは公開不可能。そのため、イラン国外への亡命者を含むイラン人スタッフの手で、極秘裏に制作されました。その背景だけでも胸が熱くなる作品ですが、だからこそ「命がけで撮った」といえる重みと、スクリーンからにじみ出るリアリティがあります。また、柔道の試合シーンはまさに本物の迫力で、社会派でありながら、エンタメとしても高い完成度を誇っています。
『TATAMI』はただの柔道映画ではなく、政治の壁を超えて手を取り合ったイスラエルとイランの映画人たちが、スポーツを通して「自由と尊厳とは何か」を問いかける珠玉の作品です。イスラエル映画の新たな地平を切り拓いたこの1本、ぜひご自宅で体感してください。
『TATAMI』Blu-ray／DVD情報
- 発売日： 2025年9月3日（水）
- 価格： Blu-ray 5,500円（税込）／DVD 4,400円（税込）
- 発売元： ミモザフィルムズ
- 販売元： ハピネット・メディアマーケティング
- 特典：
└ Amazon：劇場配布ステッカー（メーカー特典）
└ 紀伊國屋書店：阿部詩選手サイン入りポスター・パンフレット（先着）
