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Art

「創作は自分の子ども」――イスラエル芸術界の巨匠ヤコブ・アガムが遺したメッセージ

by ISRAERU 編集部 |2026年06月30日

イスラエルを代表する現代芸術家、ヤコブ・アガムが2026年6月、98歳でその生涯を閉じました。世界的な芸術家として知られるアガムは、作品がニューヨークやパリをはじめとする世界の主要な美術館に展示され、イスラエル美術を国際舞台へ押し上げた存在の一人です。しかし彼は単なる成功したアーティストではありませんでした。生涯を通じて、「創造することの意味」や「芸術が持つ力」について語り続けた思想家でもあったのです。



「変化」を表現し続けた芸術家

アガム氏は「キネティック・アート(動く芸術)」の先駆者として知られています。

見る角度によって色や形が変わる作品、光や動きを取り入れた立体作品など、彼の作品には常に「変化」が存在しました。

その背景には、世界は固定されたものではなく、絶えず変化し続けるものだという考え方があります。アガム氏は、芸術を通じてその変化の美しさを表現しようとしていました。

彼にとって芸術とは、完成された結果ではなく、常に生成し続けるプロセスそのものだったのです。


火と水が共存する世界

アガム氏の代表作として知られるのが、テルアビブのディゼンゴフ広場に設置された「火と水の噴水」です。

色鮮やかな水流と炎を組み合わせたこの作品は、長年にわたり賛否両論を巻き起こしました。しかしアガム氏は、その作品に平和への願いを込めていました。

生前のインタビューで彼はこう語っています。

「火と水という相反するものを一つの作品の中で共存させることができるなら、人と人との平和も実現できるはずです」

虹の色彩が互いを否定することなく共存しているように、多様性の中にこそ美しさが生まれる。それがアガム氏の一貫したメッセージでした。


改修後、かつての色鮮やかな姿を失ったテルアビブ・ディゼンゴフ広場の「火と水の噴水」(Photo:モティ・キムヒ)

世界で評価され、祖国では葛藤も

アガム氏は長年フランスを拠点に活動し、欧米では高い評価を受けてきました。

一方で、イスラエル国内では作品への理解が十分ではないと感じることも少なくなかったようです。世界の著名な美術館で称賛される一方で、祖国では厳しい批判にさらされることもありました。

それでも彼は創作をやめませんでした。

なぜなら、作品は単なる商品ではなく、自分自身の一部だと考えていたからです。


ヤコブ・アガムがデザインしたダン・ホテルのファサード(Photo:ダビッド・ルビンガー・アーカイブ)

イスラエルの未来を支える「創造力」

アガム氏は晩年、教育の重要性についても繰り返し語っていました。

「イスラエルの本当の資源は、子どもたちの創造力にある」

石油や天然資源ではなく、人々の発想力や創造性こそが国の未来を支える――その考えは、今日のスタートアップ大国イスラエルにも通じるものがあります。

子どもたちが自ら考え、新しいものを生み出す力を育てること。それが社会全体を豊かにすると、アガム氏は信じていました。


「私の理念を受け継ぎ、新しい世代のアーティストが現れると信じています」――ヤコブ・アガム(Photo:シャウル・ゴラン)

創造することの意味を問い続けた人生

98年の人生を通じて、ヤコブ・アガム氏は芸術の可能性を追求し続けました。

彼が遺した作品はもちろん、その言葉もまた私たちに大切な問いを投げかけています。

対立するものは本当に共存できないのか。創造することにどんな意味があるのか。そして、人は何を未来へ残していくべきなのか。

アガム氏の作品と思想は、これからも多くの人々に新たな視点を与え続けることでしょう。


*本記事はイスラエルメディアynetの報道をもとに構成しています。