国内外の優れたアートを称えるべく文化庁が主催する文化庁メディア芸術祭。
今年の第25回芸術祭では、昨年7月（2021年7月）から作品を募集し、先月ついに受賞者が発表されました。アニメーション部門短編アニメーションで優秀賞を受賞したのは、イスラエル人アーティストのタル・カントル氏。表彰式と受賞作品展は今年9月に日本で開催予定です。
今回は今注目のアーティスト、タル・カントル氏の全貌に迫ります。
文化庁メディア芸術祭とは
『文化庁メディア芸術祭』は、1997年から日本で開催されているメディア芸術の総合フェスティバルです。アート・エンターテインメント・アニメーション・マンガの4つの部門から国内外の優れた作品がそれぞれ選ばれ、表彰されます。
メディア芸術祭では、表彰式の他に受賞作品展も併せて開催。受賞作品の上映や展示に加えて、作品に関連したイベントも実施されるため、心ゆくまで作品を堪能できるのが特徴です。
第25回芸術祭には、世界95の国と地域から3,500点以上の作品の応募を記録し、国際的にも注目を集めています。国内外のメディア芸術の発展を目標に国際的なフェスティバルへと成長を続ける文化庁メディア芸術祭。芸術性と創造性に溢れる素晴らしい次世代作品に出会えるフェスティバルです。
タル・カントル氏プロフィール
第25回文化庁メディア芸術祭、アニメーション部門で優秀賞を受賞したイスラエル人アーティストのタル・カントル氏。アニメーション部門では長編映画1作、短編映画1作に優秀賞が与えられ、タル氏は『Letter to a Pig』で短編映画部門の受賞を果たしました。
1988年生まれのタル氏は、数々の受賞歴があるアニメ映画プロデューサー兼ビジュアルアーティストです。エルサレムのベツァルエル美術デザイン学院では優秀な成績を納め、卒業しました。現在は同大学のスクリーン・ベースド・アーツ学部で教鞭をとっています。
タル氏が制作するのは「記憶」をテーマにした作品。自ら確立した線画、写真、動画、絵画、アニメーションの5つの技法を組み合わせた、ユニークな手法を用いて作品を作り上げています。
彼女が過去に手がけた短編アニメーション映画『In Other Words』は、17の賞を受賞し、世界各国の100以上のフェスティバルでノミネートされました。また、2021エミー賞を受賞したドキュメンタリーフィーチャー映画『ADVOCATE』のアニメーションディレクターも勤めました。
今年度の第25回芸術祭アニメーション部門短編映画優秀賞を受賞した短編アニメーション作品『Letter to a Pig』は、タル氏のデビュー作となっています。
受賞作品『Letter to a Pig』について
『Letter to a Pig』は、ホロコーストの生存者である年老いた男性の話を聞いた少女が、奇妙な空想の世界を旅する物語です。
ホロコースト当時の壮絶な体験を少女のクラスに向けて語る男性。戦時中、彼は敵から逃れるため、ブタ小屋に隠れて生活していました。彼はブタとともに生活することで生き延びたのです。そんな男性が、彼の命を救ってくれたブタに向けて書いた感謝の手紙を読み上げます。すると突如、今まで他人事だと思い聞き流していた少女の前に1頭のブタが現れます。そのまま少女は空想の世界へと浸っていき…
教室で男性の実体験を聞いた少女は、動物と人間との境界線が曖昧となり、自身のアイデンティティ、そして人間の本質について深く考えさせられるという物語になっています
作品全体としてはモノクロを基調としていますが、所々実写が使用されていたり、色がつけられていたりと、タル氏らしいユニークな作品です。
「記憶」を追求し、ユニークな技法で作品を生み出し続けるタル・カントル氏。
9月に日本で開催される第25回芸術祭の表彰式と受賞作品展へも参加予定です。ますますの活躍が期待されるタル氏から目が離せません。
皆さんも是非チェックしてみて下さいね。
Webサイト一覧
タル・カントル氏 Official Webサイト： https://www.talkantor.com/
第25回文化庁メディア芸術祭 受賞作品： https://j-mediaarts.jp/award/
文化庁メディア芸術祭 『Letter to a Pig』： https://j-mediaarts.jp/award/single/letter-to-a-pig/
