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アートを通じて消費主義への批評に挑む。イスラエル人写真家兼アーティスト、ダフナ・タルモン

ダフナ・タルモン
ダフナ・タルモン

私の主な武器はユーモアです。」


ダフナ・タルモン (Dafna Talmon、以下ダフナ氏)は、自分らしくオーディエンスや被写体と接しながら、彼らとの繋がりをもつことができる写真家兼アーティストです。ユーモラスかつ示唆に富む創造力で、既存の枠にとらわれずに考えるダフナ氏は、米国、ポーランド、イスラエルなどの国々で展示会に作品を出展。そして今年、東京・上野で開催された『東京ビエンナーレ2020/ 2021 SOCIALDIVE』で『ギフトプロジェクト』というタイトルのプロジェクトを展示したことでも注目を集めています。 今回ISRAERUは、ダフナ氏が写真とアートを始めたきっかけ、彼女の作品の背景にある創造的なプロセス、そして消費主義に対する批評について、ダフナ氏に伺うことができました。


創造性の覚醒

「それはまさにブームのように感じ、すぐに私は夢中になりました。」


ダフナ氏が成人して初めてのカメラを手にした時、自分の中で何かが目覚めたと彼女は言います。当時ジャーナリストとして働いていたダフナ氏は、フォトジャーナリストになるため、その情熱を写真に注ぎました。時が経つにつれて、ダフナ氏の個人的なプロジェクトがきっかけで、彼女はフリーの写真家およびアーティストとして自分自身のキャリアを確立することができたのだそう。現在、彼女はフルタイムの写真家兼アーティストとして働きながら、世界中で作品を展示し、イベント、観光の様子、そしてクライアントのポートレートの瞬間を写真に収めています。


「私はスタジオを持っていませんが、ロケーションハンティングや被写体であるクライアントにとって最適な撮影場所を見つけるのが大好きです。」


撮影や展示会の前に、可能な限りクリエイティブなプロセスを計画するというダフナ氏。しかし、すべての詳細を予測する方法がないことも同時に理解しています。


「頭の中では、プロジェクト全体を大まかにスケッチし、イベントが計画どおりに進まない場合に備えて、柔軟に対応することも許容しています。こうすることで、オープンマインドに考えることができ、自分が参加しているクリエイティブなプロジェクトに適応できるマインドセットを持つことができるのです。」


キャリアのターニングポイントとなった『ギフトプロジェクト』

ダフナ氏がすぐにでも取り組む必要があったプロジェクトがあります。それが、彼女の芸術的キャリアを確立するきっかけにもなった『ギフトプロジェクト』でした。


誰かのガラクタは誰かの宝物。イスラエル人アーティスト、ダフナ・タルモンによる「ギフトプロジェクト」
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誰かのガラクタは誰かの宝物。イスラエル人アーティスト、ダフナ・タルモンによる「ギフトプロジェク... 誰かのガラクタは誰かの宝物。イスラエル人アーティ...

Sara Hamada / 2021年07月23日


大学院の美術プログラムにおける彼女の最後のプロジェクトのため、彼女はこの『ギフトプロジェクト』を立ち上げました。このユーモラスでありながら示唆に富むプロジェクトは、消費主義に対する皮肉的な批評でした。当時各地を放浪していたダフナ氏は、処分すべきものが沢山あり、自分にとっては役に立たないアイテムを他の人にとって記憶に残るものにする方法を見つけました。



ダフナ氏は不要なアイテムをすべて集めて目立たないパッケージに包み、プロジェクトのために展示。展示会に訪れた人達は、その価値のないアイテムを開いて笑ったそうです。消費主義がどのように機能するかと同じように、展示会は訪問者が必要としない別のアイテムを受け取るように設計されていました。ダフナが予測したように、この興味深い展示会は彼女のライフスタイルをよりミニマルにするだけでなく、来場者に彼ら自身の役に立たないアイテムについて考えるきっかけを与えたといいます。


非常に多くの人々がこのダフナ氏の消費主義についての解釈を受け入れ、ダフナ氏に彼ら自身のアイテムで『ギフトプロジェクト』と同じことをするように頼みました。彼女は『ギフトプロジェクト』を再開するまでに非常に多くのリクエストを受け取りましたが、イスラエルで行った『ギフトプロジェクト』では、はるかに興味深いひねりを加えました。


ダフナ氏はアイスクリームトラックを持って行き、オーディエンスからの無数のアイテムを入れるためにそれを再利用しました。彼女はイスラエルの北から南まで車で縦断し、毎日新しい都市や場所に立ち寄り、イスラエルの人々に不必要な贈り物をしたそうです。


「当時の重要な出来事の1つは、私の家系の名前であるタルモンと同じ名前の町を訪れたときでした。ここで私は一人の歌手に出会い、彼にランダムな贈り物をしました。彼はドレスを受け取り、私たちのために歌を歌った後、大喜びしました。」



上記のビデオのような数え切れないほどの思い出に残るインタラクションで、ダフナ氏はオーディエンスと直接関わり、忘れられない経験を生み出すことができました。 そして、ダフナ氏はイスラエル全土を旅した今、『ギフトプロジェクト』を東京に持ち込むことに成功しました。



『ギフトプロジェクト東京2021 』

ダフナ氏は、東京ビエンナーレ2020/ 2021 SOCIAL DIVE展の一環として、2021年8月4日から17日まで東京・上野に『ギフトプロジェクト東京2021』を開催しました。 彼女の最初のプロジェクトと同じように、ダフナ氏は東京の人々に、見知らぬ人への贈り物に代わる消毒済みアイテムを持ち込むことを奨励しています。 東京にお住まいの方は、以下の場所でインスタレーションとギフトをご覧ください。


〒101-0021 東京都千代田区外神田6丁目11-14 アーツ千代田3331


ダフナ氏の今後の目標は?

ISRAERUがダフナ氏に今後の計画を尋ねると、彼女は笑顔で次のように答えました。


「私の人生は一直線ではありません。 誰が未来を予測できるでしょうか? 私は写真家、ジャーナリストとして働き、コスタリカでも働き、動物とも一緒に仕事をしました。また、各地を旅する旅人として、そして今はアーティストとして働いてきました。 私にとっての究極の目標は、私が何をしているかに拘わらず、楽しむことです。それが私の北極星、つまり絶対的な指針であり、必ず従うようにしています。」


ダフナ・タルモン (アーティスト、写真家、地理学者)

1972年、ベエルシェバ(イスラエル)生まれ。テルアビブ在住。写真、インスタレーション、ビデオ、テキスト、パフォーマンスを組み合わせた作品を制作。 関連と分断、日常と儀礼、逃避、自由、拘束、家などを考察しながら、空間を能動的に移動し、形やライフスタイルのあり方に疑問を投げかける。The Postgraduate Fine Art Program(ハミドラーシャ)の大学院で美術学士号を取得。Tel Aviv UniversityとThe Hebrew University of Jerusalemで都市計画を専門とする地理学の学士号と修士号を取得。
https://www.dafnatalmon.com/