アートとデザインの境界線にある作品を創作し、枠にとらわれない自由なアイディアで、オーディエンスを魅了してならないオハド・ベニット氏。今回は8 x 12cmの木製プレートに人生を立体化する「8X12 Emotional Lab」をご紹介します。
8X12 Emotional Lab
オハッド氏は、自身がまだ幼かった頃、様々な人々と建物の模型を、どこかでずっと眺めていたことを覚えています。その中には、本当に面白いものがありました。それは夢に溢れた、とてもちっちゃな人達でした。一筋の光が展示室に差し込んでおり、彼は、形は小さくとも希望に溢れた、そのミニチュア人たちの住む世界に本当に入り込んだかのように感じながら、それらの模型を驚きと共に見つめ続けていたのです。
その後、ベルリンを訪れた時、この小さな模型の贈り物をたまたまもらう事になったオハッド氏。魅力に満ち溢れ、しかし孤独の憂いの中にいる、時の瞬間の中で凍りついた白い人達。凍りついた想い、感情、心。でもその模型たちは、人の人生全てを物語っていました。そして彼の頭の中では、そこにいる一人ひとりの物語がしっかりと形作られていったのです。
その後、彼が詩を書き始めたとき、この物言わぬ人々とその凍りついた人生の瞬間を、彼の詩に結びつけていく事はとても面白い事だと気付きました。
実験室のような環境の中で、小さな模型に住む彼らからの暗号を解読し、感情を実際に立体化し、感覚的にも論理的にも成立するように、彼らの毎日を形作っていく。
何体かの模型は、彼の詩をちゃんと自分たちの言葉に変え、何体かは、私たちを取り巻く生活そのものを彼に伝えてきたそうです。
こういった自身の詩作とは別に、一般の方々にも、この小さな世界に対する自分たちの作品を送ってくれるよう、SNSを通じて募集してみたオハッド氏。
そして彼は、このためのミニラボを開設し、ほとんど瞑想にふけるように、この模型たちの人生の立体化を続けたのです。
そしてこれらは、8 x 12cmの木製のプレートに記載され、永久に残されることになりました。
25名の外部ライターが、それぞれの個人の想いを書き起こし、彼は5つの模型に私の思いを記しました。また、100個の凍てついたシーンを作り上げ、その一つ一つのシークエンスを、2.4mの大通りを作って配置しました。
このプロジェクトは、その存在としても、また、その美しさ、精妙さから言っても、ユニークなものであり、私たちの心の琴線に語りかけるものです。
この展示を行うための場所も、非常に注意深く選ばれなければならなかったとオハッド氏は語ります。この模型たちの作り出す静寂さと、その展示場所の外から聞こえてくるノイズとの間で行われる対話こそが、非常に大切なことだと私には思えたからです。大きく開かれた耳と目の空隙の縁に作り出されるホワイトノイズの中に、この凍てついた瞬間は侵入してくるのです。
そのためには、展示と展示場所を取り巻く環境との間のコントラストこそ、重要なファクターだと気づきました。それは、雑踏の中の孤立感、観察から吸収に至る過程の、静寂の雑音なのです。