前回の記事では、アーティストでありデザイナーのオハド・ベニット氏について紹介しましたが、今回は彼の作品を紹介したいと思います。
Ohad Benit(オハド・ベニット)
アーティストでありデザイナー。自身が手掛ける「Mishmaacool Studio Art & Design」は、コンセプチュアルアートとデザイン、体験環境の設計やプロダクトデザイン、様々な分野における研究、開発、制作を専門として、コンセプトから制作、空間デザインまでの領域をカバー。
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アートとデザインの境界線にある作品を創り出す「Mishmaacool Studio Art & Design」
クリーンルーム
立つ二人。互いに向き合いながら。隣同士で。隣同士で。
画面の染みのような二人の白人の存在は、荘厳な自然の風景に馴染む事はありません。そこには、プロバイダーが介在するのです。異議を持つプロバイダーが。
私たちが今過ごしている日々の精神状態のように、「クリーンルーム」のコンセプトとは、一般病院の手術室などよりももっと高いレベルの清浄度と無菌状態を保つことにあります。
クリーンルームには、特殊な製品の様々な製造過程を汚染のダメージから守るため、特別に用意されたテイラーメイドの環境が整備されています。コロナの影響が広がるにつれ、二人の兄弟と場所の間に存在する、近さと遠さ、現実と想像、静止状態と動作状態など、様々な軸に沿った関係性が、この「クリーンルーム」の機能を通じて試されるようになりました。
20世紀の中頃、ヨセミテの自然の風景に圧倒された写真家たちは、荘厳で雄大なこの風景の体験を正確な形で残すために、様々な撮影技法を開発しました。
しかし、写真という技術がありのままの真実を残すための道具ではなくなった今日、写真という技法は、作家たちの夢見る、現実にはあり得ない空想を具現化し、シャッターに収めるためのツールとなりました。
この一連の写真シリーズでは、ヨセミテの風景は、単に二人の関係性を強調するための背景へと後退しています。魅力的な風景と正確に対称化されるよう演出された二人の兄弟の写真は、私たちに違和感を抱かせ続け、雑音を完全に取り除いたかのような無菌状態を強調し、兄弟と風景との関係性とそこから切り離された二人の関係性の描写、といった複雑な視点を私たちに提供してくれます。
オハッド氏の共同プロジェクトであり、彼の素晴らしい兄弟である@itaybenit によって形になった作品群。この一連の写真が、オハッド氏らの父親によって撮られたものであるということも、重要な事です。
このプロジェクトは、2019年度の写真フェスティバルで特集されましたが、ここでは、そのフェスでは発表されなかった写真を掲載したいと思います。
次回の作品紹介も、お楽しみに!
Credit: Ohad Benit Collaboration with Itay Benit
Photography by Avner Benit
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