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書道と水墨画の真髄をイスラエルで説く石井和男師匠

by クニコ コーヘン |2022年04月20日

世界を魅了する日本の伝統文化。イスラエルも例外ではありません。イスラエルには柔道、空手、合気道、日本舞踊、書道、水墨画といった、様々な日本の伝統文化を指導する素晴らしい日本人の方々がいます。


イスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠

今回はその中でも、長年イスラエルで書道と水墨画を指導し続ける石井和男師匠に注目。日本伝統文化の伝授に掛ける人生観を伺いました。


イスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠
石井和男師匠

―――まずは石井先生についてお話を聞かせてください。


私は埼玉県で生まれ、9歳の時に書家である伯父より書の手ほどきを受けました。そして大学卒業後、中国人の芸術家たちに師事し、書および水墨画を学びました。


イスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠の死海でのパフォーマンス
死海でのパフォーマンス

―――石井先生にとって書道および水墨画に対する概念、真髄は何でしょうか。


そうですね、書画同源(「(書法)」と「絵画」は根本的に同じという意味)、調和、格に入って格を出る、でしょうか。


イスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠のエルサレムでのパフォーマンス
エルサレムにて

―――石井先生はいつ、どのような経緯でイスラエルに来られたのですか?


イスラエルに来たのは、もう25年前になりますね。きっかけはイスラエル人女性との結婚です。


―――なぜイスラエルで書道と水墨画を指導しようと思ったのですか?


イスラエルに来る以前から書道と水墨画を教えていたので、イスラエルでもぜひ指導してみようと考えました。


イスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠の作品「舞子」
『舞子』

―――イスラエルで書道および水墨画を指導する上で、何か心がけていることはありますか?


そうですね。一番大切なことは、イスラエルの文化や習慣、癖などを理解した上で、しっかりと説明し、理解してもらうことです。


イスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠の作品「深夜桜」
『深夜桜』

―――イスラエル人は日本文化に対してどのような認識を持っていると思いますか?


イスラエル人は日本文化をとても興味深いものと捉えているようですが、一方で理解が難しいと感じることも多いようですね。


イスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠の作品「鹿」
『鹿』
イスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠の作品「喝」
『喝』

―――なるほど。ではどのようにイスラエル人の生徒に指導しているのですか?


私の手法は、まず授業の前に生徒たちにお手本を配布し、授業で説明します。そして実際に私が描いてみせ、生徒たちにも練習してもらいます。その後、自宅で練習するよう宿題を出しています。


イスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠の授業の風景
イスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠の作品「Mysterious」
『Mysteroius』

―――現在イスラエルのどこで指導されていますか?生徒さんたちの年齢層も教えてください。


現在はテルアビブで指導しています。生徒の年齢層は20代~70代ぐらいですね。


イスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠と生徒たち
生徒たちと

―――生徒たちの書道および水墨画に対する反応はどのような感じですか?


見た目は簡単そうに見えますが、実際に描いてみると結構難しいという反応が多いですね。


ティコティン美術館でパフォーマンスを行うイスラエルで書道と水墨画を指導する石井和男師匠
ティコティン美術館にて

―――今後挑戦してみたいことは何ですか?


将来の希望として、壁画を描いてみたいと思っています。また大きなキャンバス制作にも興味があり、こちらも挑戦してみたいですね。以前のように、日本でも指導したいと考えています。


―――ぜひ日本でも石井先生の指導を期待しています!それではここから少しプライベートな質問を。書道、水墨画以外に趣味などはありますか?


そうですね、旅行やスポーツ観戦が好きです。


―――お子様はいらっしゃいますか?


子どもが二人いて、長男は日本在住、長女はイスラエル在住なのですが、二人とも私の活動に敬意を払ってくれているようです。ありがたいですね。


―――自慢のお父さんなのですね!それではイスラエルで好きなものは?


好きな食べ物でいえば、イスラエルのデーツやナッツ類が好きです。


―――石井先生、今回はお忙しいなかインタビューに快く対応いただきありがとうございました。


遠く離れたイスラエルの地で、異なる文化を持つイスラエル人に書道そして水墨画を指導することは決して容易ではありません。しかし、相手を理解した上でその真髄を丁寧に指導することで、イスラエル人生徒たちは書や水墨画に魅せられ、また石井先生自身にも魅せられているのではないでしょうか。


石井和男氏プロフィール

1957年埼玉県生まれ。早稲田大学演劇専攻卒業。 9歳のとき伯父(書家)から“書“の手ほどきを受け、大学卒業後二人の中国人芸術家に師事し、本格的に”書“”水墨画“”印“の修行を始める。同時に気功太極拳も学び、文武両道を実践する。 1989年より各種展覧会に参加<1989湯島聖堂ギャラリー(東京)1990上野の森美術館(東京)、1990,1993中国歴史博物館(中国)、2006ビリニュス芸術アカデミー(リトアニア)、2007河南美術館(中国)、2010ラテイ美術館(フィンランド)、その他多数> 1997年イスラエルに渡り、ハイファ大学で教鞭をとりながら、ギャラリー、 美術館等で作品を発表する。イスラエル博物館、ティコティン美術館に作品が収蔵される。さらにベツァレル芸術アカデミー、ヘブライ大学、テルアビブ大学等から招待され講義、デモンストレーションを行う。
2006年“Shiboku Studio”設立。 イスラエル在住

http://www.shiboku.com/


主な個展

1998ティコティン美術館(ハイファ)

2000ヘブライ大学ボタニカルガーデン(エルサレム)

2001オラニムカレッジアートギャラリー(ティブオン)

2001 ハイファ大学東洋芸術ギャラリー(ハイファ)

2002べイトタミ(テルアビブ)

2003クカンギャラリー(ヨドファット)

2004ワッツイベントスペース(埼玉、日本)

2004ラマトガン極東美術館(ラマトガン).

2005ウィルフリードイスラエル美術館(キブツハゾレア)

2007ティコティン美術館(ハイファ)

2007在イスラエル日本大使館(テルアビブ)

2008 LA ギャラリー(ヴィルニス、リトアニア)

2009 ノルデックハウス(レイキャビック、アイスランド)

2012 アーティストハウス(エルサレム)

2012 テルアビブ大学・グリーンハウス(テルアビブ)

2014タルギャラリー(クファル・ブラディム)


イスラエルでのレッスン

月曜日:4月25日~6月27日(5月23日除く)

水曜日:4月27日~6月29日(5月18日除く)

金曜日:4月29日~6月24日(5月20日除く)

10:00~11:30(イスラエル時間)

1440NIS / 8セッション