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CULTURE

太鼓を通して文化を繋ぐ、イスラエル人プロ太鼓奏者

独占インタビュー|ニタイ・ゼルニカ(TAIKO LIFE Israel 創設者)

2000年以上の歴史をもつ日本の文化的伝統、太鼓。世代を超えて受け継がれ、今日の日本でも愛されています。


イスラエル人のニタイ・ゼルニカ氏は、台湾と日本で太鼓の腕を磨いた太鼓演奏者です。彼は、所属しているチームの”Taiko Life Israel”と共にイスラエル中を旅し、 太鼓のパーフォマンスを披露するだけでなく、伝統的かつモダンな彼の演奏スタイルを教えています。 


今回ISRAERUウェブマガジンではニタイ氏に、太鼓に興味を持ったきっかけや、芸術を通して文化的交流を活発にさせるパッションについて伺いました。


ショー「The Elements」より、2019年11月テルアビブ「Bascula」(Photo by ウラジミール・ポポフ)

ニタイ氏が見つけた和太鼓の魅力

ニタイ氏が音楽に興味を持ち始めたのは幼い頃。プロのオーケストラでコントラバスを演奏するミュージシャンである母の影響で自身も音楽に興味を持ち始めました。兵役後、アマチュア対象のドラム学校に通い、大学でも演奏を続けます。


Taiko Life Israelにて正確なビートで演奏をするニタイ氏の母オリット氏。ショー「The Elements」より、2019年11月テルアビブ「Bascula」(Photo by Dedi Ozer)  

ある日の夜、大事な試験のために勉強していたところ、彼が以前観た映画「The Drummer」が頭から離れられなくなりました。この映画は主人公が夢を追うために家を出て、Zen drummerのグループの一員になり、音楽を通して自分を見つけていくという物語です。ニタイ氏は映画のことをずっと考え、映画に関する情報を探し続けました。



「映画に出演しているドラマーたちは、プロの演奏者であることが判明し、とても刺激的な夜でした。次の日に大事なテストがあるのにも関わらず、映画のことが頭から離れられなくて、姉に電話しましたね。姉は、私の音楽に対するパッションを応援してくれました。」


ニタイ氏はその後、映画のドラマーたちが台湾人であることを知り、インド旅行中に出会った台湾在住の友人に連絡し、そのグループについて聞いてみることにしました。友人はグループの連絡先を探し出し、ニタイ氏はそのグループに連絡しました。


伝統的な太鼓の演奏方法を学習

そして台湾でそのグループ、”優人神鼓”から太鼓を教えてもらうこととなったニタイ氏は、中国語の学校にも通い、そこで後に妻となる日本人の佐藤真帆氏に出会いました。   


真帆氏はニタイ氏のストーリーに興味を持ち、太鼓の原点である日本へ訪れるように勧めました。そこでニタイ氏は、台湾での二年半の勉強を経て、日本を訪れることとなります。


来日した彼は、埼玉県に拠点を置くグループ、“鬼太鼓座”に参加。日本人の普段はスーツを着て、尊敬を表すべく距離を保つ一面、太鼓を叩く時は全身全霊を捧げる日本人の国民性に惹かれたとニタイ氏は語ります。



太鼓奏者たちと生活するのは楽ではありませんでしたが、とても勉強になるものでした。


「建物を入る時に靴を脱がなきゃいけないとか、生活の仕方が全然違いました。何かをやる時には常に急がなければなりませんでしたしね。太鼓を持ってきてと指示されれば、走って取りに行っていましたよ。「あ、間違えた」と言うのではなくて、常に正しく物事を行う必要がありました。


言われたこととその意図を読み取っていくのが、とても難しく感じました。練習を続けていることを褒められていると思いきや、他の人が練習できないという意味だったり。いろんなことを理解するのはとても難しかったし、誰も説明などしてくれません。


その一方、全く違う世界に入って、厳しいスケジュールの上でもっと練習に打ち込むことができました。彼らが物事に打ち込む様子はすごいものでしたよ。その後、他のグループの方々とも出会い、太鼓のコミュニティに触れることができて、太鼓がどのように人々を繋げるかを感じました。」


2017年11月アシュドッド国際ジャズフェスティバル(Photo by Taisia Eltsina)

イスラエルでのTaiko Life Israel

日本で5年間の修行を経て、ニタイ氏は真帆氏と一緒にイスラエルに戻りました。太鼓という芸術を広めるべく、彼らはTAIKO LIFE Israelを創設。幼稚園に通う子供たちとその保護者たちを含めて、興味を持ってくれた全ての人に太鼓を教えました。


現在ニタイ氏と真帆氏は、イスラエルにて太鼓で生計を立てています。年齢など関係なく、全ての人に太鼓を教えるクラスを提供するほか、プロの太鼓奏者としてTaiko Life Israelでも活躍しています。


ショー「The Elements」より、2020年1月テルアビブ「Bascula」(Photo by Taisia Elsina)

「パフォーマンスを人前で披露できるまでのレベルに達するのには、すごく時間がかかりました。パフォーマンスの間に自身の物語を語り、視聴者を音楽と結びつけます。これによって、より個人と文化との繋がりを深められます。」


Taiko Life Israelはニタイ氏の妻である真帆氏も含め、イスラエル人と日本人アーティストにとって家のような場所です。彼にとって太鼓は単に音楽のことではなく、文化と文化が繋がる方法でもあると信じています。


「私たちのチームには日本人2名が所属しています。私たちの演奏は異文化を感じさせるようなもので、イスラエルの視聴者と繋がれる一つの大きな特徴です。それは日本から学んだエネルギーであり、人々を魅了しています。


私と妻の真帆氏以外にTaiko LifeIsraelは現在、日本生まれイスラエル人エイナット・チタヤット氏と30年以上のコントラバス奏者として経験をもつオリット・ゼルニカ氏、日本人篠笛奏者の片岡実保氏が所属しています。」


ショー「The Elements」より、2020年1月テルアビブ「Bascula」(Photo by Taisia Elsina)

ニタイ氏は、太鼓は人々と文化を繋げることのできるツールだと考えています。


「私たちのスタイルは東洋の演奏方法を取り入れており、気配りがあり、深い意図を持ってすべてのエネルギーを共有しています。これらの普遍的な特質により、太鼓音楽は文化を超えてあらゆる心に届くようになります。」



Official Website


https://www.taikolife.org/