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![イスラエル映画「旅立つ息子へ」](https://israeru.jp/wp-content/uploads/2022/06/thums_fb3-1024x538.jpeg)
いつかは必ず訪れる子供の自立。子供が大学へ入学し家を離れる時、就職、結婚する時など人生の節目である場合ははっきりと認識できますが、そうでない場合はなかなかタイミングを見つけるのは難しいものです。映画「旅立つ息子へ」はその来るべき瞬間を美しく、繊細にそして切なく、描き出しています。
映画紹介とあらすじ
かつて売れっ子のグラフィックデザイナーだったアハロンは、現在はひとり息子のウリと田舎町でのんびりと暮らしています。ウリは自閉症スペクトラムを抱えていて、アハロンが24時間、献身的に世話をしています。むしろウリの面倒を見ることが今やアハロンのライフワークとなっています。しかし、離婚した妻、タマラは自分たちがいずれいなくなる将来を心配して、ウリを専門の施設へ入れようとします。アハロンは渋々了承するものの、入所の日にウリは大好きな父との別れにパニックを起こしてしまいます。そこでアハロンは「息子は自分が守る」と決意し、2人の逃避行が始まりました。しかしお金が底をつき、次第に追い込まれていきます。果たして2人の逃避行の行方はどうなるのでしょうか。
映画の見どころ
以前にこのシリーズで紹介した映画「靴ひも」も、障害を持つ息子とその父親との絆を描いた映画ではありますが、この映画はどちらかというと子離れできない父親にフォーカスしています。そして子離れできない、したくない親に新しい幸せの形を見せてくれます。
ウリが父親を信じ切った屈託のない満面の笑みをアハロンに向ける瞬間や、ウリが楽しそうにしているのを優しい眼差しで見つめる父親の表情など、子を持つ親が、ぐっと胸に迫るようなシーンが随所に見られるところが作品の一つの魅力となっています。
また、車窓から見える美しい海岸線を眺めながら、アハロンの知り合いや行きたかった場所を訪ねていく、二人の逃避行はロードムービーとしても楽しめます。そこでアハロンの過去について友人が触れる場面があり、ウリから離れられない別の理由も見えてきたりもします。
自分がウリを守らなければと思っていたアハロンですが、この逃避行を続けるうちに想像以上に大人になっていたウリを発見していきます。特に、旅の最後の方でアハロンは目を離したすきにいなくなったウリを必死に探すが、そこにはダンスを楽しむウリの姿があり、別れの準備ができていなかったのは、自分のほうだったに気付きます。
この映画、実話をベースにした物語で親子の愛や自立という普遍的で世界共通の身近なテーマを扱っているだけに、多くの人の共感を呼び起こし、映画を観た人の心にいつまでも温かいものが残り続けることでしょう。
ラストシーンで二人が下したベストな決断は、これから親離れ、子離れに向き合う人に勇気と希望を与えてくれることでしょう。
<作品情報>
タイトル:「旅立つ息子へ」
原題:Hine Anachnu
公開年:2021年3月(日本) イスラエル・イタリア合作
監督:ニル・ベルグマン
脚本:ダナ・イディシス
出演:シャイ・アビビ、ノアム・インベル
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