Share

CULTURE

【連載】映画で巡るイスラエル Vol.07|「テルアビブ・オン・ファイア」

by 福島洋子 |2022年05月11日

映画で巡るイスラエルバナー

今回は、2019年に11月に日本で公開になった映画「テルアビブ・オン・ファイア」を紹介します。劇場でご覧になった方も多いのではないでしょうか。タイトルこそ戦闘シーンを漂わせていますが、公式サイトに「紛争なし!爆撃なし!笑いあり!」と書かれているようにれっきとしたコメディー映画です。


映画紹介とあらすじ

エルサレムに住むパレスチナ人青年のサラームは、人気メロドラマ「テルアビブ・オン・ファイア」の製作現場でヘブライ語の言語指導者として働いています。彼はエルサレムからパレスチナの現場に通勤するのに、毎日検問所を通り、IDを見せなければなりません。ある日、サラームは検問所でイスラエル軍司令官アッシに呼び止められたことがきっかけで、アッシが強引にこのドラマの脚本のアイデアを提案し始めます。サラームもアッシのアイデアのおかげで出世を果たしますが、ドラマの結末をめぐって、アッシと制作側の意見が対立し、サラームは窮地に立たされます。そして最後にサラームが出した奇想天外なアイデアでドラマが完結します。


YouTube「テルアビブ・オン・ファイア」

映画の見どころ

劇中劇のタイトル「テルアビブ・オン・ファイア」は、1960年代第3次中東戦争前夜を舞台にしたパレスチナ人の女スパイとイスラエルの軍人の禁断の恋物語。そのコテコテのドラマをイスラエル人もパレスチナ人も夢中になって見ているシーンが結構出てくるのですが、思わずほっこりとした気分になり、どこの国も一緒なのねと妙な親近感が湧いてきます。そしてこのドラマのテーマソングが、どことなく日本の昭和のドラマを思い出させるような曲調で、思わず笑ってしまいます。


また、この映画では中東の食卓には欠かせないフムスが多く登場します。フムスはひよこ豆をすりつぶし、練りゴマ、ニンニク、オリーブオイル、レモン汁などを加えてペースト状に練った食べ物で、ピタパンや野菜スティックによく合います。日本でも中東料理店での人気メニューになっています。映画の中ではアッシに頼まれてえ、サラームが美味しいフムスを探して、いろいろな店を訪れる場面が出て来るのですが、このシーンを見ていると無性にフムス食べたくなります。このフムスを使って、文化の違いを皮肉るシーンもさりげなく入れているところもお見事でした。


You Tube「テルアビブ・オン・ファイア」

パレスチナとイスラエルを扱う映画と聞くと一見シリアスで複雑な展開が予想されますが、それをいい意味で裏切り、コメディーに仕立て上げた監督の手腕が光る映画です。いつの間にか映画を観ている観客が、映画の中のドラマの結末の脚本が気になりはじめ、気づいたら監督の思惑通り、この映画に夢中になっているのか、劇中劇のメロドラマに夢中になっているのかわからなくなってしまいます。


派手な展開はありませんがですが、作品全体にユーモアのセンスがちりばめられている映画です。気になるサラームが書いた笑撃の脚本のラストシーンは、ぜひ映画でご確認ください。

<作品情報>
タイトル:「テルアビブ・オン・ファイア」

原題:Tel Aviv on Fire ヘブライ語: תל אביב על האש
公開年:2018年/ルクセンブルク・フランス・イスラエル・ベルギー合作
監督:サメフ・ゾアビ
脚本:ダン・クレインマン、サメフ・ゾアビ
出演:カイス・ナシェフ、ヤニブ・ビトン、ルブナ・アザバル


映画で巡るイスラエルバナー