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CULTURE

【連載】映画で巡るイスラエル Vol.04|「靴ひも」

by 福島洋子 |2022年03月30日

映画で巡るイスラエルバナー

今回紹介する映画は、2020年に日本でも公開され、世界中で感動を呼んだ親子の絆を描いた「靴ひも」という作品です。映画館でご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。現在は、Amazonプライム・ビデオやU-NEXTなど複数の動画配信サイトで視聴できます。


映画紹介とあらすじ

小さな自動車修理工場を営むルーベンは、30年前に妻と発達障害のある息子ガディを捨て、家を出ていきました。しかしながら、ガディの母親の急死によって、ガディと暮らすことを余儀なくされます。30年ぶりに一緒に暮らす二人。ガディの発達障害が原因で様々なトラブルが起こり、ルーベンはなかなかガディを受け入れることができません。しかし、一緒に暮らすうちにガディの明るく、素直な性格が、ルーベンの心を溶かし、二人の距離がだんだん縮まっていきます。そんなところに腎不全を患っていたルーベンの症状が悪化、ここからストーリーが佳境に入っていきます。


この映画は発達障害や腎臓移植など思い題材を扱っていますが、作品全体を通して流れる空気感は前向きで明るいものとなっています。それはガディのピュアでフレンドリーな性格、そして、ソーシャルワーカーやルーベンの同僚など周囲の人たちが皆温かいのです。ガディを見守りつつも偏見で見ることはなく、一人の仲間として接しています。


YouTube「靴ひも」

映画の見どころ

この映画を観ると、イスラエルという国がいかに障害者に対して優しい国かというのがわかります。優しいというのは、障害者を特別視することなく、自然に当たり前のように受け入れているところです。障害のある人を変に意識してしまう日本でもこの点は見習うべきだなと感じました。


ヤコブ・ゴールドヴァッサー監督自身、発達障害を持った息子を持っていて、障害を持つ人々に対する意識を変えるきっかけになってほしいという思いから、この映画の仕事を引き受けたという経緯があるだけに、ガディが何度も発する「僕はサポートを受けなければならない人」という言葉にいろいろ考えさせられます。ガディは発達障害であるために人よりも特別なサポートを受ける事はありますが、健常者だって、いろいろな人のサポートを受けないで生きている人は皆無なのではないでしょうか。


YouTube「靴ひも」

本作は、2018年イスラエル・アカデミー賞で8部門にノミネートされ、父親役のドブ・グリックマンが助演男優賞を受賞しました。また、アメリカ各地の映画祭で観客賞を多数受賞しています。


この作品のタイトルの「靴ひも」。映画の中で靴ひもを結ぶシーンが3回登場します。それぞれのシーンで、靴ひもを結ぶという行為が重要な意味を成しています。1回目は結ばなかった靴ひも、2回目は結べなかった靴ひも。そして3回目は・・・ぜひ映画を観てご確認下さい。


季節柄、新しい旅立ちをする方も多いことでしょう。靴ひものシーンを通して、ガディに前へ進む勇気をサポートしてもらってはいかがでしょうか。

<作品情報>
タイトル:靴ひも

原題:Laces
公開年:2018年
監督:ヤコブ・ゴールドヴァッサー
脚本:ハイム・マリン
出演:ネボ・キムヒ、ドヴ・グリックマン、エヴェリン・ハゴエル


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