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日本とイスラエルを繋ぐ「愛の力」を体現する武術家の経営者 元駐日イスラエル大使エリ・コーヘン

〜神様の欠片が入った私たちの使命〜その三

by YUKO IMAZAIKE |2022年09月12日

義の道標は下丹田

エリ・コーヘンさんはなぜ、見ず知らずの私を救ってくれたのだろうか?​

その答えを筆者の私は、彼の生き様から一つひとつ紐解いていった。(其の二参照


日本とイスラエルを繋ぐ「愛の力」を体現する武術家の経営者 元駐日イスラエル大使エリ・コーヘン
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日本とイスラエルを繋ぐ「愛の力」を体現する武術家の経営者 元駐日イスラエル大使エリ・コーヘン 日本とイスラエルを繋ぐ「愛の力」を体現する武術家...

YUKO IMAZAIKE / 2022年06月30日


エリさんへのインタビューを重ねる中で、彼の人生の指標は正しさでも数の多さでも好みでもなく直感で、それは腹の感覚であるということが、ありとあらゆる角度から感じられた。


彼が語る「私たちの中に、神様の欠片が入っている」ということの真意なのだとも汲み取れる。自分の腹の声に従うことが天命なのだと察する。(其の一参照



日本とイスラエルを繋ぐ「愛の力」を体現する武術家の経営者 元駐日イスラエル大使エリ・コーヘン
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YUKO IMAZAIKE / 2022年08月08日


エリさんは、2003年に当時アリエル・シャロン元首相が党首をつとめたリクード党から繰り上げ当選で国会議員になった。

財政、金融、経済、日イ友好関係、教育、防衛などを中心に活動し、忙殺の日々だったという。

「それはものすごい量のプロジェクトや案件を抱えていたよ」と、エリさん。


問題こそが成長の鍵

(以下、鉤括弧内はエリさんの発言)

「1日、10〜15個のミーティングがあって、一つのミーティングに10人も20人も僕のオフィスにひっきりなしに人がくる。それが毎日続いた。

一つこなすと、さらに、皆が問題を持ってくるようになる。

もうイスラエルには、数えきれない問題だらけなんだよ!

(Many many many issues! You don't imagine!)」


イスラエルの問題解決、想像するだけで大変な話だ。農業、建設、電力、原子力問題…何でも解決していくエリさんに、やがて彼の専門分野には全然関係ないようなことも、どんどん持ちこまれるようになってきたそうだ。


エリさんは内心、「助けてくれ!私には、答えなどない!(Who can help me? I don’t have any solutions!)」と、神頼みしていたそうだ(笑)。


 「誰が誰か、名前さえわからなくなっていた(苦笑)。

 仕方なく、目の前に座っている人に、『OK、そこのあなた、話しなさい』と促した。

それで、自分は、こうして目閉じていた。

嫌味でやったわけでないよ!潜在意識だった」


そういうと、エリさんは両手のひらを合わせて眉間につける格好を見せてくれた。限界に追い込まれていたのだろう。


「でも、こうしている時、私は全員のことが見える。

全員のことを感じることができる。

空っぽとは、このこと。

すると、何の解決法も知らないはずなのに、腹からパワーがさーっと流れてくる!」


そう語るエリさん自身が、だんだんとエネルギーに満ち溢れ、核心たる勢いを増してきた。


「この問題はこの人が詳しい、このことはあそこにいって調べてみよう…と、どんどん解決されていく」


いよいよ議題の決定を下す時、まだ意見を言っていない人が必ずいたそうだ。一つの会議が20分そこそこなのだから仕方ないとはいえ、その人達は政界の重鎮ばかりで気難しい空気になることもあったそう。


そこでエリさんが言ったことには、


「もし、今回の私の決定が気に入らなければ、また話せばいい。

でも、もしもう満足であったなら、なぜ時間を無駄にする必要があるだろう?」


ということだった。


「私の決定に反対した人はいなかったよ。皆、受け入れた。それも毎回!」


(筆者)「なぜでしょう?」


「それはね。

瞑想していたから。腹を感じていたから。

空っぽの中から、答えを導いたから。

皆の意見も、皆のエネルギーも十分感じていた。

マインド(心)と腹は、一致している」


エリさんの、神様の声の聞き入れ方だ。

正反ではなく、多数決でもなく、腹に聞いた直感の答えを出す。


「正直なところ、自分が話を始める時、次の瞬間何を話し始めるか自分でもわからないんだ。(笑)でも、そういう時こそ、皆黙って聞いてくれた」


冗談気味に、また真剣に、そう語るエリさん。


結論が出ない時は、情報の欠如だったり、誰かが誰かを嫌っていたり、往々にして中立でない状態だったという。そんな場合は、決定ができないということが決定される。

こういう時は、一人ずつ課題を出して、また一週間後に会う等の形をとったらしい。


私は、これが自分と向き合う方法なのだと深く納得した。おそらく、エリさんの武術家的感覚が反映されている一面だ。

往々に、西洋的感覚の議論というものは、相手を説得し、あるいは論破する方向に行きがちで、それは弁がたつ方が勝ってしまう。平和的手段でとった議論が勝敗を作り、また衝突の原因になってしまっていることも多い。


東洋には、相手を力で変えることを美徳にはしない世界観がある。特に武術では相手の力にリアクションしないのはもちろんのこと、それすらも借力に、最小限のエネルギーでその場をおさめていく。それぞれが自分自身(の課題)に向き合い、落ち着くところに落としていくのは、問題の解決というより最適化、とても自然で摩擦が少ない。


「心を開け渡し、腹に聞きなさい。答えの方がやってくる」


 Open your mind, listen to your HARA ,The solution comes for us.



最適という正しさ、足を知る

エリさんが、人生の波乗りの極意に重要と掲げることの一つに「タイミング」がある。


「空手でもダンスでもなんでも、我々は二つの、あたかも矛盾したことの中で生きている。

一つ、流れに身を任せること

二つ、決断して行動すること

ずっと流れて好きにしている人もいるにはいるけれど、大きなことを成し遂げるには、両刀使えないといけない」。



「それには、最適なタイミングで決定を下すこと。

時には、準備が出来ていなくても実行する。

なぜか?

タイミングがベストだからだ」


適切なタイミングで動く時、それは必ずしも、その人にとってのベストの状態ではないかもしれない。現代では、自分と周りとの関係が切れてしまい、自分にとって都合のいいタイミングしかベストに感じることすらできなくなっていると筆者は思う。

時が来ている兆しを感じられることは、広くまわりが見える能力であり、その時代の流れに人生を開け放つ強い覚悟がある証拠だと、エリさんをみていて感じた。


そして、彼はこう続けた。


「もし、あなたが足ることを知らず、欲しがりすぎたらタイミングを失う。

成功はしない。

タイミングがいいならば、その状態に満足することが大切」


Even if it’s not the best, but do!

Because the timing is right. 


それは、今ある全てに感謝できる能力ともいえると思う。もし良くない結果を招いたなら、また次回さらにベストを目指せばいい。ミスすることも大切なのだ。


経験者とはミスを多くした人

「ミスの真意とは、そこから学ぶことだ。

もし学ばなければ、同じミスが必ずくる」


何度も書いてきたようにエリさんは、どんな時も今を全力で生きているエネルギーがみなぎっている。まるで時間も命も「もったいない」と感じているかのようだ。これは筆者が体験してきた、武術家に共通する振る舞いだ。命の尊さを知る人ほど、生きることを大切にし、1秒たりとも無駄にせず挑戦し続けている。それは、大人になってもどんどん加速し、人を永遠に成長させ続けるようだ。歳をとった者が強い熟練者となる道の世界に通ずる極意でもあると思う。


「ミスは、子供からでも学ぶことかできる。

素直に感謝できて、その子供に、『ミスを教えてくれてありがとう!』と心からなれる」


エリさんのお孫さん。エリさんがつくった段ボール自転車に乗る
エリさんのお孫さん。エリさんがつくった段ボール自転車に乗る

エリさんは自慢のお孫さん達の写真を見せてくれて、彼らからエリさんがいかに学んでいるかを話してくれた。そして話題は、イスラエル建国の祖の一人といわれる活動家ジャポティンスキーの予言から、エリ・コーヘン家の驚きの系譜についてまで、またスケールを広げていった。


ゼエヴ・ジャポティンスキーは、ウクライナのオデッサ(当時、ロシア帝国領)に生まれたユダヤ人で、建国前のシオニズム運動の指導者として、ユダヤ人組織「エツェル」を創始、1940年に亡くなった。彼は、ヒットラー率いるナチスドイツによるユダヤ人迫害が始まる前に亡くなっているにも関わらず、1930年に当時今の欧州に住むユダヤ人に「逃げろ!(イスラエルに帰還しなさい)」といったことが有名で、エリさん曰く「今、ユダヤの民がディアスポラから決別しイスラエルに帰還しなければ、ドイツやポーランドが、あなたたちを殺すだろう」と、予言していたそうだ。


ジャポティンスキーが他にも言ったことには、


「(もし、ヘブライ語を学びたいなら)

間違いをしなければならない。(MUST MAKE MISTAKE)」


だったと、エリさんはいう。


もちろん、これは言語習得に限ったことではない。

ヘブライ語は一度失われた言語といわれ、21世紀に歴史上、恐らく最も劇的な復活を遂げた。ユダヤ人は離散を重ねるうちに、ヘブライ語を祈りにだけ使うようになり、3世紀頃には話し言葉としてはほぼ失われ、20世紀に当時のロシア帝国にいたエリエゼル・ベン・イェフダーのほぼ独力で話し言葉として現代に復活し、現在はイスラエルの公用語とまでなった。


日本語にしか聞こえない「実は知ってたヘブライ語」一覧
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日本語にしか聞こえない「実は知ってたヘブライ語」一覧 日本語にしか聞こえない「実は知ってたヘブライ語」...

ISRAERU 編集部 / 2020年06月18日


そもそも言語は、その民族が持つ意識の形の表れそのもの。毎日使用される中で最新の状態に淘汰され、言の葉として霊性を持ち、その民族の集合体が国家として現れる。

間違いを犯してでも言語を話さなればならないとしたジャポティンスキーは、国家を追い求める方法は力による戦術だけではなく、自分達ユダヤ人の霊的な意識の向上を問うていた可能性はないだろうか?


「国のなかったユダヤ人にとって、ミスをしないユダヤ人が一番のミスだった…」


ジャポティンスキーに賛同するように、そうエリさんは呟いた。


祭司一族のコーヘン家

エリ・コーヘンさんの家族は、チュニジアに故郷を持つ。

1948年7月、エリさんの両親は、建国されてまだ数ヶ月のイスラエルに帰還。エリさんは、翌年の1949年にエルサレムで生まれた。


なんと、その先祖を遡るとエリさんは、モーセの3才年上の兄であるレビ族アロンの正統な末裔なのだ。モーセは遠い叔父さんにあたることになる!

コーヘンとはヘブライ語で祭司のこと。旧約聖書の出エジプト記28章にある記述では、神は雄弁なアロンに対し、モーセに会い祭司として仕え共に民を導くように命じられた。そのため、アロンはユダヤ教における祭司の祖とされている。

そしてその記述では、アロンとその子を仕えさせえよとあるので、つまりエリさんも祭司ということになる!

儀礼だけでなくアロンの杖に代表されるように、魔術的な力さえ持ち備えていたアロン。エリさんが教えてくれたことには、モーセの子孫は祭司になることはなかった。アロンの末裔によって今も受け継がれているのが現代に残るユダヤの儀礼であり、祭司系譜コーヘン一族だそうだ。そしてそれは男子継承を貫く掟があり、2670年以上もの長い間貫いてきた来歴があるのだ。



(これらの話は、エリさん執筆の本「元イスラエル大使が語る神国日本」に詳しい。ぜひ、ご参照されたい)


チュニジアのジェルバ島には、コーヘン家の美しいシナゴーグが今も存在する。



日ユ道祖論の父、ヨセフ・ハイデルベルクの説によると「大化の改新」は、中大兄皇子と大海人皇子が蘇我氏を倒し「神道」を、国家宗教として国づくりするクーデターとされている。

その時の新法である「神道」を、古代イスラエル人の律法に合わせて作ったので「大化」はヘブライ語で、תִקוָהティクバTikva「希望」と名付けられたというわけだ。「ハティクバ(HaTikba)」は、現代イスラエルの国歌にもなっている。

中臣鎌足は天児屋命(あめのこやねのみこと)の子孫といわれ、天の岩戸の前で祝詞を奉納したことから言霊を司る祭司と言い伝えられている。その性質は、まるで旧約聖書のアロンのようだ。ここで「コヤネ=コーヘン」と解読でき、日ユ同祖説が成立するのだ。

もしこの説が本当であれば、エリさんは正統な日本神道祭司の末裔ということにもなる。


駐日イスラエル大使であった頃からエリさんは、日本とユダヤのつながりを探求し、全国を訪問していた。なぜそうするのか?という問いに、
エリさんは
「もし、ユダヤの民が日本にきていたとしたら、それは、私の家族だ」
と答えている。


当時訪れた阿波国。
徳島「神明神社」では、なぜユダヤのソロモン神殿と同じ造りの礼拝所があるのだと驚きを隠せなかったという。


徳島の神明神社は、本殿も社務所もない。かといって天然の巨石でもない明らかな人工物だが、雰囲気は聖地そのもの。

どの石組にも小さな石が一つ乗っており、中のお社は取手をつけたように新しい。中に入るには、お辞儀をしないと入れないような絶妙な石の板が置いてある。

旧約聖書によると、ユダヤの失われたアークと呼ばれる聖櫃は、普段はエルサレム神殿の奥の至聖所に安置され、一年に一度だけ祭司が運び出して検めたそうだ。

エリさんは、自分の家族のことを知りたいのだという。


祭司としてのヘブライ語や日本語の奥深さを遺伝的に、正しく本能的に知るエリさんだからなのか、言霊はもちろんのこと日本に残された霊的精神の息吹を、次々と明かしてくれることとなった。

私はインタビューを続けるにつれて、このエリ・コーヘンさんの直感が、古代から脈々と続く祭司一族の奥義をそっくりそのまま見せていただいているという重大さに気づき、さらに五感を研ぎ澄ましながら、ここに記述していこうと決意しなおしている。


つづく


Mistake will return.

But if you learn from your mistake, there is no smarter person than experienced one.

Learning from the mistake is our part of the life.

Do not judge yourself. Open your mind, and not afraid by making mistakes.


エリ・エリヤフ・コーヘン(Eli Eliyahu Cohen)
前 駐日イスラエル大使  イスラエル松涛館空手道協会名誉会長
1949年 エルサレムに生まれ。
ヘブライ大学数学・物理学科卒業。後にロンドンでMBA取得。
1986年 マーレアドミム市副市長。1991年 国防省ナハル局局長。1993年 周辺地域開発担当局長。1997年国防大臣補佐官に就任。
2003年 イスラエル国会議員(リクード党)
2004年から2007年まで、駐日イスラエル大使を務める。
2018年旭日重光章受賞
IT関係の会社経営者という民間の立場から国会議員、駐日大使となり、日本を愛し精力的に活躍。
日本人とユダヤ人の歴史的また霊的な共通性を指摘し、それに基づき、日イ友好関係の多くの交流基盤を築いた。
任期後はイスラエルと日本で会社経営し、環境ビジネスに取り組む。
イスラエル松涛館空手道協会名誉会長(松涛館五段黒帯)
全日本剣道連盟居合道(四段)
主な著書には「大使が書いた日本人とユダヤ人」「元イスラエル大使が語る神国日本」がある。