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CULTURE

日本とイスラエルを繋ぐ「愛の力」を体現する武術家の経営者 元駐日イスラエル大使エリ・コーヘン

〜神様の欠片が入った我々の使命〜その一

by YUKO IMAZAIKE |2022年06月30日

靖国神社にて居合奉納をするエリ・コーエン
2022年春、靖国神社にて居合奉納

I believe that we have a part of GOD.

「我々には、神様の欠片が入っているんだよ」


直球の言葉の数々で、聞く者を一瞬で魅了する。日本人以上に日本人精神を漂わせるイスラエル人武術家で、元駐日イスラエル大使のエリ・コーエンさんだ。


いわゆる宗教家という出立ではないが、彼の生き方は信仰が心の居場所そのものだと教えてくれる。神様に導かれ生きているという彼は、その感覚を直感で捉え、それに従う内に様々な能力が身についてきたようだ。レクチャーでも、世間話でも、全て即興と明かす彼の話ぶりは淀むことを知らず、それでいて内容は理路整然としていて、意識の鮮明さが漂う。


上記の他にも、軍人、聖職者、経営者、政治家、物理・数学者、哲学者、松濤館流空手の最高位黒帯五段(大島道場)師範で、居合も無双直伝英信流の五段、そして、ユダヤ教旧約聖書に記載のあるアロン祭司一族の正当な末裔で、日ユ同質論者とまで噂される…その肩書き(?)には、枚挙にいとまがなく、日本語の本の執筆は6冊にのぼり、もうすぐ7冊目が出版されるという知る人ぞ知る人物なのだ。


話し続けているのに、静かで落ち着いた印象がある。腹の中では溢れんばかりのエネルギーが高圧に渦巻いていると感じ取れる。
話し続けているのに、静かで落ち着いた印象がある。腹の中では溢れんばかりのエネルギーが高圧に渦巻いていると感じ取れる。

高度な内容の話の一方で、どんな時も、瞳の奥が子供のようにキラキラしている….これが筆者の私がエリさんから受けた最初の印象で、後々エリ・コーヘンという人物を考察する上で、非常に重要なポイントだということが明かされていった。


今回のシリーズからは、そんなエリ・コーヘンさん(以下、エリさん)に学ぶ、「美しい生き方=天然藝術」を数回に分けて多角的に紹介していくことにする。(天然藝術についてはこちらの記事を参照)



経営者としてのエリ・コーヘン=地球緑化プロジェクト=

段ボール自転車の写真

エリさんは現在、段ボールを材料に、車椅子や自転車、家具などをプロデュースする環境スタートアップ事業「CARD B」の創業者で最高経営責任者(CEO)を務め、イスラエルと日本を拠点に世界中で活動を広めている。


日本の「もったいない」精神をベースに、折り紙などの文化的アイディアも反映。紙をメタルの代用に使うといった、まるで実現不可能なアイディアの開発は、斬新で底力のある面子が揃うイスラエルで行った。製造ラインは、品質に信頼のおける日本を拠点とし、市場は、そのまま日本から、世界中を対象にする予定。エリさんだからこそ、目をつけることができたビジネス展開だ。


製品は天然素材なので廃棄後の再生利用も可能。材料の段ボールもリサイクル品を主に使えるのだから、見事に無駄がない循環を描いている。


ゴミの山を、金の山に変える

段ボール車椅子が並べられている写真
東京ビッグサイト「国際サステナブルグッズEXPO 2022'」にて

この日は、東京ビッグサイトまでサステナブル見本市のお披露目にご招待いただいた。会場に到着すると早速、遠くからでもエリさんの姿が目に飛び込んできた。自ら車椅子に乗って、行き交う参加者に披露している。


他の出展者がパネル版で仕切ったブースの中で装飾を施す中、彼は、仕切りを取っ払い、場所を完全に開放していたのだ。思わず寄ってみたくなる空間使い。自然と人だかりができていた。


ゴミが積まれている写真
ゴミの山を金山に!

真ん中には、堂々の段ボールのゴミの山!天辺には、金色に塗られた段ボール自転車が飾られてある。ゴミの山を金山に…。理屈抜きに体験型で、語りかけていた。自由で、リラックスしていて、イスラエル在住歴が長い私は、「とてもイスラエル的だなー」と、ある意味安心させられた。イスラエルでは、誰かの家に呼ばれ、そのまま居間でビジネストークに入ってしまうなんてこともよく聞く。その方が、商談が成立するという人もいた。小さなことはあまり気にしないイスラエルの気質が、世界のビジネスに生かされている、いい一面だ。


私の姿を捉えたエリさんは、大きな笑顔で出迎えてくれるや否や、「Do you wanna try?(車椅子、試さない?)」と、(特に、大口の顧客でもない私を!)段ボールの車椅子に乗せ、自ら押して会場内を散歩に繰り出してくれた。


「!!…かたい!」


まるで木のような質感。とても段ボールとは思えないくらい頑丈で、耐久性に富んでいる印象だ。乗り心地、安定感も抜群で、対重量はなんと、150〜200kg!子供用の椅子や玩具のキックバイクもあり、まさかこれら全部が紙で出来ているとは到底思えない仕上がり。段ボールを切らずに折って、高圧でプレスをかけ、強力な天然素材でコーティングする全ての工程において特殊な技法が組み合わされている。なんと、耐水性も100%!ゆくゆくは、タイヤチューブの部分も段ボールで作られる予定で、パンクもしなくなるそうだ。


日本の段ボールは、古紙再生率が90%を超え、世界でもトップクラスのリサイクル体制がとれていると聞いた。メイドインジャパンの高品質と、リサイクルインフラの整っている現状や、コスト安(日本の物価は、イスラエルよりも遥かに安い)などの考察も踏まえ、エリさんは、日本でスタートする事が、地球のダメージ軽減と、ビジネスの両方の面でベストだと考えているようだ。


エリ・コーエンさんがマスクをつけ、段ボール車椅子を持っている写真
段ボールでできた車椅子とエリさん。張り紙には「私はダンボールから作られています。木製ではございません」と書かれている

すでに、日本家電大手のヤマダ電機と契約が交わされ、一部販売に乗り出す予定。出資サイドを募ると同時に、販売先への商談にも余念が無い。工場は大阪と埼玉でスタート。そこでは、福祉も兼ねて障害者雇用の創出にも取り組む予定と、どの過程もエリさんの心遣いが感じられる。


私は、段ボール自転車のアイディアがお気に入りだ。これは車椅子ビジネスが軌道に乗れば、次に販売が考えられている。日本の都会における自転車利用率は高く、業務用段ボールの使用頻度も多い。イスラエルの商業都市テルアビブでも、自転車は生活の一部に欠かせない。古紙再生の活動から、生産、販売の面においても、それぞれの地域で連携を組むことが可能ではないだろうか?他面的なアプローチのおかげで、専門知識のない自分にでもアイディアが浮かぶのが、持続可能というポテンシャルを示しているようだ。


この環境事業は、エリさんにとって一世一代のプロジェクトといっても過言ではない。彼は、事業に全身全霊でいれることを、心から誇りにしているようで、1日たりとも力加減をしないで生きている様子が、見本市から感じられた。


時間も空間も、「もったいない」という感覚がエリさんにはあるようで、それがそのまま、「ごみの山を金に変える」プロジェクトに表れ、そして、彼の生き方そのものになっている。


エリさんと女性と車椅子の写真
エリさんと段ボールの子供用キックバイクに乗せていただいた筆者

広い空間を頂いたなら、それを生かす。ご縁で出会ったならば、その人と、この瞬間に全力で話す。与えられたことを無駄にせず、感謝して全力で取り組むこと。神様のおっしゃるままに、生きるということの一面を拝見した。


ビジネスで具体的に働きかけることにより、日本とイスラエルの人々が繋がり、その繋がりこそがビジネスを成り立たせるという、循環を描いている構図も注目したい。成功の鍵は、この事を知った私達にあるようで、まずは今回、執筆して、読者の皆様に知ってもらうことで貢献したいと思わさせられた。そうして、ビジネスが活性化されるほど、未来の子どもたちに、よき地球環境が残されるのは、循環をこえた進化(私はトーラスという言葉で呼びたい)、単なる環境や国際交流だけではない、2国間への思いやりが感じられ、感謝の念が尽きない。


それは、イスラエルと日本という両国が、太古の時代から深く繋がっているということ、その記憶の復活が、これから先の人類の指標となり、真の平和になり得るということを、エリさんが次々と明かしていってくれるからなのだ。


エリさんの家族との写真

つづく