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【連載】ワインの世界で活躍するイスラエルの女性たち Vol.5

オフラ・アレマン インタビュー

by Sapir Ben-Noun |2024年06月18日

イスラエルのワイン産業における、注目すべき女性たちにスポットライトを当てるシリーズ連載。最終回となる今章では、ワインインポーターであるオフラ・アレマンさんにお話を伺いました。


オフラ・アレマンさん

オフラ・アレマンさんインタビュー

ーーー自己紹介と、ワインのインポーターになろうと思ったきっかけについて教えてください。


私の名前はオフラです。イスラエルで生まれましたが、長い間アルゼンチンに住み、パラグアイにも住んだことがあります。約20年前にイスラエルに戻りましたが、アルゼンチンとのつながりは依然深く、頻繁に訪れています。アルゼンチン滞在中に、食文化に大きな影響を受けました。アルゼンチンではワインは日常生活に欠かせず、ワイン文化がまだ発展途上であるイスラエルよりもずっと重要なものです。アルゼンチンでは、ワインは毎食、特にランチと一緒に楽しむのが一般的です。ワインは生活の一部であり、生き生きとした人生の楽しい一部とみなされています。ワインのテイスティングは、専門家の世界では一般的ですが、そのほかの人々は、そういった作法なしでワインを一緒に飲むだけです。それに、アルゼンチンはよく肉を食べるので、料理の伝統を考慮すると、ワイン、特にマルベックは料理を自然に引き立ててくれます。マルベックは赤ブドウをベースにしたワインで消化にいいですし、口の中の油分を浄化してくれます。


このような文化的背景が私の食事に対する考え方を形づくりました。5年ほど前、アルゼンチンで働く娘に会いに行くため、夫とアルゼンチンを旅行しました。お土産にマルベックを買ってきてほしいと知り合いに頼まれたことが旅行中ずっと気になっていました。


ーーーなぜ気になったのですか?


それが、まるでイスラエル人にフムスを買ってきて、とお願いするようなとてもありきたりなリクエストだったからです。実際にはマルベックは幅広く、どれも個性的です。しかし、イスラエルではアルゼンチンワインはあまり知られていないので、旅行中にアルゼンチンワインを探求して、アップデートすることにしました。ワイン産業がとても発展していること、ヨーロッパ人までもがアルゼンチンのブドウ畑に投資していることを見て驚きました。色んなお店に行って、たくさんのワインを買って試飲し、やがてこれだと思うものに出会いました。


ーーーそれは、どんなワインだったのですか?


当時、イスラエルでは大手のワイナリーから仕入れる、最も安価なアルゼンチンワインしか売っていませんでした。そこで異なるアプローチをしてて、ブティックワイナリーやさらにはガレージワイナリーに焦点を当てたいと思いました。メンドーサからワインの輸入を始めました。1年ほど前に、コーシャワインを含むパタゴニアとアルゼンチン北部のワインにも手を広げました。現在では42種類のワインを扱っています。


メンドーサ近郊のブドウ畑

ーーーアルゼンチンワインの特徴について教えてください。


例えば、メンドーサはアンデス山脈の近くにあり、非常に高い山があるのに対して、パタゴニアは平坦で浅い。これらの異なる地域で栽培されたブドウから造られるワインはまったく違います。マルベック同士を比べても、違いは歴然としています。マルベックは万能の品種なので、ビーチで飲むのにぴったりな、軽くてフルーティーなワインを造ることもできれば、12年も熟成が可能なフルボディのワインを造ることもできます。最近、マルベックは世界中にとても流行っていて、若い人も飲もうと、アルゼンチンに旅行しています。近頃は、白ワインの評価も高まってきて、アルゼンチンの白品種であるトロンテスも人気が出てきています。アルゼンチンのブドウは、果実の性質だけでなく、ワイン造りのプロセスもヨーロッパとは異なります。


ーーー具体的に、どう異なるのでしょうか?


ヨーロッパでは、ワイン造りには数多くの法的制限や制約がありますが、アルゼンチンでは、ワインメーカーは一定の基準に縛られることなく、創造性やアイデアを表現する自由があります。私たちがブティックワイナリーから輸入しているワインには、この自由がより顕著に表れており、さらに個性が引き立てられています。7種類のマルベックがあり、それぞれ異なる畑のもので、様々な醸造技術が用いられています。


ーーーターゲット層は?


意外にも、アルゼンチンからイスラエルに移住した人だからという理由で買うお客さんはあまりいません。実際、私たちの顧客のほとんどは、アルゼンチンとは特に関係のないイスラエル人です。若いマルベックやパタゴニアのワイン、白ワインを購入する若者から、熟成ワインを購入するコレクターまで、私たちの顧客は実に多様です。また、レストラン、バー、肉屋、従業員へのホリデーギフト用にもワインを販売しています。



ーーー購買層はテルアビブのような 1 つの地域に集中していますか


そうとも限りません。キルヤト・シュモナからベエルシェバに全国各地からお客さんがやってきます。もうすぐエイラットにも拠点ができる予定です。私たちは末端消費者と個人顧客の両方にサービスを提供しています。直接に会えるのは楽しいものです。


ーーーワインを選ぶ基準は何ですか?


第1に味です。飲み続けられる 2 杯目も飲みたくなるくらいでなければなりません。第2はワインメーカーの理念です。持続可能性があり、自然への敬意があり、地域社会の幸福を優先するワインメーカーと協力しています。3 番目に、ワインの背景にあるストーリーです。たとえば、1831 年にまで遡るサルタの古いワイナリーであるコロメ・ワイナリーや、アルゼンチンで初めてロバート・パーカーから 100 点を獲得したロックスターのワインメーカー兼ミュージシャンであるメンドーサのマルセロ・ペレリティなどです。彼のワインは、フィロキセラ(ヨーロッパなどでブドウ畑を荒廃させたが、南米では発生しなかった植物病気)の影響を受けていないブドウの木から造られています。


最後はイノベーションです。私たちは定期的にアルゼンチンに行き、新しいワインを試飲したり、コンテストに参加したりして、常にダイナミックでユニークな選択肢がないか探しています。経済的なことは最重要事項ではありません。ビジネス的な側面は無視できませんが、他の基準の方がより重要です。


ーーー役所的な手続きはどうでしょう?どのように対処していますか?


経済省やイスラエル規格協会から取得しなければならないライセンスや許可がたくさんあります。さらに、何重にも税金がかかるので、財務面や物流面を管理するために詳細な事業計画を立てなければなりません。私たちはバーやレストランと取引しているので、ワインの安定供給は非常に重要です。不足を避けるために、この問題にはきわめて真剣に取り組んでいます。


オフラさんと、営業とマーケティングを担当するオフラさんの夫

ーーー価格についてはどうですか?


ワインの種類によって、幅広い価格を設定しています。そうすることで、様々なお客様とその好みに応えることができます。


ーーーイスラエルの地政学的状況の不確実性、あるいはコロナなどは、ビジネスにどのような影響を与えますか?


最近、あるアルゼンチン人とこのことについて話しました。アルゼンチンは、不確実性で知られる国です。私たち夫婦は、このような状況に対する回復力を身につけ、素早く適応することに慣れています。私たちはイスラエルで最大のアルゼンチンワインの輸入業者ですが、10月7日の戦争が始まったときはすべてのサプライヤーから電話がかかってきました。


ーーーこの状況がビジネスに影響することに不安を感じましたか?


はい、アルゼンチンは多くの不確実的要素を抱えていますが、戦争には慣れていないので、何が起きているのか理解したかったようです。幸い、いまアルゼンチンには親イスラエル派の大統領がいるので、イスラエルに対する感情はおおむねポジティブです。私たち自身は、精神的に仕事に復帰することが難しかったです。


ーーーええ、誰にとっても大変ですね。ワインを選び、試飲するためにアルゼンチンにどのくらいの頻度で行きますか?


少なくとも年に1回ですが、通常は2回です。加えて、サプライヤーから年間を通して新しいワインも送られています。



ーーー以前も輸入の仕事をしていましたか?


ワインの輸入は初めてですが、私たち夫婦はこれまでずっとマーケティングや小売業に携わってきました。夫がアルゼンチンで働いていた時期もありました。今はベンチャー企業で一緒に働いていますが、役割分担ははっきりしています。


ーーー仕事上での役割分担という意味ですか?


そうです。夫は主に営業とマーケティングを担当し、私はワインのテイスティングと顧客やチームの指導に重点を置いています。ソーシャルメディア・マーケティングでは協力しあっています。


ーーー将来のプロジェクトやアイデアはありますか?


はい、現在進行中のプロジェクトがいくつかあります。戦争の影響で中断更新を余儀なくされたものもありますが、たとえ進捗が遅くても、物事を前に進めようとしています。



イスラエルのワイン業界で活用する女性たちは、ワインメーカーからインポーターまで、さまざまな分野で働いています。イスラエルのワイン産業は古くからありますが、今も発展し、成長しています。私がインタビューした 5 人の女性、タルオリットノアナーマ、オフラは、この分野の発展に不可欠な役割を果たしている素晴らしいプロフェッショナルな女性たちです。彼女たちの物語が、読者の皆さんにもインスピレーションを与えることを願っています。



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