皆さんはコーシャ料理を召し上がったことはありますか?コーシャ料理とは、ユダヤ教の食事規則に基づく料理のことで、食べてよい食品と食べてはいけない食品が厳格に定められています。その特別な料理を提供するレストランが、世界で初めて、ミシュランガイドの星を獲得しました。そのサクセスストーリーをご紹介します。

歓喜の涙を流したシェフ、ラズ・シャブタイ氏
イスラエル人シェフがまたひとつ、世界の食文化史に新たなページを刻みました。米フロリダ州マイアミにあるコーシャレストラン「Mutra モトラ」が、ミシュランガイドで一つ星を獲得。これにより同店は、世界で初めて、そして現時点で唯一のミシュラン星付きコーシャレストランとなったのです。
レストランを率いるのは、エルサレム出身のシェフ、ラズ・シャブタイ氏(42歳)。受賞の知らせを受けた瞬間、喜びのあまり涙を流す姿がSNSで話題となリました。
「まだ信じられません。ミシュランは私にとって卓越性の象徴です。まるでオスカー賞やスーパーボウルを獲得したような気持ちです」。
そう語るシャブタイ氏のもとには、イスラエル国内外の著名シェフたちから祝福のメッセージが相次いだと言います。
故郷エルサレムから米国マイアミへ
シャブタイ氏が料理の世界に入ったのは13歳の頃。エルサレムのレストランで皿洗いとして働き始め、その後、ピザ店を含むさまざまな厨房で経験を積んだそうです。
現在は婚約者とともにマイアミに暮らし、約1年半前に自身のレストラン「モトラ」をオープンしました。店名は、彼を育てた祖母への敬意を込めて名付けられています。

レストランでは、中東料理をベースにした「ファーム・トゥ・テーブル」スタイルのメニューを提供。オープンキッチンを採用し、エルサレムの食文化や家族の温かさを感じられる空間づくりを目指しています。
「故郷が恋しかったんです。エルサレムや家族を思い出せる場所を作りたかった」。シャブタイ氏は、そう振り返りました。
コーシャとミシュランは両立できる
今回の受賞には、もう一つ大きな意味があります。コーシャ(ユダヤ教の食事規定)を守るレストランが、世界最高峰のレストラン評価であるミシュランから星を獲得したことです。
「肉と乳製品を混ぜないからといって、最高の料理が作れないわけではありません」と語るシャブタイ氏。
実は彼自身、敬虔な宗教家として育ったわけではありません。若い頃は非コーシャの料理も作り、食べていたそうです。しかし30歳頃、自らのアイデンティティについて深く考えるようになったと言います。
「私は何者なのか。ユダヤ人なのか、イスラエル人なのか、アメリカ人なのか。その答えを探す中で、自分のルーツに戻っていったのです」。
現在ではコーシャを守りながら、自身の料理哲学を追求し、それがミシュランの星獲得へと結びつきました。

マイアミは“テルアビブに最も近い街”
世界各地で反ユダヤ主義や反イスラエル感情が高まる中、シャブタイ氏はマイアミについて次のように語ります。
「マイアミはユダヤ人を受け入れてくれる街です。ヘブライ語を話しても、キッパーをかぶって歩いても安心できます」。
彼にとってマイアミは、「テルアビブに最も近い雰囲気を持つ街」なのです
次の晴れ舞台は自身の結婚式
ミシュラン受賞という人生最大級の栄誉を手にしたシャブタイ氏ですが、その表情に驕りはありません。
「これからも謙虚に、誠実に、良い人間であり続けたい」。
そして受賞からわずか数週間後の6月中旬には、イスラエルで婚約者との結婚式を控えています。
エルサレムの少年が皿洗いからスタートし、世界で初めてミシュラン星付きコーシャレストランを生み出した――。
その快挙は、イスラエルの食文化が世界に与える影響力の大きさを改めて示していると言えるでしょう。
*本記事はイスラエルメディアYnetの報道をもとに構成しています。


