イスラエルという国の名前を聞いたことはあっても、どのような国か詳しい方は、それほど多くないのではないでしょうか。イスラエルは、人々の生活と宗教が深く結びついたユニークな国です。実は、スタートアップ大国でIT技術に優れているという側面もあります。
今回は、イスラエルの魅力を観光や経済、宗教など様々な角度からご紹介します。この記事を通して、今まで知らなかったイスラエルの魅力を知ることができるでしょう。
目次
イスラエルの観光スポット
まず観光地としてのイスラエルを語るうえで、世界遺産に登録されているエルサレム旧市街は、外せない観光スポット。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三つの宗教の聖地で、街には宗教を象徴する美しい建築物が立ち並んでいます。小さな旧市街の中に三宗教の聖地が共存している様は、イスラエルでしか見ることができません。
ヨルダンとイスラエルの国境にある死海を観光するのもおすすめ。死海は、メジャーな観光スポットのひとつとなっており、死海に浮かぶ体験もできます。身体の力を少し抜くだけで水上に浮かぶ不思議な体験をしてみてはいかがでしょうか。
観光以外にもイスラエルの魅力はあります。実は、イスラエルでは起業やIT技術のイノベーションが盛ん。世界のIT産業を引っ張る存在として近年注目されています。
IT産業やダイヤモンド産業が経済の中心となり、イスラエルは8.1%(2021年 イスラエル中央統計局)という高い経済成長率をみせています。(出典:外務省|イスラエル基礎データ)
近年、GoogleやApple、Microsoftといったアメリカの大手の外資IT企業がイスラエルのスタートアップ企業を買収しています。例えば、Googleのサジェスト機能は、イスラエル発の技術として知られています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、日本政府はイスラエルと協力して、サイバーセキュリティの強化に取り組みました。イスラエルのIT技術は世界で活躍しています。
IT産業が活性化した背景には、イスラエル政府の積極的な政策が関与しています。政府は、スタートアップへの多額の投資をするとともに、IT産業を担うエンジニア人材の育成にも力を入れています。高校ではプログラミング教育の履修が必須となっているため、これからも将来を担う優秀な若者がイスラエルのIT産業を引っ張っていくのでしょう。
イノベーションが次々に起こる刺激的なITの土壌や三大宗教の聖地、多文化が融合した中東の魅力がイスラエルには詰まっています。
イスラエルの概要
イスラエルの地理を地図でチェック
イスラエルは、地中海に面した、日本の四国ほどの小さな国です。レバノンやシリア、ヨルダンなどと国境を接しています。
中心部には、経済と技術の中心地をなす大都市テルアビブ、三つの宗教の聖地エルサレム、イエス・キリスト誕生の地であるベツレヘムがあり、多くの観光客や巡礼者を見ることができるでしょう。
東側のヨルダンとイスラエルの国境には、塩分濃度約30パーセントの「死海」と呼ばれる塩湖があり、人気の観光スポットとなっています。
イスラエルの基本情報
- 人口:約950万人(2022年5月 イスラエル中央統計局)
- 首都:エルサレム
- 言語:ヘブライ語(公用語)、アラビア語
- 民族構成:ユダヤ人(約74%)、アラブ人(約21%)その他(約5%)(2022年5月 イスラエル中央統計局)
- 宗教:ユダヤ教(約74%)、イスラム教(約18%)、キリスト教(約2%)、ドルーズ(約1.6%)(2020年 イスラエル中央統計局)
(出典:外務省|イスラエル基礎データ)
イスラエルの祝日は?
イスラエルの祝祭日は、ユダヤ暦に基づいており、祝祭日前日の日没から始まります。金曜日の日暮れから土曜日の日暮れまでは、「シャバット」という安息日です。「シャバット」では、官公庁や企業、ショップやレストランは閉まり、交通機関も停止するので、気をつけましょう。
イスラエルの新年は、ユダヤ暦の新年祭の時期に合わせて、毎年9-10月頃に祝います。ユダヤ新年は、「ロシュハシャナ」と呼ばれており、10日後の「エレブ ヨムキプール」と呼ばれる贖罪の日前夜までは連続した祝日です。観光の際は、この時期を避けましょう。
イスラエルの治安は?
イスラエル国家警察の統計によると、2019 年の犯罪発生件数は 301,168 件で、対人口比で日本と比較すると、イスラエルでは日本より多くの犯罪が発生していると言えます。
在イスラエル日本国大使館の報告では、日本人が凶悪犯罪の被害に遭うことは少ないとされています。日本人の犯罪被害のほとんどは、旅券や現金などの遭難被害だそう。観光の際は気が緩みがちになるため、特に身の回りの所持品には気を付けて過ごしましょう。(出典:在イスラエル日本大使館|安全の手引き)。
イスラエルの食べ物
イスラエルでは、建国後に世界中のユダヤ人の移民が集まり、それまでに住んでいた国の食文化を持ち込みました。様々な国の食文化が混ざりあい、イスラエル国内で独自の発展を遂げた料理がイスラエル料理です。イスラエル料理は、移民の料理とも呼ばれています。
イスラエルの食文化に影響を与えるものとして、ユダヤ教の「コシェル」という伝統的な食習慣があります。「コシェル」では、豚肉は食べない、乳製品と肉を一緒に食べない、などの決まりがあるので、覚えておきましょう。現地で「コシェル」に沿ったイスラエル料理を口にすると、人々の生活に根付く宗教を感じることができるかもしれません。
イスラエル料理の味付けは、使われる香辛料や食材、調理法などが地域によって違います。肉や野菜、乳製品に、レモン、ニンニク、オリーブオイルのほか、クミンやパプリカなどの香辛料が使われており、スパイシーな香りが食欲を誘うでしょう。
イスラエルを観光で訪れたときにぜひ食べてほしいイスラエル定番料理を三つ紹介します。
ファラフェル
ファラフェルは、すりつぶした豆に香辛料を混ぜて丸め、揚げたコロッケです。日本のIKEAでも売られているので、もしかしたら食べたことがある方もいるかもしれません。
ファラフェルを作るときには、豆はひよこ豆やそら豆、香辛料にはクミンやコリアンダーを使うのが一般的です。サンドイッチにするときには、野菜と一緒にピタパンに挟み、ソースをかけて食べます。口いっぱいに香辛料の独特の香りが漂い、コロッケのサクサクの食感がとてもおいしい一品です。
ファラフェルは、エジプトやシリア、レバノンなど、他の中東の国でも愛されているメニューです。中東料理のレストランでは、おかずの一品として提供されています。サンドイッチにして屋台で売られていることもあるので、見つけてみてください。
シャクシューカ
シャクシューカは、香辛料の入ったトマトソースと卵を煮込んだスープです。モロッコやチュニジア、エジプトなどでも食べられており、イスラエルでは、朝食の定番メニューとして人気があります。
スープの具材は、トマトやピーマン、玉ねぎ、ほうれん草、チーズなど、店によってアレンジが違います。トマトソースには、クミンやパプリカ、カイエンなどの香辛料が入っており、ピリ辛な味わいが食欲をそそります。現地では、スープに浸したり、フライドポテトと挟んだりして、ピタパンと一緒に食べることが多いそうなので、ぜひ試してみてください。
観光客向けのカフェやレストランでは、朝食や昼食として必ずある定番メニューなので、探してみましょう。
イスラエル・ブレックファスト
イスラエル・ブレックファストは、パンや卵料理、乳製品(チーズ)、魚、サラダなどを盛り合わせたヘルシーな朝食プレートです。
パレスチナに移民したロシア帝国の人々が作った「キブツ」というコミュニティから生まれた料理と言われています。ユダヤ教の伝統的な食習慣「コシェル」に則り、基本的に肉料理は含まれていません。
レストランでは複数種類のお惣菜をプレートに盛り合わせて提供されます。ホテルの朝食ビュッフェでは、並べられている料理がイスラエル・ブレックファストの組み合わせになっているところもあります。
イスラエルに宿泊した翌朝にはぜひイスラエル・ブレックファストで素敵な朝食タイムをお過ごしください。
イスラエルの見どころ
三大宗教の聖地を巡る
エルサレム旧市街とそれを囲う約1km四方の城壁群は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三つの聖地が共存しています。世界遺産に登録されており、世界中から多くの巡礼者や観光客が訪れる場所なので、観光には外せません。
三大宗教の聖地巡りに、訪れるべきスポットを解説します。
イスラム教の聖地「岩のドーム」
イスラム教の聖地である「岩のドーム」は、現存する最古のイスラム建築とも言われ、黄金のドームと青の幾何学模様のタイルが美しい建物です。三大宗教の預言者であるムハンマドが天国に旅立つ際に、息子のイサクを神にささげようとした場所「聖なる岩」を取り囲むように建築されています。古代イスラエル王のダビデと神の契約の箱も置かれていたと言い伝えられている神聖な場所です。イスラム教の聖地のため、イスラム教徒以外は中に入ることはできません。
ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」
イスラム教の聖地「岩のドーム」のすぐ近くに、ユダヤ教の聖地である「嘆きの壁」があるので、合わせて訪問しましょう。「嘆きの壁」は、かつてローマ軍に破壊されたユダヤ教の神殿の壁で、神殿の西側にあたるため、「西の壁」とも呼ばれています。ユダヤ教徒がその壁に触れて祈りをささげる神聖な場です。「嘆きの壁」を巡っては、過去に壮絶な領地争いがありましたが、現在はどの宗教の信徒も訪れることができます。
キリスト教の聖地「聖墳墓教会」
キリスト教の聖地である「聖墳墓教会」は、イエス・キリストが十字架にかけられたゴルゴダの丘があったとされる場所に建つ教会です。内部にはイエス・キリストの墓やイエス・キリストが十字架から降ろされた後に香油を塗った赤大理石の板、モザイク画、ギリシャ正教の祭壇などがあります。
小さな街で多様な宗教を信じる人々が共に暮らす光景は、イスラエル観光の醍醐味です。
音楽や芸術などの芸術文化
イスラエルには、様々な宗教や民族の往来により作り出された独特の芸術文化があります。観光に訪れた際に、ぜひ鑑賞してほしい美術や音楽、ダンスについてご紹介します。
東西の大陸をつなぐ位置にあるイスラエルには、古くから民族や宗教など様々な往来があったため、多様な歴史や文化、社会背景が美術作品にも反映されています。イスラエルで美術に触れたいときは、テルアビブ美術館やイスラエル博物館を訪問してみてください。
テルアビブ美術館は、テルアビブ市内に位置する公立美術館で、近代アートや現代アートが展示されています。ルノアールやピカソなどの有名な画家の作品やユダヤ系画家のシャガールやキビズムの作品が展示されています。イスラエルのアート作品が多数展示されているため、個性的なイスラエルアートに触れたい方にはおすすめの美術館です。
イスラエル博物館は、死海写本のある死海文書館や第二神殿時代の街の模型が人気の国立博物館です。死海写本は、約二千年前に書かれた世界最古の聖書を含む古文書で、大変貴重なものです。第ニ神殿時代の模型は、紀元前66年のエルサレムを再現しています。イスラエルの宗教や社会、歴史について理解を深めたいならば、イスラエル博物館を訪問しましょう。
イスラエルの音楽も美術と同じように、ユダヤ人に根付く音楽と多文化が混ざり合い発展した、独創的なものです。中東独特の楽器や作曲様式が取り入れられており、異国情緒を感じることができるので、聴いてみてください。世界屈指のオーケストラであるイスラエルフィルやイスラエルジャズ、若者の好む現代音楽など、イスラエルの街には様々な音楽が流れています。現代音楽においても、ユダヤ人のルーツを持つミュージシャンが、ヘブライ語やアラビア語など様々な言語で、中東の楽器を取り入れた音楽を作曲していたりと、伝統と流行が混ざり合った音楽を奏でています。
日本でも有名なフォークダンス「マイムマイム」は、イスラエルが発祥であることを知っていますか。ダンスもユダヤ人にとって、かかせないものです。ダンスは聖書の時代から喜びや悲しみの感情表現に不可欠なものとされており、国やコミュニティ、家族のお祝いに必ず取り入れられています。特にテルアビブにはプロのダンサーが多くいるため、フォークダンスや舞台作品のダンスなど様々なダンスを見ることができます。