シャローム hello こんにちは。イスラエル在住のクニコです。
歴史とハイテクが共存するイスラエル。今回は、世界から注目を集めているイスラエルのサイバーテクノロジーに関してご紹介します。
サイバーセキュリティの誕生
イスラエルは中東のシリコンバレーと言われており、サイバーテクノロジーについても、世界中から注目を集めています。2018年にイスラエルのサイバーセキュリティ業界に対して行われた民間投資は前年を22%上回り、10億ドルを超えました。現在イスラエルには米国に次いで世界で2番目に多様なサイバーエコシステムが確立しています。
小国イスラエルは、敵対国の侵略を防ぐためにサイバーセキュリティに多額の投資を行ってきました。敵対国に対して優位であり続けるためには、絶えずイノベーションを起こさなければなりません。
イスラエルでは、毎年多くのスタートアップ企業が最新のテクノロジーを生み出しています。そして優れたイスラエルのサイバーに関するノウハウの需要が、近年世界的に高まっています。
イスラエルがサイバーセキュリティの分野で研究・開発に本格的に乗り出したのは、1980年代のことでした。そして90年代はじめにはすでに、サイバー攻撃のための”兵器”の開発に乗り出していたのです。2000年に敵対するパレスチナとの激しい紛争(第2次インティファーダ)が勃発した時には、サイバー空間でも「サイバー・インティファーダ」が発生し、イスラエルはパレスチナ側から激しいDDos攻撃を受けていました。そして、ここに世界をリードするサイバーテクノロジーが誕生します。
サイバー関連業界
サイバー脅威において先駆的な役割を担っているイスラエルですが、その業界は多岐にわたります。イスラエル国家サイバー総局(INCD)がサイバー関連として挙げている業界は次の通りです。
• 不正行為や個人情報、アクセスの管理
• アプリケーションおよびウェブセキュリティ
• ネットワークセキュリティ
• エンドポイントセキュリティ
• インテリジェンス / ガバナンス・リスク・コンプライアンス(GRC)
• サイバーセキュリティサービス
• データの保護と復元
• モバイルセキュリティ
• 産業制御システム(ICS)/ IoTセキュリティ
• クラウドセキュリティ
• 自動車セキュリティ
• 医療セキュリティ
サイバーリードの理由
イスラエルがサイバー関連業界をリードしている理由として、次のことが挙げられます。
1.政府が行政、軍、企業、大学間の交流を活性化するため、仲介役やビジネスの触媒としての役割を担っている。
2.軍がスタートアップ企業のインキュベーターやアクセラレーターとしての役割を担っている。著名な8200部隊は優秀な若者たちを育て、このような若者たちが兵役などを通じて国防に大きく貢献した後、サイバー関連業界へと進出。
3.人的資源に対して多大な投資を行っている。イスラエルの高校・大学ではサイバー関連の授業を選択することができる。また、全国各地にサイバーセキュリティに特化した大学の研究センターが6校ある。
4.学問を横断して多様性を体験することで大きな刺激が生まれる。私たち人間は一つの物事をさまざまな角度から捉え、自分自身を変化させることで新しい地平へと達することができる。
民間航空、医療、デジタルヘルスケアなど、民間企業によるサイバー対策が遅れている一部の分野では、イスラエル政府がINCDを通じて、すばやく効果的にサイバー対策を行うために広範囲にわたる研究開発を主導しています。
イスラエルは防御や攻撃も含めて「サイバーテクノロジー」という括りで、サイバー部門の開発を推進していくことになります。そして既に述べたように、徴兵制からのイスラエルのエコシステムが作り上げられていきました。情報工作やサイバー攻撃は世界的にも有名なイスラエル軍の「8200部隊」が行い、防衛はイスラエル軍の「コンピューターサービス部(C4I)」が担うことになると報じられています。周辺国からの攻撃に対する防御に力を入れてきたイスラエルは、現在では、世界でも有数のサイバー大国になっています。日本ともサイバー分野で協力関係を築いているイスラエルが、今後どのように進化していくのか大変注目されるところです。
2020年1月28〜30サイバーテックイベントテルアビブ
サイバーは、日本のテクノロジーコミュニティが関心を寄せる主要な分野の1つです。 年間を通じ、5大陸のすべてがこのサイバーテックイベントを強力にサポートしています。そして2020年1月28〜30日には、サイバーテックテルアビブが開催されました。
今回のサイバーテックカンファレンスでは、セキュリティー対策に関して、これまでの対策では防げないサイバー攻撃の増加、AIを活用したサイバー攻撃への対策の重要性、サイバー領域におけるスキルある人材の不足が度々取り上げられていました。オートメーションやAIの進化に伴い、これまで以上のサイバー攻撃はこれまで以上の脅威です。その対策としては、エコシステムを作り、ホリスティック(総体的)なサイバー対策を実施する必要があるということが、各社共通の課題として捉えているようでした。パビリオン会場にはサイバー人材育成のためのソリューションを提供している企業も出展しており、イスラエルでは小学校でのトライアル運用も実施しているようです。
サイバーセキュリティー領域で世界のトップを走るイスラエルから、今後どのようなサイバーソリューションが誕生するのか、注目するところです。
それでは、次回をお楽しみに!レヒトラオット!さようなら!