今回インタビューをしたのは、イスラエルを代表する撮影監督、ラエル・ウトニックさん。
日本を舞台にし、イスラエル映画史上最多の観客動員を記録した『Saving Shuli-san』(2025)や、ハリウッド俳優をキャストした作品『The Performance』(2023)で撮影監督を担当。世界をまたにかけて仕事をするラエルさんは大忙し。ニューヨークから戻って来たばかりで、またすぐにアメリカに渡る予定だそう。その隙間時間を割いてインタビューに応えてくれました。

撮影監督とは?
映画を見る際、俳優や脚本家、監督を気にすることはありますが、誰がどのように撮影しているのかを気にしたことはありますか?私は「撮影監督」という役割について、恥ずかしながらほとんど考えたことがなかったのです。
ラエルさんにそう伝えると、彼は笑いながらこう言いました。
「撮影は、それ自体が注目を集める必要はありません。しかし撮影が本当にうまく機能すると、観客は登場人物の世界をただ見るのではなく、自分もその世界の中にいると感じることができます。だから、僕は、ただ美しいだけの映像をつくろうとは思っていません。レンズやカメラの動き、構図、光を考える時、いつも『この瞬間、観客に何を感じてもらいたいのか』という問いから始めます。」

主人公よりも、光を見ていたラエルさん
ラエルさんは子供のころからずっと映像の世界が好きで、高校生の頃にはすでに映画科を選択して映画を勉強していたと言います。
「子供の頃、映画に出演したこともある。でもその時から僕はどうやってカメラが動いているのか、どうやって光が表現されているのか、ということに強く興味をひかれていたんだ」
そういうラエルさんは、この時からすでに撮影監督の目で物事を見ていたのかもしれません。
映画科の授業では上級生の撮影を手伝うばかりで参加すべき授業に出席せず、それが原因でクラスを追い出されそうになったこともあったと言います。ただ、自分の作品を発表する機会があり、それを見た先生たちはほとんど満点に近い評価を与えたそう。それ以来、文句は言われなくなったと言います。

高校卒業後、義務兵役についたラエルさん。兵役中も撮影の任務に就いた彼は、経験と技術を高めていきましたが、「まだ十分に準備ができていない」と退役後は世界で活躍する撮影監督のアシスタントとして経験を積んでいきました。
さらにテルアビブ大学でも映画を専攻し、その後撮影監督として本格的に仕事を始めました。
「撮影の仕事というのは大変なものだし、決して簡単な仕事でもない。
でもこの職業を選ぶ人は、これが大好きだからやっているという人が多いと思う。
僕は、初めてお給料をもらった時のことを覚えています。
学校では授業で怒られていたのに、撮影することでお金をもらえるんだ!と驚きに似たようなものがありました。
僕にとって撮影はお金を稼ぐための方法でなく、自分の生きていく道、自分の生き方そのものといってもいいと思う」
撮影の話になると彼の話に熱がこもるのがわかります。撮影が本当に好きでたまらない、そんな感じなのです。
協力して最高の作品をつくるという考え方
ラエルさんはまた、世界30か国以上で仕事をし、1000本以上のCMを撮影してきました。
「CMにはクライアントがいて、伝えたい明確なメッセージがあり、それを短い時間で見ている人にしっかりと印象付けなければならない。作品を仕上げる期限も限られています」
これまでの経験から、ラエルさんは、お互いを尊重しながら最高の力を出して仕事をすることが最終的に良い結果をもたらすと言います。
この言葉を聞いて思い出したことがあります。それはこのインタビューの日程を決める時に、ラエルさんが私に聞いてきてくれたことです。
彼は「インタビューのために、何かこちらから準備しておくことはある?」とメッセージを送ってきてくれました。
彼の協力的な姿に感動し、私もしっかり準備をしてインタビューに臨もうと思ったのです。今振り返ると、あの短いメッセージにも、ラエルさんの仕事への姿勢が表れていたのだと思います。

彼をインタビューしていると「自分が、自分が」という強い自己主張を感じないのです。自己主張が強く前面に出ることの多いイスラエルの仕事の場で、ラエルさんの姿勢は私には新鮮に映りました。
それでいて、仕事に対する信念、情熱、専門性…それらは明確にしっかりと表現されているのです。
「相手を尊重し、お互いの考えに耳を傾ける。皆が同じ一つの仕事をしている時はそうやってそれぞれが協力し合って最高の力を出すことで、作品の仕上がりがより良くなると僕は信じています」
つづきは明日の後編で


