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HEALTH

肺がん治療に希望の光 転移性肺がん患者の半数以上が7年間病状進行なし

by Keiko |2026年06月03日

転移性肺がんは、これまで「完治が難しい病気」と考えられてきました。しかし、その常識を覆す可能性のある研究結果が発表され、世界の医療関係者の注目を集めています。


肺がんのイメージ

分子標的薬「ロルラチニブ」が示した画期的な治療効果

米国シカゴで開催された世界最大級のがん学会「ASCO(米国臨床腫瘍学会)」で発表された研究によると、ALK陽性の転移性非小細胞肺がん患者の55%が、7年間にわたり病状の進行を経験することなく生存していることが明らかになリました。


この成果は、ファイザーが開発した分子標的薬「ロルラチニブ(商品名:ローブレナ)」を用いた国際臨床試験「CROWN試験」の7年間追跡データによるものです。

比較対象となった従来治療薬クリゾチニブを使用した患者群では、7年後に病状進行が見られなかった患者はわずか3%にとどまりました。研究チームは、この差を「肺がん治療の歴史において前例のない結果」と評価しています。


レントゲン画像を見る医師

肺がんを「慢性疾患」として管理できる時代へ

ALK陽性肺がんは、肺がん全体の約3〜5%を占める比較的まれなタイプで、喫煙経験のない比較的若い患者にも発症することが知られています。


これまでの治療では、多くの患者で数年以内に病状が再び進行することが課題でした。しかし今回の研究では、ロルラチニブ投与群の半数以上が7年を経過しても病状の悪化を経験していません。


イスラエルの腫瘍専門医アブド・アガバリア医師は、「初めてALK陽性肺がんを慢性疾患として考えられる可能性が見えてきた」とコメントしています。


バネイ・ツィオン病院腫瘍研究所長、アブド・アガバリア医師
ハイファのバネイ・ツィオン病院腫瘍研究所長、アブド・アガバリア医師

脳転移リスクも大幅に低減

今回の研究で特に注目されたのが、脳転移に対する効果です。ALK陽性肺がん患者は脳転移を起こしやすく、診断から2年以内に25〜40%の患者が脳転移を発症するとされています。


そこで、ロルラチニブは脳血液関門を通過できるよう設計され、研究では脳内での病状進行リスクを94%低減したことが確認されたのです。さらに、治療開始から30か月以降、新たな脳転移の進行例は報告されていません。


「余命数カ月」から7年後も生存――イスラエル人患者の実例

今回の発表で大きな注目を集めたのが、実際に治療を受けた患者たちの存在です。イスラエル北部に住むイゴールさん(51)は、7年前に転移性肺がんと診断されました。当時、医師からは余命数カ月と告げられていたと言います。


「私は一度も喫煙したことがありませんでした。ある日、原因不明の背中の痛みが始まりました。しかし、診察を受けた医師たちは皆、筋肉痛だろうと言ったのです」。ところが数週間後、救急外来で精密検査を受けた結果、進行した肺がんが見つかりました。病状の深刻さを説明するため、病院からソーシャルワーカーが派遣されたほど進行していたそうです。


その後、ハイファの Rambam Health Care Campus で行われた遺伝子検査によってALK遺伝子変異が発見され、ロルラチニブによる治療がスタート。現在も副作用による歩行障害に悩まされているものの、体内からはがんの痕跡が確認されていません。


肺がんは、依然として世界で最も死亡者数の多いがんの一つです。しかし、分子標的薬や遺伝子解析技術の進歩によって、一部の肺がんでは長期にわたり病気をコントロールできる時代が現実のものとなりつつあります。


「この薬が私の命を救ってくれました。副作用はありますが、それでも私は人生を選択できます」と、イゴールさんは語っています。


肺がんのイメージ画像

日本でもイスラエルでも利用可能な治療薬

現在、ロルラチニブは、米国、日本、EU諸国、韓国、オーストラリアなど80か国以上で承認されています。イスラエルでも既に承認されており、公的医療保険の適用対象となっています。


今回発表された7年間の追跡データは、これまで「不治」と考えられてきた転移性肺がんの一部において、長期間にわたり病気をコントロールできる可能性を示してい流と言えるでしょう。分子標的治療と遺伝子診断技術の進歩によって、肺がん治療の未来が大きく変わりつつあります。


*本記事は米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された研究結果およびイスラエルメディアYnetの報道をもとに構成しています。