ピアノを習っている人はわかると思いますが、ピアノを習い始めてわずか3年で国際コンクールで優勝するというのは、ありえないことですよね。
それをやってのけたのが、わずか13歳のイスラエルのピアニスト、モハメド・ミシャ・アーシェイクです。
この映画は、ピアニストを目指して奮闘するミシャの13歳から17歳までを追ったドキュメンタリーです。父はパレスチナ人、母はロシア人で、一家はイスラエルとの紛争を抱えるパレスチナ自治区のラマッラに住んでいるミシャの環境は、複雑さと困難さをいろいろ抱えています。
映画紹介とあらすじ
プロのピアニストを志す主人公ミシャ。ユダヤ系イスラエル人のピアノの先生からレッスンを受けるため、エルサレムに通っています。本来エルサレムまでは1時間程度の距離ですが、検問所を経由するため所要時間は3時間。そのため、練習時間も一日3、4時間程度しかありません。
その検問所も、イスラエル・パレスチナ間の情勢が不安定になると閉じられてしまい、エルサレムに通えない時もあります。そのような時はオンラインレッスンとなるのですが、楽器のオンラインレッスンがいかにもどかしいか、体験された方ならわかると思います。
彼の困難はそれだけではありません。決して強制はしませんが、ミシャは父に神経外科になることを期待されているのがわかります。ようやくヨーロッパ留学が決まった矢先に新型コロナウイルスが発生し、彼の留学はコロナ禍で中断されます。
しかし、彼は消して運命を呪ったり、腐ったりせずに、与えられたチャンスに全力で望み、今ある中でベストのものをつかんでいくのです。そんな彼を見ていると心のそこから応援したくなります。ミシャを見ていると、どんな状況においても夢を持ち続け、研鑽を重ねれば、必ず扉は開くと思わせてくれます。
そして、もう一つ素晴らしいと思ったのは、彼を小さい頃から教えているピアノの先生とミシャの師弟関係です。先生は、彼が世界で活躍するためには一人の先生から学ぶのではなく、多くの先生から学んで、それぞれの先生のいいところを吸収しなさいと促します。その時、ミシャが発した言葉が、とても腑に落ちました。彼がなぜ3時間もかけて、この先生のもとに通っているかが良くわかります。現在、ピアノにとどまらず、教える立場にいる人は、教えるとはこういうことなのだと大変勉強になります。
この映画、現在渋谷と大阪の映画館で上映されていますが、今後、全国の他の地域でも順次公開予定ですので、ぜひ映画館に足を運んでみてください。
コロナ禍の中、さまざまな制約と闘いながら、夢を追って頑張っている人、ミシャから諦めないパワーをもらえること間違いありません。
<作品情報> タイトル:「パレスチナのピアニスト」 原題:The Pianist from Ramallah 製作:2020年/61分/イスラエル 監督:アヴィダ・リヴニー 出演:モハメド・ミシャ・アーシェイク