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CULTURE

日本人クワイヤ、ポーランドとイスラエルでウクライナ難民支援コンサートを開催

独占インタビュー | 三ツ橋 靖子(Standing Together 2023 プロジェクトリーダー)

by クニコ コーヘン |2023年05月25日

届け日本からの歌声! 戦禍を生きる人々へ贈る命のエール



2022年2月より続く、ロシアのウクライナ侵攻により難民生活を余儀なくされている皆さんに励ましの歌声を届けたい。そんな思いの下、日本人ゴスペル(※1)シンガー34名により「StandingTogether2023 (※2)/ Blessing Zion2023 クワイヤ」が結成されました。Blessing Zion2023 クワイヤは、平和のために活動をしているNPO法人B.F.P. Japan(ブリッジス・フォー・ピース、本部エルサレム)の協力の下、2023年4月にポーランドとイスラエルで3回にわたりコンサートを開催しました。


今回はクワイヤのリーダー兼、Standing Together 2023  プロジェクトリーダーでもある三ツ橋 靖子さんにお話を伺いました。


Photo: Michio Nagata/Bridges for Peace.com

―――ご自分の経歴をお話しいただけますか。


9歳の時にはじめて、ゴスペルミュージックジャンボリーという音楽イベントで、北海道札幌市・岩見沢市を中心に活動しているゴスペル・クワイヤ「Heavenly Wind」の佐藤美菜子さんに出会いました。このイベントでは、北海道のキリスト教会から有志のミュージシャンが集結しゴスペル曲を発表しました。牧師であり、シンガー&ソングライターである故・小坂忠氏がプロデューサーおよび審査員としてイベントを指揮し、北海道におけるゴスペル音楽の発展に大きな影響を与えると同時に、私のゴスペルへの情熱に火をつけたのです。


17歳の時、佐藤さんが参加していたJapanese Continentals にメンバーとして参加しました。同グループは、1960年代に北米のカム・フロリア氏(Cam Floria) により創立されたThe Continentalsが母体となっており、CCM(Contemporary Christian music) をクワイヤー形式で歌うグループです。これらの経験が、現在の私の活動の土台となっています。



―――佐藤さんとの出会いがすべてのきっかけとなったのですね。Heavenly Wind Ministries設立の経緯をお話しいただけますか


佐藤さんと私は2001年初頭に「Heavenly Wind Ministries」を設立し、Real Gospelを目指し活動を開始しました。Real Gospelとは、本場ゴスペル歌手が聞いた時に「本当のゴスペルだ」と感じられる音楽を定義しており、これを目指して ①クワイヤにおける指導②ゴスペルコンサートの企画③国内外のゴスペルツアーの企画という、大きく分けて3つの活動をしています。


活動は22年目となり、現在約150名のメンバーがいます。コンサート歴は16年を数え、札幌コンサートホールにおけるコンサートが毎年チケット完売となるくらい、ゴスペルが日本でも文化として根ざしてきました。


Photo: Michio Nagata/Bridges for Peace.com

――皆さんの地道な活動の賜物ですね!ポーランドとイスラエルを訪問されたのは、今回が初めてではないと伺いました。


2016年に、B.F.P.Japanが主催したZION TOUR 2016のメンバーとしてイスラエルとポーランドを訪問することになりました。日本各地から集まった20数名のメンバーはみな教会に属し、牧師からの推薦を受けた人たちでした。


ポーランドでは、ナチス最大の強制収容所であるアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所を見学し、March of the Livingが主催する「命の行進」に参加しました。このアウシュヴィッツからビルケナウまでの約3キロを歩きながら、ホロコーストの犠牲者を追悼するという経験は大きな衝撃でした。その後、イスラエルで聖書の地を巡りました。


2018年に再度イスラエルを訪れ、日本からツアーに参加した方々と、ツアーを引率したB.F.P Japanの高田局長と合流してイスラエル建国記念式典へ共に参加しました。そこで、高田局長が『2020年イスラエル建国記念式典で歌おう』企画を提唱されましたが、コロナにより国境が封鎖され、イスラエルの入国制限、式典中止に伴いツアーも断念せざるを得ませんでした。



Blessing Zion 2023 メンバー



―――Blessing Zion 2023の企画の始動から、先日のコンサート実現までの道のりをお話しいただけますか。


2022年に、『2020年イスラエル建国記念式典で歌おう』企画は『Blessing Zion 2023』として再始動しました。そして同時期に起こったロシア侵攻以来、多くのウクライナ人がポーランドに避難している事を知り、歌うことで心の支援になれないかと考えはじめました。そこで、ポーランドやウクライナで現地支援をしている人々にB.F.P. Japanが直接連絡を取り、現地で活動するジャームラバンドとコラボコンサート開催の運びとなったのです。2016年に続き2度目の「命の行進」にも参加することができました。


また、B.F.P. Japanと15年に渡って友情を育んでいるマーチ・オブ・ザ・リビング(MOL)がイスラエル建国75周年記念式典の主催団体であったため、今回の参加が実現しましたがその関係で、B.F.P本部と繋がりの深いイスラエル北部カルミエル市でもコンサート開催が実現しました。そして、ついに4月16日、Standing together 2023の皆さんはポーランドとイスラエルに向けて出発しました。


Photo: Michio Nagata/Bridges for Peace.com

―――「命の行進」に2度参加をして、どのように感じられましたか?


初回は悲惨な運命の犠牲者への追悼という気持ちでしたが、今回の訪問で、凄惨な歴史を乗りえて「生きていく事」の大切さ、そして命の尊さを伝える意味での「命の行進」であるということを理解しました。


―――ポーランドのクラコフ日本美術技術博物館マンガ館でのコンサートはどうでしたか?


Photo: Michio Nagata/Bridges for Peace.com

ポーランドでのコンサートは超満員、立ち見が出るほどの盛況となりました。ウクライナ難民の方々、ポーランド在住ユダヤ人、ポーランド人、在ポーランド日本国大使館ご夫妻、またイスラエルからはハイファ地区元市議会議長たちなども遠路はるばる駆け付けてくださいました。


コンサートは、参加者すべてが「ひとつ」となり、共に主の喜び、慰め、癒やし、平和、そして希望を体験し、最後はみんなでハティクバ(イスラエル国歌)を大合唱しました。アンコールが止まらず、ジャームラバンドの演奏で「Oseh Shalom(オセ・シャロム、イスラエル民謡)」を会場中の人たちと歌い、音楽で国境も、人種も、文化も超えて、心がひとつになったのを感じる瞬間でした。


Photo: Michio Nagata/Bridges for Peace.com

―――イスラエル建国75周年記念式典でのコンサートについてもお話しいただけますか。


会場には1万人近い人たちが押し寄せていました。著名人や政府関係者のスピーチの他、演奏や花火、ドローンによる光の演出で会場が大きく賑わう中、いよいよ私たちの出番となり、法被に身を包んだ日本人30数名が舞台へと上がりました。和太鼓や尺八などの和楽器と、ダンスミュージック風の賑やかなアレンジでAl Kol Eleh(アルコルエレ、1980年代のイスラエルのヒット曲)が流れ始めると、大歓声が上がり、会場のみんながジャンプしながらの大合唱となりました!


Photo: Michio Nagata/Bridges for Peace.com

たった2分45秒で何が伝えられるでしょうか。でも確かに、その瞬間、私たちは一つとなり、言葉も文化も超え、友情を感じあうことができたのです。私たちの歌う姿を通じて、特に若いユダヤ人の皆さんの中に、日本は友人であることを感じてもらえたら、もうそれだけで十分です。


会場では、会場とステージを隔てていた柵から溢れそうなほど若者が押し寄せ、共に熱唱してくれました。その姿が目に焼き付いて、忘れることができません。私たちにできる形で、イスラエルに愛と友情を示すことができるなら、本当に嬉しいです。


イスラエル建国75周年記念式典におけるBlessing Zion クワイアのパフォーマンス

―――その次の日はイスラエル北部、カルミエルでもコンサートを開催されたのですね。


これが今回のポーランドとイスラエルの旅における最後のコンサートで、大歓声と大拍手の中幕を閉じました。HaTikvah(ハティクヴァ、イスラエル国歌)を歌ったときは会場全員が立ち上がり、ある人は胸に手を置き、ある人は涙しながら、共に歌いました。コンサート後は希望者一人ひとりに、支援物資や旧約聖書などをお渡しすることができました。


Photo: Michio Nagata/Bridges for Peace.com

―――ポーランド、イスラエルと2カ国を渡り、Blessing Zion2023プロジェクトを終えた感想を教えて下さい。


2018年の構想開始以来、コロナの影響で2020年ツアーが中止となったりしたため、5年越しのプロジェクトになりました。今回この支援コンサートの実現が叶い、また行く先々で多くの方の優しさや、暖かさに触れることで、私たちも大きな励ましを受けました。


2度目となったアウシュビッツ強制収容所の訪問では、死のメッセージだけでなく、むしろ、『生きよ!』という力強い、命のメッセージがそこにあるのだ、という事に気づくことが出来ました。毎日が、想像を何百倍も超えた感動の連続のツアーで、多くの皆様のお祈りと励まし、応援を感じる旅でした。ツアーはこれで終わりましたが、新たなる出発です。


Photo: Michio Nagata/Bridges for Peace.com

―――今後の展開についてお話しいただけますか。


今後も、日本の若者たちと共にポーランドとイスラエルをめぐる旅をしていきたいと思っています。歌を通じた交流を続け、どの様な形でも日本とイスラエルの架け橋となる様な働きが出来るなら本望です。



インタビューを終えて


三ツ橋さんたちのように、暖かな心でイスラエルや難民の方々の支援活動をするグループが存在することを知り、感動すると同時に、学ぶことが沢山ありました。Standing Together 2023/ Blessing Zion 2023 クワイヤの成功おめでとうございます!皆さんの今後の活動に期待すると同時に、ご健康と幸せを祈りイスラエルから応援のエールを送ります。暖かなエールをありがとうございました。



Standing Together応援団体




※1:ゴスペル (Gospel music) または福音音楽(ふくいんおんがく)は、アメリカ発祥の音楽の一ジャンル。元来はキリスト教プロテスタント系の宗教音楽で、黒人の心情表現や、リズムにおけるアフリカ的なシンコペーションなどが特徴。


※2:Standing Together実行委員会担当 岡田:stogether2023@gmail.com




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