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AGRICULTURE

データが農業を変える。イスラエル発「精密灌水」が実現する次世代ブルーベリー栽培

by Keiko |2026年08月19日

「水をあげる」という農業の常識が、大きく変わろうとしています。イスラエルで発展した精密灌水技術は、水と肥料をデータで管理し、植物に必要なものだけを必要なタイミングで届ける仕組み。実際に日本で導入したブルーベリー農園では、植え付けからわずか約1年で収穫を実現しました。ブルーベリー収穫の最盛期、データが農業を変える現場を取材しました。


オリジナルのパッケージに詰められたブルーベリー

必要なデータを可視化してすぐに対応

精密灌水を利用した農業の最大の特徴は、あらゆる情報を数値で把握できること。日射量、気温、湿度、培地の水分量などがリアルタイムで可視化され、すぐに対応できるようになります。


千葉県山武市で新規就農し、2026年初夏に初収穫を迎えた喜納寛子さんと矢作卓也さんご夫妻。

「もし問題が起きても、データを見れば原因を検証できます。経験や勘だけに頼らなくていいのは、大きな安心感があります」と語ってくれました。


再現性の高い栽培ができることが、このシステムの大きな強みと言えるでしょう。

高さ調整できて収穫作業しやすいブルーベリーの苗木
収穫しやすいサイズに育成できるのもブルーベリー栽培の魅力

わずか1年で初収穫

一般的な露地栽培では、ブルーベリーの本格的な収穫まで3〜5年かかると言われています。しかし、おふたりが営むBluemate Farmでは、2025年2月に植えた苗から、約1年後には1本あたり約1kgを収穫することができました。


さらに驚くのは、収穫後も樹勢が衰えていないことです。通常、幼木に多く実を付けると樹木への負担が大きくなります。それでも勢いよくシュート(新梢)が伸び続けているのが驚きで、来年もたくさんの実りが期待されます。


「必要なタイミングで、必要な水と肥料を与えられている結果だと思います」。初めての農業で期待以上の収穫が得られたことに、おふたりも精密灌水のパワーを実感していました。


肥料も”オーダーメイド”の時代へ

従来の農業では、年に数回まとめて肥料を施す方法が一般的でした。一方、精密灌水では、生育段階に応じて養分を自由に調整できるようになります。


たとえば

・木を大きく育てたい時は窒素を増やす

・果実の糖度を高めたい時はカリウムを増やす

・樹勢を維持したい時は必要な成分を重点的に補給する

植物の状態に合わせて”処方”を変えられることが、大きな特徴です。


このシステムは、遠隔操作にも対応しています。外出中でもスマートフォンなどからデータを確認し、灌水量や設定を変更できるのです。「急な天候変化にも即座に対応できるため、安心して農園を離れることができます」。

スマートフォンで管理できる灌水システム
設備に関する相談にも対応するネタフィム。必要に応じて技術者が現地でサポートを行うこともある

さらに、日本ではまだ十分に蓄積されていないブルーベリー栽培データを蓄積できる点にも期待しています。

「毎年データを積み重ねることで、日本の気候に合った最適な栽培方法が見えてくると思います」


人の手で一粒ずつ選別されて出荷されるブルーベリー

収穫したブルーベリーは、自宅脇の作業場へ移し、粒の大きさによって選別する作業が行われます。選別自体は機械を利用しますが、その後、人の手によって潰れそうな傷んでいる果実を選別。機械に頼ることなく、一粒ずつ人の手で選り分けられています。

収穫したブルーベリーは大きさによって機械で選別
大きめの粒が多いブルーベリー
選別したブルーベリーは、一粒ずつ、人の手で傷んだものを選り分ける
人の手で丁寧に一粒ずつ選り分ける

Bluemate Farmオリジナルの容器にパック詰めされたブルーベリーは、出荷されて消費者のもとへ。美味しさはもちろん、健康志向のニーズにも応えるフルーツとして、年間を通じて大量に消費されています。

ブルーベリー農家の手作りパウンドケーキ
収穫したばかりのブルーベリーをたっぷり使い、喜納さんの弟さんが手作りしたパウンドケーキ

実は、喜納さんのお腹には新しい生命が宿り、秋に出産をひかえています。この初収穫は、家族3人で迎えたという、このうえない歓びに満ちたものになりました。

喜納さんのお腹には赤ちゃんが
お腹の赤ちゃんも一緒に迎えたブルーベリーの初収穫

AIが農業をもっと身近にする

おふたりが今後期待しているのが、AIとの連携です。ネタフィムに蓄積されたデータをAIが分析することで、より適切な灌水や施肥を自動で提案する未来も見えてきています。


「人手不足に悩んでいる農家や、規模を拡大したい農家には特に役立つと思います」


ブルーベリーは、水と肥料の管理が品質を大きく左右する作物です。だからこそ、一本一本に均一な養液を届けられる精密灌水は、大きな武器になるでしょう。 イスラエル発、ネタフィムで培われた灌水管理技術は、日本の農業に新しい可能性をもたらそうとしています。


次回予告

第4回は、イスラエル発の精密灌水システムが、どのように日本の農業を変えていくのか、その可能性に迫ります。