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日本の農家がイスラエルの農業技術を選ぶ理由とは?

by ISRAERU 編集部 |2021年09月22日

イスラエル発の食糧生産技術が、なぜ今日本の農家に求められるのか

9月はロシュハシャナと呼ばれるユダヤ教の新年にあたり、日本における1月のお正月のようなシーズンです。私たちが必ずと言っていいほどお正月にお餅を食べるように、イスラエルでは新年にリンゴに蜂蜜をかけて食べる習慣があります。頬が落ちるような甘いリンゴと蜂蜜で、幸福に包まれた1年を願うためです。



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日本にその習慣こそないものの、リンゴは古くから私たち日本人にとっても身近な果物です。最近は日本でのリンゴ生産に、実は農業先進国として知られるイスラエルの農業資材が役に立っているのだとか。


今回はそんなイスラエル製資材の中でも灌漑(水やり)における資材を導入している青森県のリンゴ農家・外崎さん一家にインタビュー。日本のリンゴ生産現場でなぜイスラエルの技術が選ばれているのか?その秘密に迫りました。


農業先進国イスラエル発資材を導入した青森県大鰐町のリンゴ農家外崎さん一家


日本のリンゴ生産量のうち、50%以上を占めるリンゴの産地、青森県。青森県大鰐(おおわに)町で、代々リンゴ農家として日々生産を続ける外崎(とのさき)さんご一家が今回インタビューに応じてくれました。外崎富彦さん・陸子さんご夫妻は、かつて日本に唯一存在した農業高校のリンゴ科で出会いました。そして卒業後、現在まで45年に渡ってリンゴ生産を手掛けています。娘の智美さんも先祖代々が守ってきたリンゴ畑を未来につなげるべく、同じくリンゴ農家としての道を選びました。


外崎さんの畑では、イスラエルの農業資材メーカー「ネタフィム」が提供する製品を導入しています。デジタル管理下において、一定の水量を穴の空いたチューブを使って効率的に畑に灌水させる点滴灌水システムです。昨今話題の「スマート農業」や「アグリテック 」といった先端技術で、日本でも先進的な考えを持つ農家は続々と導入しているのだとか。


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異常気象により従来の栽培方法では対応できない現実

―――外崎さんがネタフィムの点滴灌水を導入したきっかけはあったのでしょうか?

私たちのいる大鰐町の土地は青森県の中でもひ弱なのです。過去に山が崩れてできた土地ですから、水持ちが悪くリンゴの肥大も良くない土地です。以前、不安定な天候により土壌の質の悪化が進んでしまい、あまりにリンゴの収量が低くリンゴだけでは食べていけなくなってしまって…。その時に、キュウリの栽培も始めたのですが、その時に栽培ノウハウを教えてくれていた秋田県のキュウリ農家さんにオススメされて、ネタフィムを導入しました。“先生“と呼んでいる農家さんなので、水やりってそんなに重要なのか?と思いつつも、薦められるがままに導入したことがきっかけですね。


ネタフィムを使用したことで「水の重要性」に気付く

―――今までの栽培方法だと解決できない問題が、解決されたことはありますか?

とにかくここ4年ほど、異常気象で従来可能だった自然な水分供給ができなくなっていたのです。豪雨だと雨量は多くても地面に染み込まないですし、1年に1回しか収穫できないリンゴの天敵である、生育に重要な細胞分裂期の干ばつの発生も多かったですね。冬も雪が昔に比べてパウダースノーではなく湿った状態で降るので、雪による枝折れが発生しやすくなりました。近年は温暖化の影響なのか開花時期が早まったり、春の遅霜が多くなったりと今までではなかった現象が起きています。


私たちはリンゴの木を大きい木から小さい木に変えることで、省力化して収穫量を増やそうと試みましたが、従来の木よりも干ばつの影響を受けやすく、枯れてしまう木も多かったですね。


そんな時に、幸いにも農薬散布用に使っていた水源設備が近くにあったので、ネタフィムを試験導入したのですが、点滴灌水によって雨量に関する問題は解決しました。異常気象への対応ができなくなっていたところ、それを助けてくれたのが点滴灌水システムだったのです。正直、こんなに灌水が畑に影響するとは驚きましたね。


後継者・智美さんが語る「農業の未来に必要なこと」

外崎さんご夫婦の畑の後継者である娘の智美さんは、日々畑を守ってきた両親の背中を見て、農業のこれからについて考えることがあるそう。ネタフィムを使ったことで、より顕著にアイデアが湧き出るようです。


「両親は代々受け継がれた畑を、条件はあまり良くないはずなのにここまでよく守ってきたなと尊敬しています。私がまだ幼かった頃、平成3年に台風19号(平成最大の台風とされ、暴風によりリンゴ農家が甚大な被害にあったことから別名リンゴ台風として知られる)の被害によって、一帯の畑が全滅して廃業する人も多かった中、それでも両親はリンゴ生産を続けました。



近年はもっと慢性的にゲリラ豪雨と干ばつが繰り返され、ネタフィムの安定した灌水がなければりんごの収穫量を増やすことや、多くの木を健全に育てることは難しかったでしょう。天災ばかりは私たちの手ではどうにもなりませんから、これからは人の知恵や新しい技術でリンゴを助けてあげなくてはならないと思っています。


あとは、農業界の情報発信も大切ですね。私たち農家の元に届けられる農業関係の情報というのは、基本的には農協のお知らせなのですが、情報量が多すぎて必要な情報がどれなのか分からない。だから、私たち世代の若い農家たちがどんどん情報を発信し、新しい技術がどう実際に畑で役に立ち、何が改善されたのか、しっかり広めていくことが必要になってくるでしょう。


ネタフィムも、この地域の農家に点滴灌漑のノウハウを教えるため、イスラエル人の社員で灌漑のプロの方がはるばる私の畑に来て講習会を開いてくれましたが、先端企業がこうして農家のネットワークに実際に入って技術を共有していくことも、これからの私たちの農業を支える取り組みの1つになると思います。」


イスラエルが農業大国であることが知られていたとしても、その理由が日本の農家まで伝わるまでの道のりは容易ではないでしょう。しかし国土のほとんどが砂漠であり、資源に恵まれないイスラエルだからこそ、今の日本における異常気象によって発生した課題を解決できるチャンスは多々あるはず。今回の外崎さんご一家のお話を伺う限り、意外にも、外崎さんご夫婦世代から、次世代の智美さんに至るまで、技術力を以って農家のコミュニティを幅広くどんどん巻き込んでいくある種イスラエルらしいやり方が、技術の普及において功を奏しているのかもしれません。


リンゴ農家に訊く美味しいりんごの食べ方


日本の私たちが当たり前のように生でリンゴを食べられるというのは、こうしたイスラエルの技術によって課題が解決されたことによる貴重な恵みでもあります。


ちなみに、外崎さんのリンゴ畑で取れたリンゴは、外崎さん曰く、生食が一番美味しいとのこと。完熟リンゴはそのままでも、蜂蜜をかけても美味しいと生産者として直々に教えてくれました。


しかし、インタビューに同席していたネタフィム社で東北エリアの農家を担当する山中さんが横から一言。


「農家さんは毎日リンゴを食べているから、生が一番シンプルで美味しいと言いますけどね、私のような関東の人間からしたら青森のアップルパイはリンゴの量と濃さが桁違い!リンゴと蜂蜜もいいですけど、本場のアップルパイは本当に美味しいので青森県に来たらぜひ召し上がっていただきたいです!」