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As Promised Magazine

砂漠のスピリット

トスカーナ精神にインスパイアされ、シンプルを極めたミッドバーワイナリー

by As Promised Magazine |2020年12月30日


2012年、イツァーク&シェリー・ウォルフ氏夫妻は予想外の行動に出ました。ワイン造りで知られる緑豊かなユダヤの丘、ガリラヤ、ゴラン高原から離れ、イスラエル南部のネゲヴ砂漠でワインを造るという、誰もが思いつかないような決断をしたのです。


―――なぜネゲヴ地方を選びましたか?


イツァーク・ウォルフ氏:ゴラン草原にはたくさんのワイナリーがあるので、他とは違うことがしたかったのです。私たちは砂漠地帯の出身ではないのですが、そこでブドウ農園を始めることにしました。度々滞在するトスカーナでも、他の場所も選ぶことができたんですけどね。ワイン造りはだだのビジネスではありません。世界の終わりのようなネゲヴ砂漠でワインを造る場合は、なおさらです。私たちはこの地に立ち、この場所でワイン造りをすべきだと感じました。


そして2016年、ついに私たちの努力が実りました。私たちが造るミッドバーはデカンターワールドワインアワードロンドンで、イスラエルワイナリーとして初めて金メダルを受賞したのです。受賞した瞬間、私たちの選択は正しかったと確信しました。


―――ワイン造りの地として、通常はどういう土地が選ばれますか?


イツァーク氏:北半球、南半球に2つのワイン製造に適した地理的なラインがあります。例えばですが、伝統的にイギリスでワインは造られていませんでしが、地球温暖化の影響でワイン造りが可能になりました。私たちは、イスラエルの北ラインの最南端にあたります。我々がブドウを手に入れる場所ミツペラモンは、実際にはラインの少し外に位置しています。なかなか厳しい土地ですよ。みんなに砂漠でワインを造るなんて不可能だと言われました。たとえできたとしても、良い品質のものにはならないだろうと。私たちはそれは違うということを証明したかったのです。イスラエルの初代首相デイヴィッド・ベン=グリオンが言ったことを思い出すべきです。国土の半分以上を占めるネゲブにみんな行くべきだって。


―――ワイナリーをオープンすることとなったきっかけは何でしょうか?


イツァーク氏:これは私とシェリーが長年夢見ていたことなのです。2009年に私の心臓の手術が必要になり、移植のためアメリカへ行き、そこで2年間 過ごしました。そして2011年にイスラエルへ戻ってきたとき、いつもやりたかったことにチャレンジする時だと思ったのです。


またトスカーナにあるセカンドハウスでも多くの時間を過ごしましたが、親しい友人や近所の人はワインメーカーや肉屋でした。彼らと長く付き合ううちに気づいたのですが、イタリアの人たちにとって美味しいワインと美味しい料理が何よりも大切だということです。



―――ゴラン高原で生産されたワインとネゲヴ砂漠で生産されたワインとの間には、大きな違いがあると思いますか?


イツァーク氏:もちろんですよ。基本的なことですが、ワインは太陽によってできるものだと思います。本当のワインの造り手は太陽ですよ。環境的要因はワイン造りそのものより重要であると確信しています。これは土壌と気候を意味します。ネゲヴ砂漠のシャルドネを味わうとゴラン草原のものとは違うということがわかります。どちらが優れているというのではなく、違う良さがあるということだけです。


ワインについて学ぶには、実際に飲んで試してみる以外にありません。人それぞれ好みがありますし。ワイン製造者やワイナリーの中には、ワイン製造者が美味しいワインを造っており、ブドウがどこの品種であるかは関係ないと信じている人います。


―――通常ワイナリーではワインを何本生産していますか?


イツァーク氏:我々は年間60,000本生産しています。最大10,000本生産可能なワイナリーはガレージワイナリーと呼ばれ、最大100,000本生産可能なワイナリーはブティックワイナリーと言われており、イスラエルには約300のワイナリーがあります。


―――ミッドバー以外だと何を飲んでいますか?


イツァーク氏:ほとんどミッドバーを飲んでいますね。私とシェリーで、ランチとディナー合わせて1日一本飲んでいます。いつもシェリーが私より多く飲むほうですが。とはいえ、他のワイナリーのワインも飲むようにしています。


―――ワインの造り方について教えてください。


イツァーク氏:我々のブドウ農園で使用する水は、地中海から流れてくる淡水化水と地元の水を混ぜています。これにより砂漠でワインを造るために必要なものが揃います。太陽、水、そして土地。ブドウの木を灌漑(イリゲイション・人口水供給)には利点があります。雨のことを心配する必要もありません。私たちがするべきことは、ただ蛇口を開くだけです。必要な水量を把握し調整できるようになるまで、50年はかかると思います。水量と水を与えるタイミングはブドウの品質に影響します。


私たちはできるだけシンプルでピュアなワインを提供できるよう努めています。色や香りづけの添加物は約200種類ほどありますが、我々が使う唯一の添加物は酸化を防止するためのものだけです。それ以外は何もいりません。そして製造過程を機械任せにすることもありません。すべてのブドウは一粒一粒手作業で摘み取っています。


もし余裕があれば、ブドウの木の列ごとに異なるワインを造りたいですね。列によって太陽のや風の当たり方、水の流れが異なるので、違った味わいを生み出すでしょう。我々ができることは、早い収穫と遅い収穫のブドウをブレンドして1つのブドウ園から、1つの品種を使ったベストな最適なブレンドを造ることです。白ブドウは砂漠でよく育つということがわかりました。



―――ブドウの収穫時期はどのようにして決めていますか?


イツァーク氏:これは試行錯誤しています。時間はかかりますが、試行錯誤するしかないのです。年に一度、7月から9月の間に収穫の時期があります。この時期を間違えてしまうと翌年まで待たなければならず、もう1年かけてワインを造らければなりません。結果が現れるころには、もう次の収穫にそなえなければいけません。


―――砂漠のワインが特別な理由はなんでしょうか?


イツァーク氏:我々のワインを理解するには、砂漠を理解する必要があります。重要なのはどのくらい乾燥しているかということです。乾燥が全てなのです。水がなければその地には何も育ちません。砂漠では年に10日ほどしか雨が降りません。20ミリメートル降れば、その年は良い年です。砂自体が非常に細かく詰まっているため、雨が地中に浸透することはありません。通常そのような環境下では、バクテリアから生物でさえもほとんど成長できませんでした。聖書では砂漠はクリーンな聖地と見なされており、聖書の歴史を見てみると、人々は自分自身を清めるために砂漠を訪れていました。ミニマリストの地形は、私によくフィットしているところもあります。


ミッドバーワイナリーウェブサイト