Share

AGRITECH

イスラエル発、光で遠隔操作するスマート灌水システム 通信障害に対応する新技術を導入

by ISRAERU 編集部 |2026年11月04日

イスラエル南部のナハル・オズで、光を使って農地の灌漑設備を遠隔操作する実証システムが導入されました。無線通信が不安定な地域でも、農業に必要な水管理を継続できるようにする取り組みです。


センサーと通信技術で水管理を行うスマート農業のイメージ

無線通信に依存しない新たな灌漑技術

イスラエル南部のキブツ、ナハル・オズの農地に、光を利用して灌漑設備を制御する実証システムが設置されました。開発したのはイスラエル企業のDMRです。


この実証事業には500万シェケルが投じられ、イスラエル通信省と、ネゲブ地域の国家安全保障・レジリエンス技術センター(MTBCH)の資金援助を受けています。今後はガザ地区周辺のほかの地域への展開も計画されていますが、具体的な導入規模や時期は明らかにされていません。


今回のシステムが開発された背景には、農地における無線通信の障害があります。従来の遠隔制御システムでは、通信が途絶えると、バルブやポンプなどの灌漑設備を操作できなくなる可能性がありました。
ナハル・オズで農作物の栽培を管理する担当者は、「これまで通信障害が発生すると、現場まで出向いてバルブを手動で開閉する必要があった」と説明しています。


2023年10月7日のハマスによる攻撃以降、周辺地域では安全上のリスクも加わり、農作業の負担が大きな課題となっていました。現在も国境付近では通信障害が続いているといいます。


農地に水を供給する灌漑設備の運用風景

光を使って数キロ先の設備を制御

DMRのシステムは、光学式の送信機と受信機を使い、数キロメートル離れた場所にあるバルブやポンプに制御信号を送る仕組みです。
一般的な無線通信が電波を利用するのに対し、この方式では光を通信手段として利用します。そのため、電波干渉などの影響を受ける無線通信への依存を減らせることが期待されています。


農業において、灌漑設備の遠隔操作は水資源の効率的な利用や作業負担の軽減につながります。特に、広大な農地や人が頻繁に立ち入ることが難しい地域では、設備を現地まで操作しに行く必要性を減らせることが重要です。


一方、光を利用した通信も、あらゆる環境で確実に動作するわけではありません。設置条件や光の通り道、周囲の環境などによって性能が左右される可能性があります。また、機器の故障時にどのように制御を継続するかといったバックアップ体制も重要です。


灌漑設備や環境制御が導入された大規模温室農業

実用化に向けて検証すべき課題

今回の発表では、光通信の具体的な波長、データ伝送速度、農地で実際に測定された通信距離、粉じんや霧などへの耐性、制御信号のセキュリティー対策といった技術仕様は公表されていません。


また、ケーブルや光ファイバー、ほかの無線通信方式と比較した独立した性能試験の結果も明らかになっていません。そのため、現段階では、あらゆる環境で通信障害を解決できる技術と評価するのではなく、実証導入が始まった段階として捉える必要があります。


今後、実用性を評価するうえでは、長期間にわたる稼働率、通信エラーの発生頻度、障害発生時の復旧時間、導入コストなどのデータが重要になります。特に、指令どおりにバルブが作動したかを確認できる仕組みや、一部の機器が停止した場合にも灌漑を継続できる体制が求められます。


遠隔制御の対象となる点滴灌漑システム

気候変動による水不足や農業の省力化が世界的な課題となるなか、イスラエルでは限られた水資源を効率的に利用するための技術開発が続いています。光通信を活用した今回の取り組みは、通信インフラが不安定な地域で農業を支える新たな選択肢となる可能性があります。今後の実証結果と、ほかの農業地域への展開が注目されます。


*本記事はイスラエルメディアHayadanの報道をもとに構成しています。