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BUSINESS

2021年 食品と栄養をめぐるトレンド予測

フードテック特集 Vol.2

by The ACT Hub |2021年01月27日

2020年初めに始まった新型コロナウィルスの爆発的感染により、私たちは地球全体的な規模で、自分たちの振舞いや行動、そして生活習慣の厳しい変化に直面してきました。新しい年を迎えるにあたり、そしてこれからの更なる変化に立ち向かうためにも、私たちの食生活に対して、今こそ注意を向けるべきでしょう。


ネスレ社のCEO・Mark Schneider氏は、現状をこうまとめています。


「自身の免疫力を高めるための生活習慣と栄養素への関心が新たに高まっています。パンデミックが進行した現時点では、この考え方は私たちに深く浸透してきているでしょうし、企業に対しては、それ以上の事が期待されているのではないでしょうか。」


2020年の8月、ネスレ社は、そういった保健科学領域の拡充を目指し、抗ピーナッツアレルギーの研究開発で有名な、Aimmune Therapeutics社を26億ドルで買収しました。この買収に先立ち、2018年には、「ガーデンオブライフ」ブランドのプロバイオティクス(訳注: 腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物)製品やCBDドロップ(訳注: 大麻草等に含まれるカンナビノイドという成分を抽出して作られた栄養機能食品。ストレス改善に役立つと言われている)を含むブランドを新たにネスレ傘下に加えるため、カナダのサプリ開発企業であるAtrium Innovations社の買収を23億ドルで行っています。


「完全に各個人用に調整されたビタミン、ミネラル、そしてサプリメント、と言うビジネス領域は、まさに今、開拓者時代にあると言っても過言ではないでしょう。」


新年を迎えるにあたり、より多くの人々が、特定の目的のための食事に目を向けようとしています。以下、いくつかのトレンドをご紹介しましょう。



免疫力改善

将来の食品市場に関しては、特定の含有物が健康全体の改善に寄与する役割を持つ、いわゆるサプリ市場から大きな手がかりを得ることができると思います。例えば、高い抗酸化作用を持ち、炎症を抑えることで有名なエルダーベリー(訳注: 和名は接骨木・ニワトコ)などが例に挙げられるでしょう。いくつかの研究所からの報告では、この果実から抽出された成分は、流感ウィルスをブロックする効果があることを示しています。新型コロナの蔓延は、起業家たちの目を、自然由来の物質による人体の免疫力改善に向けさせているのです。


メンタルヘルス

メンタルヘルスという領域も、多くの人の関心を集めています。確かに、食物だけでは、鬱の治療やストレス緩和をもたらす事は出来ません。しかし、できる限り加工の少ない、自然に近い食べ物を、栄養素も含めてバラエティ豊かに摂取する事は、メンタルヘルスの領域に大きく貢献する事だと考えています。


2021年には、ストレス解消や睡眠改善など特定の目的に向けた栄養素を含む、限られた特定の含有物による健康効果の高い食品がブームになってくると思われます。myAir社もそういった企業の一つで、スーパー植物成分による栄養補助食品の組み合わせで、各人に最適なストレスマネジメントを提案しています。同社についてはフードテックスタートアップ特集で取材していますので、そちらもご覧ください。


食品ブランド開発ストーリー

さらに消費者の目は、食品ブランドそのものだけでなく、その裏にある研究開発ストーリーにも向けられてきています。どんな食品ブランドにも、その開発秘話と言ったものが存在しています。これから食品業界を志す方々は、その製品の購買に結びつく製品価値はどこに存在するのか、常にしっかりと認識する必要があると思います。


フレキシタリアニズム(穏やかな菜食主義)

食肉業界も、今大きな変化を迎えています。急成長する代替肉業界においては、「肉」という概念は、もはやその起源や組成によって定義されるものではなくなりました。それが肉の見た目を持ち、肉の味を提供し、料理の一角を美味しそうに占めていれば、それは肉として認識されるのです。動物性タンパクの摂取を減らしていく傾向はますます強くなっていく事でしょう。Statista社によれば、 60%近くのミレニアム世代が、この穏やかな菜食主義である「フレキシタリアニズム」や準ベジタリアンとしての食生活に興味を持っていると発表しています。



食品業界の透明性による効果

過去においては、食品企業やサプリ企業の多くが、その原材料の出所を明らかにしてきませんでした。しかし、消費者の品質に対するこだわりが高まるにつれ、そういった原材料のトレーサビリティにも消費者からの期待が寄せられるようになってきています。さらに加えて、教育機会の提供や環境保全への取り組みなど、企業の社会貢献活動にも目が向けられ始めています。


以上述べてきたようなトレンドが、食品業界と起業家に新たなビジネスチャンスをもたらすでしょう。そしてイスラエルは、今やその中でも、最も将来が期待できる食品改革の発信源となっているのです。

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