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FOOD

水道水ではなく「氷水」が正解? ゴマから生まれるイスラエルの定番食材「タヒニ」の奥深い世界

by ISRAERU 編集部 |2026年07月23日

ファラフェルやシャワルマはもちろん、サラダや煮込み料理、スイーツにも使われるタヒニ。イスラエルでは、ほとんどの家庭に常備されている定番食材です。しかし、原料や製法による違い、おいしく仕上げるコツ、正しい保存方法までは、意外と知られていません。約5,000年の歴史から栄養面での魅力まで、タヒニの秘密を紹介します。

すりつぶしたゴマから作られる、なめらかでクリーミーなタヒニペースト

約5,000年にわたって愛されてきたゴマのペースト

タヒニは、ゴマをすりつぶして作るペーストです。その歴史は古く、ゴマやタヒニが使われた最初期の記録は、約5,000年前のメソポタミア、現在のイラク北部周辺にまでさかのぼります。

タヒニの原料となるゴマ。皮付きと皮を取り除いたものがある

その後、ゴマの栽培は「肥沃な三日月地帯」からエジプトやイスラエルへと広がり、地域の食文化に深く根づいていきました。

現在、イスラエルで作られるタヒニには、エチオピア産のゴマが多く使われています。なかでも「フメラ種」は、繊細な風味と油分の多さから、世界でも高品質なゴマのひとつとして高く評価されています。

タヒニの原材料は基本的にゴマだけですが、製造にはいくつもの工程があります。ゴマを洗浄して水に浸し、皮を取り除いた後、乾燥させてから温度を管理しながら焙煎します。焙煎の加減は、色や香り、味わいを左右する重要なポイントです。

伝統的な製法では、ゴマを熱しすぎないよう、ゆっくりと回転する石臼で挽きます。余分な熱によって油の品質や風味が損なわれるのを防ぐためです。


白、全粒、オーガニック――何が違う?

店頭でよく見かける白いタヒニは、皮を取り除いたゴマから作られています。色が明るく、口当たりがなめらかで、風味も比較的穏やかです。

一方、全粒タヒニは皮付きのゴマを丸ごと使用します。色が濃く、わずかな苦みがあり、白いタヒニよりも食物繊維やミネラルを多く含みます。オーガニックタヒニは、合成農薬を使わずに栽培されたゴマを原料としたものです。

近年は、チョコレートやデーツシロップ、ピスタチオなどを加えた甘いタヒニスプレッドも人気を集めています。ただし、良質なタヒニを選ぶ際に最も大切なのは、原材料表示を確認すること。イスラエル・テルアビブのレストラン「M25」のオーナーシェフ、ヨナタン・ボロヴィッツ氏は、「ゴマ100%で、余計なものが加えられていない製品を選ぶべき」と話します。


おいしさの鍵は「氷水」

タヒニペーストに水とレモン果汁を加えて混ぜると、イスラエル料理でおなじみのクリーミーなタヒニソースになります。水の量は用途によって調整します。トマトサラダなどに合わせるなら濃厚に、ファラフェルを挟んだピタにかけるなら、少しゆるめに仕上げるのがおすすめです。

タヒニ、氷水、レモン果汁を混ぜて作る、イスラエル料理でおなじみのクリーミーなタヒニソース

ボロヴィッツ氏によると、材料を加えたらすぐに混ぜず、少しなじませてからかき混ぜるのがコツです。ゴマの油分が固まり、混ぜている途中で分離したり、だまになったりするのを防ぎやすくなります。

さらに、最大のポイントは水道水ではなく「氷水」を使うこと。冷たい水は乳化を促し、タヒニを明るい色となめらかな質感に仕上げます。完成後の保存性を高める効果も期待できます。

同氏が勧める基本の材料は、タヒニ、氷水、レモン果汁、そして必要に応じて少量の塩だけ。ニンニクやハーブ、ヨーグルトなどを加えるアレンジもありますが、「良質なタヒニは、できるだけシンプルに味わうのが一番」といいます。


地中海式食生活を支える栄養豊富な食材

タヒニは脂質の多い食品ですが、その中心は一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸です。植物性たんぱく質に加え、カルシウム、鉄、リン、マンガン、ビタミンB群、ビタミンEなども含んでいます。

イスラエルの栄養士、シガル・フリッシュ博士は、タヒニをオリーブオイルやアボカドと並ぶ、地中海式食生活を代表する良質な脂質源と説明します。

タヒニ大さじ1杯、約15グラムのカロリーはおよそ90キロカロリーです。エネルギー量は低くありませんが、栄養密度が高く、適量を食事に取り入れることが大切です。また、タヒニそのものは血糖値を上げにくく、パンなどの炭水化物と組み合わせることで、糖の吸収を緩やかにする働きも期待できます。

ファラフェルやピタ、サラダなどイスラエル料理に添えられるタヒニソース

上に浮いた油は捨てないで

タヒニの表面に油が浮いていると、「傷んでいるのでは」と心配になるかもしれません。しかし、これはゴマの固形分が沈み、天然のゴマ油が上に浮く「相分離」と呼ばれる自然な現象です。

上にたまった油は捨てず、底からしっかり混ぜて元に戻しましょう。この油はタヒニの乾燥や酸化を抑える役割も担っています。

ゴマをペースト状にすりつぶして作られるタヒニの様子


未調理のタヒニは水分がほとんどないため、開封後も必ずしも冷蔵する必要はありません。直射日光を避け、涼しい場所で保管できます。冷蔵庫に入れると保存性はやや高まりますが、固くなり、混ぜにくくなることがあります。

ただし、水やレモン果汁などを加えたタヒニソースは別です。必ず冷蔵庫で保存し、数日以内に食べ切りましょう。冷凍すると解凍時に水分と油分が分離し、食感が損なわれやすいため、基本的にはおすすめできません。

古代メソポタミアから現代のイスラエルまで、人々の食卓を支えてきたタヒニ。選び方と扱い方のポイントを押さえれば、家庭でもより豊かで奥深い味わいを楽しめます。

*本記事はイスラエルメディアynetの報道をもとに構成しています。