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TRAVEL

一時間で制覇できるコースから数カ月かかるコースまで!遺跡や自然を楽しめるイスラエルのトレッキングコースをご紹介

by 中島 直美 |2020年06月17日

イスラエルのトレッキング事情

イスラエルの、あまり知られていない楽しみの一つにトレッキングがあります。実はイスラエルには思いのほか「自然大好き!」という人が多く、週末の旅行に家族で、友達同士で、はたまた恋人同士で、キャンプに行こう!などということが多々あるのです。


イスラエルでは自然保護区がしっかり整備されていて、環境省によって運営されている自然保護組織がトレッキングコースを管理しています。自然保護組織の活動は多岐にわたり、ゴミ持ち帰りや野生の花を摘むのは禁止といった啓蒙活動から、キャンプ場運営や絶滅危惧種の動植物の保護活動などもあります。自然保護組織のキャンプ場は野性味あふれる素朴なつくりになっていて、水道があるだけ、簡易シャワーがあるだけ、といった場所も珍しくありません。さらにイスラエルは全国的に治安も悪くないので、いざとなれば「寝袋で野宿」でも大丈夫なのです。


イスラエル北部のトレッキングを楽しむ家族
イスラエル北部のトレッキングを楽しむ家族

バラエティーに富むイスラエルのトレッキングコース

トレッキングコースはイスラエル全土に張り巡らされていて、1時間もあれば一回りしてスタート地点に帰ってこられるような小さなコースから、全長何キロにも及び、さらに崖を昇り降りするようなコースもあります。遺跡を中心としたコースや、季節によってはポピーやアネモネ、野生のシクラメンといった花を見て歩けるコースなどもあり、小さい国土ながらも、北は緑豊かな高原から、南はクレーターの見られる砂漠など、コースの内容はバラエティーに富んでいるのです。


とは言え、もともと何千キロ級の巨大山脈や川がある…などという土地柄ではないので、登山家のような本格トレッキング愛好者には物足りないところもあるかもしれません。それでもちょっと足を延ばしただけで気軽に自然を満喫できるという点は、特筆に値するでしょう。


トレッキングコースは、曲がり角や分かれ道になると岩や木などにペンキで色を塗った印がついていて、自然の地形を生かした形で道順が示されています。イスラエル全土を20に分けた50,000:1縮小の地形図が自然保護組織により販売されていていて、これには全国のトレッキングコースも色で示されています。


トレッキングコースが示された地図
トレッキングコースが示された地図

イスラエル最大のコース「ナショナル・トレイル」

そして数あるコースの中でも一番の有名どころは、全長約900キロメートルのイスラエル・トレイルと呼ばれるコースでしょう。このコースはイスラエルの北端から南端までを縦断する形になっていて、全長制覇は約1~2か月と言われています。このコースの制覇を目指す人はヘブライ語で「シュビリスト」(トレイリストからの造語)と呼ばれ、シュビリスト同士は連帯感でつながり、また、シュビリストのために無償で宿泊所や飲み物、食べ物を提供する人たちも大勢いるのです。(彼らはエンジェルと呼ばれています。)


最近では、シュビリスト用のスマホアプリもあり、このアプリを使えば道順を示してくれるだけでなく、給水所や宿泊可能なキャンプ場の位置を確認したり、さらには宿泊所を提供してくれるエンジェルたちと直接つながることも可能です。


さてこのコースですが、最北端はヘルモン山のすそ野にあるキブツ・ダンという場所から始まります。そこから南下し、ガリラヤ湖、ハイファへと西へ向かい、海岸線を南下、テルアビブから東に方向を変えエルサレムへ、そのあとはネゲブ砂漠へと向かいます。ここから先は砂漠を最南端の町エイラットまで下っていきます。これが約900キロの全行程というわけです。私もいつかこのコースを制覇してみたい、そんな夢を抱いています。


ナショナルトレイルのアプリ
ナショナルトレイルのアプリ

世界の巡礼者も訪れる「福音の道」

1ヶ月も時間的余裕はないけれど、キャンプをしながら週末にトレッキングをしたいという人にも、おすすめのコースがいくつかあります。その中でも、個人的な私のおすすめは、全長約65キロメートルの「福音の道」です。


これは、イエス・キリストが育ったと言われるナザレの町から、彼の奇跡の後を追って歩く形でコースが作られています。世界各国から巡礼者が来るので宿泊などの環境も整っているだけでなく、難しい聖書の中でもわかりやすい奇跡のお話に焦点を当て、実際に奇跡が起きたと言われる場所を追って歩くので、聖書やキリスト教について詳しくなくても、純粋に楽しめるのです。


水をワインに変えた話や、少しの魚で多くの人を食べさせた奇跡など、自然の中で、自由なおおらかな気持ちで、歴史の一環としてキリスト教を垣間見ることができます。このコースは、聖書で「カペナウム」と呼ばれる、「クファル・ナフム」という町が終点になります。


自然に触れて野生に帰る子供
自然に触れて野生に帰る子供

大自然を満喫、砂漠のトレッキング

南のネゲブ砂漠や、ユダ砂漠もトレッキングに人気の場所です。日本の見慣れた風景とはかけ離れた景色で、一見の価値があります。砂漠の旅は、「夏は熱中症、冬は鉄砲水」と常に危険と隣り合わせでもありますが、正しい情報を入手して、必要な道具をしっかり揃え、自分の体力に合わせて余裕を持った計画を立てていけば問題はありません。


また、砂漠のトレッキングを案内する個人ガイドもありますので、そういったサービスを使うのも一案です。

https://www.facebook.com/mironshorhabar/


ネゲブ砂漠で生息している野生のヤギ
ネゲブ砂漠で生息している野生のヤギ

満天の星や、朝霧の中に遠く見えるクレーターなど、まるでこの世のものとは思えない風景、まるで別の星に来てしまったような環境、一度砂漠の魅力に取りつかれた人はそこから戻ってくるのになかなか苦労するようです。「砂漠はクセになる」と言われる所以です。


ああ、私もなんだか歩きに行きたくなってしまいました。皆さんも、もしイスラエルにいらっしゃる機会があったら、ぜひイスラエルの自然を体感してみてください。旅の記憶に新たな色が加えられることと思います。


ネゲブ砂漠のカルコム山
ネゲブ砂漠のカルコム山