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LIFESTYLE

一人で産むと言う選択
-イスラエルの場合

by SHIYA AVNAT |2020年10月27日

すこぶる明るい
イスラエルのシングルマザー

母と娘

日本で未婚の母と言うと、シングルマザーである事が何も悪い事でもないのにも関わらず、まだまだ経済的に苦しい、人には言えない理由が何かあるかのようなマイナスのイメージがつきまといます。


イスラエルでは、未婚のシングルマザーもそう珍しくはありません。そつなく仕事をこなしながら、一人で子供を育てる母親も沢山います。それだけ未婚であっても、子供を持つことがイスラエル人にとっては当たり前の事なのです。

シングルマザーである理由を隠す事もなく、子供にもきちんと小さい頃からなぜ父親がいないのかを説明する母親が多く、またそういった講習をしている団体もよく見かけます。

子供が自信をもって育っていけるよう、母親だけではなく祖父母も全力でサポートし、多くの人が一丸となって子供を育てて行く事は、イスラエル人にとって至って普通であり、母親が孤立しない体制が自然と成り立っています。


精子バンクという選択が普通?

パソコンをチェックする女性

何処の国でも様々な事情で子供を授かる事がありますが、精子バンクを利用して子供を授かる事はイスラエルではごく普通です。

精子バンクを利用する場合も、プロセスの一部は国がやはり負担しており、個人の負担が軽くなるようなシステムになっています。


まず産婦人科にて病気の検査や子宮の検査をした後に、医師から問題が無い事を伝えられた後、次のステップへと移行し、精子バンクの手続きを開始します。精子バンクはシングルの女性だけではなく、同性愛者のカップル、パートナーの精子の状態に問題のある人等、様々な事情で利用します。


試験管をチェック

まず精子バンクから購入するには2つの方法があります。通常の病院の場合は、1回のドネーションが18,000~21,000円の間となります。しかし精子バンクを利用する女性の数が少なくないイスラエルでは、提供されるまでの各種手続きと検査で、長いと半年以上待たなければならない場合があります。そのためプライベート(民間)の精子バンクを利用する女性も多く、1回の料金が60,000円以上と約3倍の値段にも関わらず、プライベートに至っては直ぐに手続きを開始する事が出来るため、利用する女性も少なくありません。


通常の病院でも、精子提供者の身長、体重、肌、髪、目の色、職業、学歴、趣味、人種(オリジナルルーツ)を開示しています。

プライベートだと、上記内容に加えて、どの芸能人や有名人に提供者が似てるのかまでわかる形となっています。

イスラエルでは、イスラエル人の他にアメリカ人の提供者を選択する事も可能です。アメリカ人の場合はプライベートも民間も金額が変わらず、全ての手続きの合計が600,000円前後のようですが、アメリカ人の場合はオープンドネーションと言う制度が導入されており、子供が18歳になった時点で子供が父親に会える又は父親の写真を開示する事が可能です。


下記プライベートの精子ドナーにかかる大まかな内訳です。

精子提供初期費用 60,000円~90,000円
人工授精手術費用 26,000円程度
購入した精子の保存 14,000円程度
アメリカ人のファイル開示費用 15,000円
先天的な遺伝子異常の検査 75,000円

ドネーションを5回まとめて支払う場合は割引があり、5回分で210,000円になるようです。

大体合計金額が200,000~300,000円程度です。

※ヘルツェリアメディカルセンター調べ


イスラエル女性がアメリカ人の精子提供者を選ぶ理由には、オープンドネーションの利点以外にも、イスラエル人同士は血が近い為に遺伝子疾患が出てしまう可能性があり、またイスラエルは精子提供者の提供回数の制限が無い上に小さい国なので、将来同じドナーの子供が付き合ってしまうケースを避ける理由でも選択するようです。

現在総人口数が8,880,000人程度のイスラエルでは、現在、40,000人以上のドナーチルドレンがいると言われています。


イスラエルではそういった悲劇を避けるため、同じ精子提供者の父親を探すためではなく、兄弟を探すフェイスブックコミュニティーがあり、活動も活発です。


このような経緯を辿り色々と悩んだ末、自分の考え方に適した方法でドナーを選んだ後、全ての検査を済ませた後の次の生理から6日目にエコー検査を受け、排卵が確認出来た場合、卵子の状態で何日後が人工授精(妊娠しやすい期間に注入器で精子を子宮内に注入する方法)に最適か医師が判断し、その日に受精を行います。

こちらの場合も何回かの治療が成功しなかった場合、体外受精や顕微授精へと移行します。


今回は精子バンクを選択したイスラエル人女性に話を聞いてみました


―――まず、精子バンクを考えたきっかけを教えてください。


現在39歳になりますが、3年前位から精子バンクについてなんとなく調べ始めました。考え始めてから時間が経つにつれて、母親になるという事自体を意識しだし、男性とのお付き合いよりも、母親になる事の方が私にとって重要で大事な事であると気づいたのが、次のステップに進んだきっかけです。


―――一人で育てる事に不安はないのでしょうか?


祖父母と孫

始めは1人で子供を育てると言う選択が、一生一人で生きる事に繋がるのではないかという不安がよぎりました。しかし自分自身の判断を信じて家族に相談したところ、家族も私の意見を認めてサポートしてくれる事がわかり、一人でも大丈夫だという自信にも繋がりました。


―――イスラエルでは、子供を一緒に育てる目的のみでパートナーになるストレートの男性や同性愛者の男性もいますが、彼らを選ばなかった理由はなんでしょうか?


イスラエルでは、子供を持ちたい女性と男性をつなげるコミュニティーがネット上で存在しますが、私の答えは至ってシンプルです。普通に彼氏や人生のパートナーを探すのも大変なのに、よく知らない人を自分の子供の父親として選ぶ方が、よっぽどリスキーであると考えたからです。それなら一人で責任を持ち育てた方が、心配も少なくなるという思いに至りました。


何年間も悩み、色々と調べた上での決断なので、シングルマザーになる事に対する恐怖を打ち消す事ができ、もう迷う必要もなくなりました。


なかなか聞きづらい質問に対して、どこかさっぱりとしながらも淡々と質問に答えてくれた彼女。妊娠する確率との時間経過を冷静に考えながら、時間をかけて決断を下した彼女の芯の強さと決断力を垣間見る事ができました。

子供を持たないという選択も、人ぞれぞれの判断になるのでそれもありだと思います。しかし、なんとかなるしなんとかするという決意とポジティブさで、一人で子供を育てる選択をしているイスラエル女性はやはりたくましいと言う印象が強く残りました。