イスラエルと日本の不妊治療の違いにフォーカスを当ててきましたが、やはり妊娠してからも色々と違いがあるのか?と言う事で、妊娠検診のプロセスを確認してみました。
まず日本の場合、出産までにかかる自己負担費用が検査費用が2~3万円、出産費用が4万~20万円ですが、イスラエルの場合は、特別な検査を申請しない限り全て無料です。
妊娠初期から後期までのプロセス
初めに、日本と明らかに違う点が、イスラエル人は子供を作る前にDNAの検査をする事が挙げられます。
ユダヤ人はユダヤ人同士で結婚する事が多いため、血が濃くなり遺伝子疾患が出てしまう事があります。その他にも、第二次世界大戦でホロコースト(大量虐殺)があった歴史から、親族がほどんどいない中、親戚である事を知らずに結婚してしまうケースも未だにあるため、子供を作る前にDNAの検査を行います。また興味深い事にそれぞれのルーツ(北アフリカ、各国のヨーロッパ等)によって特有の遺伝子疾患もあり、羊水検査をする時に自分のルーツが何系かによって出やすい疾患にの説明と、羊水検査の内容の中にその検査をさらに追加するか等の説明も受けます。
まず、イスラエルも日本も超音波検査自体には変わりません。イスラエルの場合、血液検査等は看護師の所に直接出向くため、担当医との面会の必要は無く、その分日本の方が超音波検査の回数が多くなります。
イスラエルでは大きな超音波検査が数回あります。まず胎児の形態と首の後ろの厚さで染色体の異常を確認する検査、中期に胎児の形態を確認する超音波検査、胎児の臓器から機能を確認する検査は、担当医以外の超音波検査の専門医が確認する事が大半となります。
日本の場合、3Dの画像は毎回の超音波検査で追加費用がかかる所もありますが、受ける事が可能です。イスラエルの場合は、大きな超音波検査でしかチャンスが無く、動画の画像もこの時にデータでもらえる程度です。
また、日本の方が圧倒的に母体の抗体検査は多いのですが、逆に染色体異常の検査は全て実費となっており、イスラエルでは染色体異常の検査はほぼ全て国がカバーしている点が異なっています。
検査の中には、超音波検査での染色体異常検査、トリプル検査(母体血清マーカー)、羊水検査も含まれています。日本では羊水検査のリスクを心配して、検査自体に否定的である事が多いようですが、イスラエルの場合、35歳以上は高齢出産のリスクの1つに染色体異常があるため、無料で受ける事ができます。検査を受ける事自体のリスク確率は日本より低く、羊水検査の件数も多いため、医師の経験が高いとの認識がある事から、宗教色の強い方で無いかぎり、35歳以上の方はほぼ検査を受けます。35歳以下でも自己負担で進んで受ける妊婦さんが多く、自己負担の場合は日本円で12万程度のようです。
日本でも近年、染色体異常の検査を受ける方が多くなってきてはいますが、倫理的な問題でテストを受けない風潮があるのもなきにしもあらずです。
イスラエルの場合、初めにリスクを知ってその後の対応を冷静にするという意味でも、検査を受ける方が大半である理由のようです。
全ての染色体異常の検査の中でも、妊娠初期の9週から受ける事が出来る上に胎児への負担もなく、最も早く検査を受ける事が可能であるNIPT血液検査はかなりの利点がありますが、こちらはまだイスラエルも無料検査には含まれていない為、6~20万程度の費用がかかります。しかし、胎児に負担がかからないこと、この時点で問題がなければ羊水検査を受ける必要がない事から、NIPT検査を受ける妊婦もいる一方で、検査結果次第では15~18週に再度羊水検査を受ける必要が出てくるため、羊水検査のみを受ける妊婦さんの比率が自然と多くなっています。
このNIPT検査費用も数年以内には国がカバーする予定であると言われています
また日本では受けない予防接種ですが、欧米ではどこの国でも大体実施している妊娠中の予防接種野中に百日咳ワクチンが含まれています。
百日咳は新生児がかかると重病化する事が多いのですが、初回摂取が3ヶ月以降となるため、妊婦がワクチンを受ける事が適切と考えられています。
日本では、それほど百日咳の病例が多く無いので必要ないのかもしれません。逆にイスラエルでは結核等がほぼ無いため、BCGワクチンの摂取の推奨はされていません。
場所が変われば病気のタイプも変わるのでしょう。
30週迄には大半の重要な検査と予防接種が終わり、後は産まれてくる準備をすると言うのがイスラエルの感じですが、ゲン担ぎでイスラエルでは出産前に赤ちゃんに必要な物を揃える事をしないため、産まれてから旦那さんが予め決めておいたリストを見ながら駆け回ったりします。こっそり購入して妊婦さんが両親の家に貯めておくと言う裏ワザもあるようです。
ドゥーラ(助産師さん)は何をする?
イスラエルでも、助産師さん的な役割の方にサポートをお願いする事が多々あります。やはり初めての出産は万国共通で心配が付きまとうため、初産で助産師さんに頼む事が多いようです。イスラエルの助産婦さんは日本と同様で女性しかいませんが、アメリカ、イギリス、オーストラリアでは男性の助産師さんがいるようです。
ドゥーラは、正確には助産師ではなく出産のサポートを行います。日本では、助産師さんは看護師と助産師の両方の資格を取得していますが、ドゥーラは看護師等の資格はなく、お産までとお産後の手伝いとなります。子供を取り上げる事が出来るのは看護師、手術は医師のみとなっています。では実際ドゥーラは何をするのか?陣痛が始まってから、陣痛の間隔を確認したり、呼吸法やマッサージで少しでもお産がスムーズに運ぶ手助けをします。
またイスラエルでは無痛分娩で出産する事が通常となっていますが、あまりにに早く無痛分娩の注射を打ってしまうと陣痛がうまく進まないため、注射のタイミングを確認します。逆に自然派分娩を望む妊婦さんはお産が長時間化しやすいので、ドゥーラが心強い味方となります。分娩室には、妊婦さん以外に2人しか付添が入れないため、ドゥーラが入ってしまった場合、他の家族は外で待機する事となります。
出産率が高い国であるにも関わらず分娩予約の必要が無い?
日本の場合、妊娠してから5~20週の間に分娩予約を入れるのが普通で、病院も助産院から総合病院と様々な選択肢がありますが、イスラエルの場合は1人の母親につき平均で子供の数が3.11人となっているにも関わらず(日本の場合1.36人となっています。)、分娩予約をする必要がありません。また出産ができるのは、日本でいう大学病院及び総合病院または自宅となっており両極端です。出産が多い分、病院の受け入れ体制が整っており、予約をする必要が無いそうです。
分娩から4~6日で日本では退院となりますが、イスラエルの場合2~3日で退院となります。
ちなみにイスラエルでは立ち会い出産が普通であり、余程の事がない限り父親である男性が付き添わない事はありません。
無痛分娩が危険という観念がなかったり、羊水検査が当たり前のイスラエルですが、それでも日本と同様に健康で産まれて来てほしいという親心はどこの国でも変わわりは無く、その国のカルチャーと考え方で、最善の状態で産まれてくる子供を受け入れる姿勢自体が大事であり、母親にとっても最善であると言えるのでしょう。
次回は、日本とは異なる形でシングルマザーを選択するイスラエル女性について取材していきたいと思います。