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LIFESTYLE

幸せは子供が運んでくる。イスラエルの不妊治療事情最前線。

by SHIYA AVNAT |2020年08月31日


第二子まで不妊治療が無料。不妊治療の技術に優れたイスラエル

ハイテクやスタートアップ企業によって第三のシリコンバレーと近年注目されているイスラエルですが、実は世界的に不妊治療の技術が高い事でも有名な国でもあります。


イスラエルは45歳までの不妊治療に対して公的資金を提供している世界で数少ない国であり、政府が不妊治療に多額の資金を提供している為、1人あたりの不妊治療回数が世界で最も多いのも特徴の一つです。


体外受精(IVF)治療は、医療機関が無料で提供しているヘルスバスケットに含まれており、イスラエル国民は第一子と第二子の妊娠を対象とした不妊治療を無料で受ける事ができます。


体外受精(IVF)は、子供がいないカップルや一人で子供を育てたい18歳から45歳までの女性の為に、1980年から開始されました。驚く事に卵子提供の場合、女性は54歳まで体外受精を受ける事が可能です。


金銭的な負担も大きい日本の不妊治療の現状

日本の厚生労働省が6月5日に発表した2019年の人口動態統計(概数)によると、日本の出生数は過去最小の86万5234人でした。

出生数が毎年減少傾向にある事に対し、年々不妊治療の治療者数は日本でも増加傾向にあり、不妊治療で誕生する命も増えてきている中で、未だに自然妊娠神話に頼る傾向が強く、不妊治療に対する政府のサポートも十分とはいえず、金銭的な負担が大きいのも現状の問題点です。 



イスラエル不妊治療の4ステップ

イスラエルも日本と同様に、一般的に避妊をしないで性交渉を行っているカップルが1年以上妊娠しなかった場合、不妊のカテゴリーに入り、日本と同じく下記の四段階でそれぞれ年齢や不妊原因にあわせて治療を行っていきます。


①排卵日にあわせて性交渉行うタイミング法

②妊娠しやすい期間に採取した精子を注入器で子宮内に注入する人工授精

③採卵した卵子を培養し精子を培養液の中に加え自然受精を待つ体外受精

④採卵した卵子を培養し針で精子を卵子の中に注入する顕微授精



日本とイスラエルにおける不妊治療の違い

20代や46歳以上の場合、治療内容や回数が制限される事がありますが、日本とは異なり、イスラエルでは保険証を持っていれば薬代の3割負担以外は不妊治療、人工授精、体外受精、出産、全てを初めから無料で行う事が出来るので、費用の負担をほぼ気にする事なく治療を受ける事が出来ます。


日本の場合、金銭的に少しでも余裕がないと治療を始める事すら困難であり、また自治体指定外の病院で治療を受けた場合も、不妊治療助成金は対象とならず、治療を希望するお医者さんの選択も限られてしまいます。


一方イスラエルでは、受精させる技術、体外受精させた胚盤胞を戻す技術が高いと評判の総合病院や先生を自らリサーチし、自身で選んで治療を始める事が可能であり、病院任せではなく自分の選択に責任を持ち納得しながら治療を迅速に進めて行けるよう、病院も行政もフレキシブルに対応しているのが特徴と言えます。


日本では、受精自体を何処で行っているのか自体調べることが難しく、医師の経歴を重視しがちな傾向にあります。しかし、その医師が、どの位の年月人工授精の手術をしているのかを明確に調べる事は出来ません。

また不妊治療と産婦人科の先生が分けられておらず、どちらの専門かわかりにくい事も、ロスタイムを生む原因ではないでしょうか。



イスラエルではまず、不妊治療を行うにあたり産婦人科医の下、パートナーの精子検査、ホル モン血液検査、子宮内検査を受けます。検査の結果内容を確認後、20代の場合一通りの不妊治療のステップを踏みますが、年齢が35歳以上の場合直ぐに担当が産婦人科医から不妊治療医に移行する事が多く、タイミング法等の話はあまり出てきません。


不妊治療医からは、まずはじめに自身の年齢が25歳-30歳に比べて妊孕性(妊娠する力)がどれだけ低下しているかの説明を受け、自身にどれだけ妊娠できる可能性のある期間があるのかを再確認します。本人の自覚を促すことも、重要項目の一つであるからではないかと推測できます。


乳がん等があった場合、不妊治療費を国が負担することが出来ない為、不妊治療医と初面会を行った時点でHIVを含む性病検査、乳がん検診、子宮系疾患の検査、不妊治療を行う総合病院の予約手続きを直ぐに開始します。



日本は自然妊娠志向が未だに強く、不妊治療を行う段階で排卵誘発剤を使わなかったり、タイミング法を数回繰り返す事によって、残り少ない時間やお金を消費してしまう傾向が未だ根強く残っています。


赤ちゃんは自然に授かるにこした事は無いですが、それがなかなか出来なかったからこそ不妊治療を始めているのに、医師の指示に従い本末転倒になってしまう事も懸念されます。


一方、イスラエルでは2017年の統計で不妊治療が5回に1回成功するデーター(21%)が出ており、成功率の高さが伺えます。

また1人の母親につき平均で子供の数が3.11人となっており、OECD加盟国平均2.1人を大きく上回っています。


イスラエルが不妊治療に力を入れる理由

こう言った背景には1948年の建国以来、ユダヤ国民を増やす為に積極的にユダヤ人の移民を受け入れている政策に影響されている部分もありますが、ユダヤ人は幸せは子供が運んでくると信じている事も大きく影響しているのではないでしょうか?



都心部に住んでいる若いカップルでも、結婚から1年前後で子供を作るケースが大多数であり、いかに子供を持つ事が彼らにとって重要であるかが伺い知れます。


次回は不妊治療医のインタビューを基に、実際のイスラエルの不妊治療プロセス及びにイスラエルならではの最新技術にフォーカスして行きたいと思います。