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Art

想像から創造へ。精神的なものである思考を、物理的なものへと変換させるイスラエル出身アーティスト

独占インタビュー|シャイ・アゾレイ(アーティスト)

これまで数々の賞を受賞し、ニューヨーク、ロンドン、東京、ウィーン、シカゴ、クリーブランド、北京などで展示経験を持つイスラエル人アーティスト、シャイ・アゾレイ氏。彼の野望は尽きることなく、作品を作り続けています。パンデミックにおいても彼は失速することなく、ミュンヘンで開催される次の展示会の取材の対応に追われる忙しい日々を送っています。


シャイ・アゾレイ 写真:Yaakov Israel

アーティストになるということ

シャイ氏の色と美学への興味は、彼がまだ幼いころから始まりました。


「子供のころ、野原を歩いては蝶を集めて箱に入れていたのを覚えています。蝶はいつしか死んでしまいますが、永遠の美しさを持っていると思っていました。それはまるで芸術のようでしたね。」


シャイ氏が20代前半のころ、スケッチブックを片手にアジア旅行へ出かけました。そこで彼の人生において転機となる瞬間がやってきます。アーティストになることを決意したのです。


「旅行中、タイのビーチで過ごしていた時、物干し竿にぶら下がっている服をスケッチしていました。そこで突然、アーティストになることを決意したのです。」


そして25歳のころ、イスラエルで最も権威ある芸術アカデミーであるベツァレル美術学校へ入学します。


彼が最初に絵を描き始めたとき、彼の想像力、ビジョン、考えからインスピレーションを得ていました。しかし学校では様々な技術を学び、彼らの指導の下で観察による絵を描く必要があったため、その後彼が学校で学んだ規則や規範から抜け出すのはそう容易ではありませんでした。


「最終的に私は自分自身の原点に戻り、学校で学んだ全ての知識を応用しながら、想像力から絵を描くことができるようになりました。おそらくこれは皆さんも経験しているのではないでしょうか。私たちは何かを学び、それを忘れ、そしてそれに戻る方法を見つけるのです。」


Photo by Yaakov Israel

「それはまるでラビ・ナフマンによる”橋の下の宝”の物語のようなものです。あなたは鼻のすぐ下に隠れた宝物を持っていますが、あなたはそれが見えません。それを探すために遠くまで旅をすることで、実はそれをずっと持っていたことに気付くのです。」


「アーティストが時間をかけるのは自然なことだと思いますよ。」

そして35歳の時、シャイ氏は長い休暇を取り、大きな展示会で作品を発表し始めました。アーティストとして遅いスタートであると考えましたが、彼にとっては家族を持ち、それから自分の時間を作ることが重要であったと語ります。


「私はアーティストの憂鬱なイメージを追いかけるつもりはありません。子供たちの元へ帰り、彼らのために料理をするのが大好きなのです。真のアーティストは、アートだけでなく、それ以外のものにも専念できるはずです。」


イスラエル調査団が海外のキュレーターをイスラエルに連れてきたとき、彼らはシャイ氏のスタジオに立ち寄りました。そしてその中の一人である日本から来たキュレーターが、彼の作品をもっと見るためにスタジオへ戻ってきたのです。この出会いこそ、後に彼にとって初の海外展示となる、東京のフェアやギャラリーで展示を行うきっかけとなったのです。


「日本人が自分が作るものと繋がるかどうかはわかりませんでしたが、とにかく素晴らしい経験でしたね。人々は私の絵に共感し、購入したいと思ってくれました。私がただイスラエル出身だからといって、私が作るものもイスラエル風であるとは限らないことに気づいたのです。アートは普遍的で視覚的な言語であることを証明したのです。」


「毎日スタジオに行くのは、まるで自分の王国に入るようなものですが、必ずしもスムーズに進むとは限りません。」

シャイ氏の一日は、太陽が昇る前から始まります。起床後にはトーラー(ユダヤ教の聖書)を学び、それから一人でフィールドへ行き、神様と繋がります。これにより、集中力が高まり、スタジオに入る前に導きを感じることができるのです。


Home, 2021, oil on canvas, 80x90cm.

「私にとって信仰とは、私を正確に保つものです。創造にはエゴが伴いますが、信仰があれば創造が最も重要なことではないため、自分自身を笑うことができるのです。すべては信仰の次にあるのです。」


The lake, 2017, oil on canvas, 199x266cm.

「私は目に見えるものを描きません。物事を想像し、それを絵に取り入れるのです。芸術的なプロセスは、非常に精神的なものである思考を、物理的なものへ変換することです。」


シャイ氏がアイデアを思いついたとき、まずは簡単なスケッチを描き、そして油絵具を使って模索します。そしてその後、最終的に大きな油絵に取り掛かるのです。


Orient painting class, 2019,  oil on canvas, 200×260.

「私の絵は子供っぽく、色彩豊かに見えるかもしれませんが、この遊び心を感じてもらい、物語を伝えたいのです。私たちは紛争の世界におり、目の前で多くのことが崩壊しています。特に今は混乱のさなかだと思います。」


「パンデミックにより、人々は自分自身の人生の選択に疑問を抱き、目的を模索し始めました。アートは我々が自分自身と繋がり、人生における善に集中するのに役立つと信じています。」


ウェブサイト

https://sazoulay.com/