西武池袋線江古田駅を下車し徒歩1分。駅からお店に向かうと、「SHAMAIM」と大きく書かれた看板が目に入ってきます。
今回訪れたのは、学生から子供のいるファミリーまで人気の高い江古田で、地元の人に愛されながら17年も続く本格イスラエルレストランが「SHAMAIM(シャマイム)」です。
店内に入ると、イスラエルの可愛い雑貨やインテリアが出迎え、アットホームな雰囲気を演出。「シャマイムの本格イスラエル料理が食べたい」と、わざわざ遠方から足を運んで来店される方も多く、ヘルシーな料理も多いことから女性からも根強い人気があります。今回はそんなシャマイムの人気の理由に迫るべく、イスラエル出身オーナーの北岡タルさんにお話を伺いました。
本格イスラエル料理レストランSHAMAIMオーナー北岡タル氏インタビュー
―――お店や料理だけでなく、タルさんご自身の想いについても伺いたいと思っていますので、本日はどうぞ宜しくお願いします。
北岡タルさん(以下、タルさん):宜しくお願いします。
―――初めに自己紹介も兼ねて、日本に来たきっかけについて教えて頂けますか?
タルさん:私の父が日本人で、元々イスラエルの日本大使館で働いていたこともあり、幼いころから日本の文化に触れることが多くありました。また祖父母に会うために日本を何度も訪れるなかで、自然と日本のカルチャーに惹かれていきましたね。それから 25年ほど前に、語学の勉強のため日本の学校に入学したことがきっかけです。
―――語学留学がきっかけということですが、料理は日本に来てから始めたのですか?
タルさん:はい。仕事として料理と関わり始めたのは日本に来てからで、まさか自分がレストランのオーナーになるとは、当初全く考えていませんでした。もともと祖母が料理人だったことや、生まれ育った地元もテルアビブの市場から近いこともあり、幼いころから自分で料理を作るのは好きでした。
―――ちなみに来日前は何をしていたのですか?
タルさん:実は私、野球選手だったんです。野球人口が日本ほど多くなかったので、アマチュアですがソフトボールの国際大会に参加したこともあり、日本チームと試合をしたこともあるんですよ。今でも早朝仕事前に草野球をやっています。
―――それでは野球選手からの転身、そして来日した背景のなかで、どうして料理を始めてみようと思ったのですか?
タルさん:きっかけは語学学校に在学していた頃に、前オーナーが運営していたSHAMAIMでアルバイトを始めたことでした。せっかくなので自分の好きな料理の仕事をしてみようというのが始まりです。もしあの時に別のお店で働き始めていたら、今頃別のジャンルの料理人をしていたかもしれませんね。趣味で釣りにもよく行くので、和食の料理人だった可能性も十分あったと思います。
―――料理自体が本当にお好きだったのですね。バイトから始まり、お店を任されるようになったきっかけは何かあったのですか?
タルさん:前オーナーが帰国することになり、お店の運営を引き継ぎました。その頃から通ってくれているお客様や江古田という町が好きで、お店を残したいという想いが勝りオーナーとしてSHAMAIMを運営していくことを決意しました。
―――タルさんご自身についてご教示くださりありがとうございます。日本が好きという理由から、料理人としてチャレンジに至るまでのお人柄が本当に素敵です。続けて料理について伺いたいと思うのですが、イスラエル料理の特徴について教えていただけますか?
タルさん:イスラエル料理という定義が存在しないのが一番の特徴だと思います。日本と違い地続きで様々な国(レバノン、ヨルダン、シリア、エジプトなど)の食文化が混ざって中東料理と総称されていますが、野菜やハーブ、豆といった食材を調理したヘルシーな料理が多いことが特徴的です。
―――個人的にイスラエル料理と言われるとあまり耳慣れない印象ですが、日本人の反応はいかがですか?
タルさん:一度食べてもらえれば、イスラエル料理ファンになってもらえる自信はあります。実際、一人で食べにくるお客さんやリピーターの方も多くて嬉しいです。現地の味を届けられるようこだわっていることも多いですが、辛さを調整するなど日本人の舌に合うよう心がけています。
―――この後の試食が非常に楽しみです。引き続き、おすすめの料理について試食しながら伺ってもよろしいでしょうか?まず初めてご来店された方には食べてもらいたいメニューはありますか?
タルさん:おすすめメニューは”フムス”です。日本ではあまり馴染みのない料理ですが、イスラエルをはじめとした中東では欠かせない料理です。ひよこ豆に練りゴマやオリーブオイルなどを加えてすり潰しています。栄養価も高くヘルシーな料理です。
―――初めて食べましたが、そのまま食べてもまろやかでおいしいです。ランチにあってもディナーあっても嬉しい一品ですね。
タルさん:ありがとうございます。フムスは”ピタパン”と一緒に召し上がって頂くのがおすすめですよ。シャマイムでは、手作りの”自家製ピタパン”もご用意しています。コロナウイルスの影響で思うように営業ができない時期に、手作りピタパンに挑戦してみたのですが、これが大成功でした。これまでとは全く違う食感で、お客様にも大変好評です。手間をかけた甲斐もあり嬉しいです。
―――市販の”ピタパン”と食べ比べると、フカフカしていて違いが一目瞭然ですね。
タルさん:はい。いつかフムスの専門店もやってみたいと思っているんです。人気メニューの一つでもある”ファラフェル”を挟んで食べるのも美味しいですよ。”ファラフェル”はひよこ豆に香辛料を混ぜ揚げた料理で、日本でいうコロッケのような料理です。
―――フムス、ファラフェル、ピタパンの組み合わせは、本当に合いますね。ネットでは徐々にイスラエル料理の話題性もあがっているようですが、実際手軽に食べることができて美味しくてヘルシーともあればリピーターさんが付くのも納得です。
タルさん:あとは料理のお供にイスラエルワインも是非一度試してみて下さい。日本では近年注目を浴びつつありますが、マニアの方にはもっと昔から好まれています。イスラエルの気候がフランスのボルドー地方の気候と似ていることもあり、ロスチャイルド家の支援のもとブドウ園を開拓してきた歴史もあります。
―――食事だけでなくお酒も楽しめるのは、日本の食文化との親和性が高そうです。ちなみにシャマイムではどのようなメニューがあるのですか?
タルさん:お食事メインのお客様向けに1,100円~1,900円予算でセットメニューを用意しています。またディナーや宴会向けに2500円で食べ放題のコースも用意しており、フムスやファラフェルといった定番メニューはもちろん、シシカバブやスープなど、全14種類の料理が楽しめます。今日召し上がって頂いている料理も食べ放題コースで提供している料理です。
―――この内容と値段で食べ放題はコスパに大満足です。お酒もすすみそうです。
タルさん:ありがとうございます。自分が作った故郷の料理をおいしく、より多くの人に味わってもらえると嬉しいですね。
―――タルさんの日頃の想いから、店内の雰囲気やお料理のこだわりまで、貴重なお話ありがとうございました。最後になりますが、目下のコロナウィルスによる影響はありましたか?お店の対策などがあれば教えてください。
タルさん:店内のソーシャルディスタンスを整えて、ボード、アルコール消毒などを設置しました。一時的に団体様の予約制限を設けるなどバタバタしてこともありました。それでも自家製ピタパンを開発出来たことや、他にもデリバリーで世田谷や上野、江東区など少し離れたエリアのお客様に料理を届けたりと、新しい機会も増えたのでお店にとって良いこともあったかと思っています。
―――難しい時期かとは思いますが、楽しみなことも伺えて本当に素敵です。今日は本当にありがとうございました。
貸切りイベントなど賑やかに営業することもあれば、気さくなタルさんの手料理と落ち着いた店内で食事をすることもできるレストラン。料理やお酒はもちろんですが、タルさんに少し話しかけてみるのも楽しみの一つになるかもしれません。