中東の国々で古くから伝わる、伝統のお菓子ハルヴァ。近年、中東地域の文化や食生活が注目されていますが、ハルヴァは日本ではあまり馴染みがありませんよね。多くの人々から愛されているハルヴァについて、語源、食べ方、作り方そして、購入方法をご紹介します。
目次
中東の伝統菓子ハルヴァとは
ハルヴァは、小麦粉やセモリナなどの穀物の粉に、バターやギーなどの油脂、そして砂糖・フルーツなどを加えて作られる、主に中東地域に古くから伝わる伝統菓子です。ちなみにセモリナとは、小麦粉をふるったあとに残る胚乳部分で「ひきわり小麦」とも呼ばれています。ギーは、バターを煮詰め濾して作った、純度の高いオイルです。
ハルヴァのレシピや作り方は地域によって大きく異なるため、その形や感触は同じハルヴァでも様々。大きく柔らかいプディング状のもの、そして固い感触の固形状のものに分類することができます。
ハルヴァが食べられている国はイラクやイエメン、イスラエル、トルコ、アフガニスタンなどの中東地域。そして、インドやバングラデシュなど南アジア地域、東ヨーロッパや北アフリカと、広範囲に及びます。また、ハルヴァは色々な場面で食されます。冠婚葬祭や宗教行事、産後や病後の回復食などとしても食べられることがあり、ハルヴァを食べる地域の人々にとっては、生活になくてはならない存在となっています。
ハルヴァの起源
ハルヴァの始まりは、642年ごろのオスマン帝国時代と言われています。アラブ人(当時のオスマントルコ人)が、現在のイランにあたるペルシャに上陸した際、ペルシャには小麦などの穀物ベースのお菓子が存在していました。そのお菓子にアラブ人が持ち込んだ砂糖、ハチミツ、デーツやりんごなどの材料が合わされ、甘いお菓子が作られました。そのお菓子は「高度で洗練されたお菓子」として扱われ、領土全域に広がりました。これがハルヴァの原点だと言われています。
その後、様々なバリエーションのハルヴァが登場します。7世紀にはマッシュポテトと牛乳を混ぜたハルヴァ、13世紀から16世紀初頭のインド=スルタン朝時代にはセモリナ粉が用いられた、柔らかいタイプの「スージー・カ・ハルワ(Suji ka Halwa)」と呼ばれるハルヴァが作られるようになりました。砂糖を焦がし、ローズウォーターを混ぜた飴に包まれたお菓子「ムカファン(mukaffan)」も、ハルヴァの一部として作られることもありました。
そしてハルヴァは、インドからバルカン半島(ギリシャ・ルーマニア・ブルガリアほか)、そして北アフリカへと広がり、伝統のお菓子となっていったのです。
ハルヴァが食べられるタイミング
ハルヴァは以下のような目的で作られたり、食べられたりしています。
- 願い事が叶った時など、喜ばしいことがあった時。
- 人が亡くなったあとの数日の間。
- カトリック教会の宗教行事「四旬節」の日(復活祭の40日前から数えて数日間)。また、四旬節の前の「霊の土曜日」。
- イスラームの宗教行事「シャアバーン」と呼ばれる日(アッラーがこの先一年の人の運命を決める日)。
- にんじんやぶどうのハルヴァは、寒い冬の時期。
ハルヴァの語源
ハルヴァは、オスマン帝国時代にペルシャ(現在のイラン)で食べられていた甘いお菓子のことを、アラブ人が「ヒルヴァ」と呼んでいたのが語源とされています。アラブ人はハルヴァの元となったそのお菓子のことを、アラビア語で「甘い」という意味を持つ「ヒルヴァ」と呼んでいましたが、ペルシャ人はそれを「ハルヴァ」と発音したため、のちにハルヴァ(halwa)と呼ばれるようになったと言われています。
また、中東ではハルヴァのことを「ハラウェーヤート」と呼びます。ハラウェーヤートは、甘いお菓子、という意味を持つ言葉でもあります。
ハルヴァの食べ方
ハルヴァは、プディング状の柔らかいタイプと、乾燥させて固めた固形タイプに分類されます。
柔らかいタイプは、スプーンで食べます。バターやギーなどの油が使用されており、手で食べようとするとベトベトになってしまうためです。食べると、口の中でとろけるような不思議な食感を味わうことができます。一方、固形タイプのハルヴァは手でつまんで食べます。固形タイプで大きいサイズの場合は、ナイフで一口サイズにカットして食べることもあります。
材料には、ピスタチオやアーモンドなどのナッツ類などが使用されているため、ハルヴァは全体的に高カロリーです。一度に大量に食べるのはおすすめできません。手で小さくちぎって食べるか、スプーンで軽くひと口食べるのがおすすめです。紅茶やコーヒーなどと相性が良いので、ぜひ一緒に食べてみてください。
ハルヴァの作り方
基本レシピ
【材料】
- ごまのペースト(タヒーナ) 400g
- タヒーナの油とバター 計2カップ
- 小麦粉 5カップ
- ハチミツ 160ml
- ごま 200g
【作り方】
1.タヒーナの油とバターを加熱し、小麦粉に混ぜ弱火にかける。
2.きつね色になったら、タヒーナをいれる。
3.別の鍋でハチミツを約100℃まで加熱。
4.熱したハチミツとごまを、2.に入れよくかき混ぜる。
5.角バットなどに入れて表面を平らにし、冷蔵庫で冷やして固める。
6.ひとくち大にカットして完成。
国・地域別のレシピ
国・地域別で作り方・食べ方は変わります。以下、それぞれのハルヴァの食べ方です。
<マグリブ>
- 果物のハルワ……りんご、桃、干しブドウ、クスクス、バター、ハチミツ、クスクスを混ぜて作る。
- ハルワ・シェバキア……胡麻入りビスケットを揚げたものを、ハチミツに浸して作る。
- ハルワ・シザーム……砂糖を色が着くまで焼き、胡麻と混ぜ固めて作る。
<イラク>
- ハルワ・アルタムル……ナツメヤシの実(デーツ)を入れて作る。
- ハルワ・シャリーヤ……極細パスタ、牛乳、砂糖を混ぜて作る。
- ハラワ・ティンマン……米粉を用いて作る。
- ハラワ・ジザル……にんじんで作る。
<トルコ>
- ヘルヴァ……小麦粉とバターを用いて作る。
- カシュク・ヘルヴァス……セモリナ粉で作る。
<新疆ウィグル自治区>
- ペースト状のハルヴァ……羊の脂、小麦粉、砂糖で作る。
<ギリシャ>
- デンプンのハルヴァ……コーンスターチ(デンプン)で作ったハルワの上に、砂糖と牛乳を炒めた固いカラメルをかけて作る。
- ハルヴァス・シミグダレニオス……セモリナ粉、シロップ、ナッツ、オリーブオイル、レモン、シナモンを用いて作る。
<イラン>
- ペルシャ風・ハルヴァ……セモリナ粉、ローズウォーター、お湯で溶かした砂糖、高級スパイスのサフランなどを用いて作る。
<アフガニスタン>
- テーブルビートのハルヴァ……にんじんと同じ位にポピュラーなハルヴァの材料であるテーブルビートを用いて作る。
- 穀物のハルヴァ……全粒粉(チャパティを作る粉・アーター)で作る。
<インド>
- にんじんのハルヴァ……ギー、セモリナ粉、砂糖で作る。
- スージ・ベーサン・ハルヴァ……セモリナ粉、ひよこ豆粉を使用して作る。
ご家庭で手作り・簡単アレンジレシピ
<にんじんのハルヴァ>
産後や病後の回復食として食べられる、柔らかいタイプのハルヴァです。
【材料】
- にんじん 中サイズ4本
- ギー(無塩バターでもOK) 小さじ1・大さじ2
- 牛乳 1カップ
- 砂糖 大さじ2
- カルダモン(ホール) 2個
- カシューナッツ 5個位
- レーズン 大さじ1
【作り方】
1.にんじんをすりおろす。(フードプロセッサーがあると便利)
2.小さじ1のギー(または無塩バター)をフライパンに入れて溶かす。
3.2.で使用したフライパンに、カシューナッツとレーズンを入れ、弱火でこんがりするまで焼く。(取り皿に取っておく)
4.すりおろしたにんじんを、3.のフライパンに入れて中火〜弱火で、5分程炒める。
5.牛乳・砂糖・カルダモンホールを加え、混ぜながら水分がなくなるまで弱火で炒める。
6.5.をお皿に盛り付け、3.のカシューナッツとレーズンをトッピングして完成。
温かいままでも、冷めても美味しく食べることができます。(カルダモンホールは取り除いてください)
<スージのハルヴァ>
インドなどの南アジア地域で、お祝いの席や朝食としても食べられる、ペーストタイプのハルヴァです。
【材料】
- スージ(粗挽きセモリナ粉) 100g
- バター(またはギー) 50g
- 砂糖 150g
- 水 450cc
- カルダモンホール 2粒
【作り方】
1.熱したフライパンにバターを入れて溶かす。
2.スージを加え、弱火できつね色になるまで混ぜ続ける。
3.別鍋で砂糖・水・カルダモンホールを煮立たせて、シロップを作っておく。
4.スージが炒め終わったら、そこへ3.のシロップを注いで、水分がなくなるまで煮詰める。
5.冷やすと固くなるので、少しゆるめに煮詰めて火を止める。
6.お皿に盛り付けて完成。
冷めても美味しく食べることができます。(カルダモンホールは取り除いてください)
ハルヴァが買える場所
業務スーパー
言わずと知れた庶民の味方、業務スーパーでは近年、中東からの輸入食品が多く取り揃えられています。トルコ産(プレーン味)のハルヴァが購入可能です。
HALAL MARKET
HALAL MARKETは東京代々木のモスク・東京ジャーミィ内にある、ハラルフードを扱うお店です。2019年にオープンしました。ジュースや肉などの食料品はもちろん、装飾品、衣料品なども販売されています。
2020年からは、オンラインショップもオープンし、遠方からでも中東の食材を購入できるようになりました。プレーンの他、ココアとピスタチオのハルヴァが販売されています。プレーンタイプのハルヴァが他のお店に比べて若干お買い得です!
ボンゴバザール
ボンゴバザールは埼玉県三郷市にあり、ハラールフードを中心に販売するスーパーマーケットです。首都高を利用すれば、都内からでも気軽に買い物を楽しむことができます。地元のみならず、関東近郊の外国人も多く訪れ、非常に人気のお店です。トルコ産のハルヴァが購入できます。
通販
<Amazon>
ピスタチオ味や伝統のレシピ・タヒニを使用したハルヴァなど、様々な種類のハルヴァが購入可能です。
<楽天市場>
トルコ産、チュニジア産などのハルヴァが購入できます。プレーン(胡麻)味の他、チョコレートフレーバーやロシア産・ひまわりの種のハルヴァも販売されています。
<Halal Store Japan>
Halal Store Japanは、ハラール食品の通販サイトです。にんじんのハルヴァが購入可能となっています。
<East Jerusalem Goods>
East Jerusalem Goodsは、高品質の東エルサレムフードを販売する通販サイトです。日本への発送も可能なので、ローズヒップ、全粒セサミ、ピスタチオ、バニラの4種類が楽しめるセットも販売しており、伝統的かつオーガニックなハルヴァを食べたい方におすすめです。
最後に
今回は、中東伝統のお菓子「ハルヴァ」についてお伝えしてきました。2010年に出版された、米原万里さんの著書「旅行者の朝食」の文中にハルヴァは登場しました。読者が次々とハルヴァを買い求め、その頃からハルヴァの未知なる食感が注目を集めているようです。「試しに食べてみたい!」という場合には、業務スーパーやショッピングモールの輸入食材店・通販などでぜひ購入してみてください。
アレンジレシピではご家庭で簡単に再現できるものをご紹介しました。通販などでタヒニ(ごまペースト)とデーツシロップを購入し、小麦粉を混ぜて炒めれば、簡単にハルヴァは作れますよ。コーヒーやチャイ(紅茶・ミルクティー)などと一緒に、中東伝統のお菓子「ハルヴァ」をぜひご賞味ください。