Share

Art

ファッションからダイバーシティまで、情熱を映し出すイスラエル人フォトグラファー

インタビュー|ヤリーブ・ファイン(フォトグラファー)

by Rotem Kles |2020年09月11日

Model: Sofia Mechetner by Yariv Fein and Guy Kushi

イスラエルで最も影響力のあるフォトグラファーの一人として知られるヤリーブ・ファイン氏。最近ではイスラエルで実施された大型キャンペーンのファッション写真や、印象的な個人プロジェクトも手掛けています。


「写真に興味を持ち始めたのは、子どもの頃からですね。手にカメラを持っている子どもの頃の写真がたくさんあります。父が写真を撮るのが好きでしたが、個人的により興味を持ち始めたのは兵役前で、友達や旅行、ナイトライフのドキュメンタリーを撮り始めました。もちろんその時はプロではありませんでしたが、時間が経つにつれてどんどん写真が好きになり、自分の写真にかける情熱に気付いたのです。瞬間を捉え、永遠に保存する・・・これが写真の魅力ですね。写真は新しい記憶を作り出すのです。何年も昔に撮影した写真でさえ、今その写真を見ることで頭の中に新しい記憶として作られるのです。」


今回は、イスラエルの写真業界の第一線で活躍するヤリーブ・ファイン氏に、写真を撮り始めた頃のこと、来日時のこと、今後の目標についてお話を伺いました。



ファッション撮影から始まったフォトグラファーとしてのキャリア

ヤリーブ氏のフォトグラファーとしてのキャリアは、ファッション撮影から始まりました。有名なファッションフォトグラファーに弟子入りし、そこで撮影のノウハウを学んだと語ります。


「私にはミリ・ダヴィドヴィッチさんという師匠がいました。彼女はイスラエルのファッション業界で高い評価を受けるファッションフォトグラファーです。彼女のもとで5年間修業し、撮影の全てを教わりました。とても感謝しています。彼女は、私が夢見た一番の学校であり、たくさんのことを学ばせてもらいました。そして全て準備が整ったと感じたとき、自分の道を進むことにしました。


一番最初の仕事は、雑誌用の非商業用ファッション記事に使う写真撮影でした。そこでは実力が試されます。最初はなかなかうまく行かず、納得する写真が撮れるまで、止まることなく写真を撮り続けましたね。そして少しずつですが、イスラエルのファッションマガジンに評価されるようになり、ついにフォトグラファー業界の仲間入りを果たしました。プロジェクトの数も予算もどんどん大きくなり、間違いなく私の努力は報われましたね。



最近の若手フォトグラファーには、自分をアピールするたくさんの方法がありますが、私がまだ若手だった頃は、雑誌や新聞などに自分の写真が掲載される以外、ポートフォリオとして使えるものがありませんでした。今の時代は、若手フォトグラファーにとって有利だと思います。


その名を世に轟かせた、世界モデルを起用したプロジェクト

ヤリーブ氏はこれまで、FOXやデルタ、レイバンのような大手ファッション関連の大型キャンペーンに参加していますが、その中でも特にイスラエルで最も大きなドラッグストア「スーパーファーム」のキャンペーンを手掛けたことで、彼の名を轟かせることとなりました。


From SuperPhram Campaign, Bar Refaeli by Yariv Fein and Guy Kushi

彼とビジネスパートナーのガイ・クシ氏が手掛けたこのキャンペーン動画は、世界で活躍するモデルのバー・ラファエリ氏を起用し、大反響を呼びました。広告業界の人々の興味を引くために作られたこの動画は、動画再生数をぐんぐん伸ばし、そしてこれがきっかけとなり、仕事の幅どんどん広がっていったのです。

様々なブランドのファッション撮影だけでなく、有名イスラエル人歌手のミュージックビデオ制作など、大きなプロジェクトを多く手掛けました。


「私たちにとって、スーパーファームのキャンペーンでモデルのバー・ラファエリ氏と仕事ができたことはとても有意義であり、また多くのチャンスを手にするきっかけとなり感謝しています。」


スーパーファームのキャンペーン動画はこちら


トランスジェンダーモデルを起用した挑戦的なプロジェクト

直近では、自分自身を表現することに対する興味と願望が高まり、ヤリーブ氏は個人プロジェクトに注力しています。その一つがトランスジェンダーモデルを起用したプロジェクトです。

そのプロジェクトでヤリーブ氏は、トランスジェンダー女性のアヴィア・アシュケナージ(Avia Ashkenazi)氏と一緒に、イスラエルのトランスジェンダーコミュニティのドキュメンタリーを手掛けています。きっかけとなったのは、「ミス・トランス」というコンテストの広告。この広告を見たヤリーブ氏は、イスラエルのプライドセンターに連絡をし、トランスジェンダーの方の写真を撮るプロジェクトを提案しました。アイディアはすぐに採用され、瞬く間にプロジェクトがスタートしたのです。


「最近は人物撮影など、単発プロジェクトに興味を持っています。一枚の写真というより、幅広いシリーズを見せる能力です。例えば、最近ではトランスジェンダーのモデルを起用したプロジェクトを手掛けたのですが、撮影はエルサレム中で行いました。トランスジェンダーの方々をあまり見かけない場所で、型破りなモデルがファッションを表現する・・・とても挑戦的なプロジェクトでしたね。これは私の個人プロジェクトのごく一部ですが、写真を通してメッセージを伝えるということは、とても重要だと感じています。」


From “Look at me”, Avia Ashkenazi by Yariv Fein

From “Look at me”, Israela, by Yariv Fein
From “Look at me”, Efrat, by Yariv Fein
From “Look at me”, Jennifer Kim, by Yariv Fein

「まずは女性の撮影から始めました。そしてその中の一人がアヴィア・アシュケナージさんだったのです。彼女はコンテストには出場していませんでしたが、プロジェクトに興味を持ってくれて、すぐにお互いに繋がりを感じました。そしてイスラエル移住、兵役、ユダヤ教への改宗など、彼女のプライベートライフにおける変化を記録し始めたのです。ここ数年間の彼女の変化を撮り続けていますが、彼女から得るインスピレーションは私のプロジェクトに反映されていますね。


From “Look at me”, Avia Ashkenazi by Yariv Fein

このプロジェクトでは彼女以外のトランスジェンダーモデルも撮影していますが、アヴィアはプロジェクトのカギとなる存在であり、大きな役割を果たしています。


From “Look at me”, Avia Ashkenazi by Yariv Fein

下の写真は彼女のエルサレムの自宅で撮影したもので、悔い改めの過程を写したものです。プロジェクトは私が仕事として行うファッションプロジェクトととても似ていますが、あくまでも非商業的に行っています。そして私の世界に招くのです。」


From “Look at me”, Avia Ashkenazi by Yariv Fein
From “Look at me”, Avia Ashkenazi by Yariv Fein

このプロジェクトで撮影された写真は、エレッツ・イスラエル美術館にて開催される「Local Testimony」という展示会にて、最近まで展示されていました。この展示会は2013年より毎年開催されており、イスラエルのジャーナリズム写真とドキュメンタリー写真を展示しています。有名メディアではなかなか目にすることのない、プロフェッショナルなドキュメンタリー写真のお披露目の場となっているのです。


今回の展示会では、数多くのフォトグラファーが撮影した、「フェイクニュース」文化や「何が現実で何が嘘なのか」といった幅広いトピックに関する写真が展示されました。ニュースや社会、コミュニティや自然、環境といったテーマの写真が多く展示される中、ヤリーブ氏は「宗教と信条」というテーマの下、アヴィア氏の変貌の様子を写した作品を展示し、3位を受賞しました。


From “Look at me”, Avia Ashkenazi by Yariv Fein

またヤリーブ氏は、孤立した民族を撮影するプロジェクトも手掛けており、アフリカのマサイ族の女性を撮影しています。バカンスで訪れたタンザニアのザンジバル島で、ユニークな民族衣装と宝石を纏うマサイ族女性を撮影し、坊主頭やカラフルで派手な宝石なども被写体として撮影。大自然を背景に映し出す彼女たちの姿は、より特別な印象を醸し出すのです。撮影した女性の中には、初めてカメラを目にした方も。


WOMEN OF ZANZIBAR by Yariv Fein

日本のアーティストとのコラボレーションも視野に

これまで2回来日を果たし、日本で展示会も開催するなど、日本好きのヤリーブ氏。
東京では人ごみ溢れる騒々しい街を歩いていても、ふと目に入ったお寺に入るとそこには静けさがある。そんな東京のアドレナリンと静けさが融合する様子が特にお気に入りだそうです。
そして今後の目標の一つに、日本のアーティストとコラボレーションがあると語ります。



「他のアーティスト同じく、これからもプロジェクトを作り、そして止まることなく作品を創り続けること、これが今後の目標です。あとは自分の作品とプロジェクトを世界中で展示すること。

日本に対する情熱もあるので、ぜひ日本の方とコラボレーションの機会があれば嬉しいですね。いつかきっと、実現させますよ。」


ウェブサイト

https://guyandyariv.com/


Instagram

https://www.instagram.com/yarivfein/

https://www.instagram.com/guyk_yarivf/