みなさん、初めまして。
私たちは、イスラエルでグラフィックノベルを制作しているバヴア(ヘブライ語でリフレクションの意)です。まず、グラフィックノベルと聞いて「何?」と思われるかも知れません。グラフィックノベルと呼ばれる作品は、人々の日常を描いていたり、コマと呼ばれるマンガの枠やキャラクターの動きが、日本のマンガに比べるとゆったりとしている点が特徴的です。だからこそ、物語のキャラクターの気持ちを感じながら読むことができる手法ともいえます。
私たちがイスラエルで制作をし始めて、5年が経ちました。「なぜイスラエルで作品を制作しているのか?」とよく聞かれます。現在はメンバーの二人がイスラエル在住ということもありますが、多様な人々の暮らすイスラエル社会に私たちが強い関心があること、またそこで見られる人々の日常を作品にすることで、より普遍的なメッセージを伝えていけるのではないかと考えています。例えば家族のことであったり、恋人のことであったり、どこにいてもだれもが感じる気持ちであったり悩みだったり。バヴアは、インタビューを通してそんなささやかな人々の日常を物語に作り、イスラエル人アーティストとともに作品を制作しています。
これから毎月ISRAERUウェブマガジンで、そんなイスラエルのささやかな日常の物語を綴っていきます。
*バヴアは、日本人とイスラエル人のハーフで英語教師をしている井川アティアス翔と日本人で博士課程後期の社会人学生である戸澤典子が組むグラフィックノベル制作ユニットです。

解説
この作品は、従兄弟の成長によって、彼との関係が変わってしまったことを想う小さな物語です。以前、彼は叔母と共にべエルシェヴァというイスラエル南部の都市に住んでいました。叔母はテルアビブ(イスラエルの中心都市の一つ)からわざわざ会いに来る私を可愛がってくれました。
ある時、三人でネゲブ砂漠にちょこんと佇む「マムシット」という遺跡に一緒に行ったことがあります。イスラエルには珍しく、マムシットは古代のネバティア人が建てた町です。アラビア半島と地中海をつなぐ「インセンス(お香)ロード」の停留所の一つで、今や観光地になっています。マムシットに行った時のように、従兄弟が子供のうちにもっと一緒に旅行をしておけばよかったなと今は思います。
現在、叔母と従兄弟はイスラエルに数多く存在する「キブツ」に住んでいます。キブツはもともと社会主義に則って作られたコミュニティで、世界に類を見ないイスラエル独自の集団コミュニティです。コミュニティの中では様々な活動や催しがあり、従兄弟の生活は充実しているようです。
お互い忙しくなり、なかなか前みたいにゆっくり時間を共にすることはなくなりました。イスラエルは小さな国なので会うことが難しいわけではないのですが、人と人との間の距離は別問題なのかなと感じながら作品を制作しました。
*昨年12月に、『だれも知らないイスラエル:「究極の移民国家」を生きる』を花伝社から出版しました。ぜひご覧ください。
【アーティスト情報】
オメール・ポラット
オメール・ポラットはべッツァレール・アート・デザイン・アカデミーのビジュアル・コミュニケーション学部を卒業し、現在はテルアビブでイラストレーター・コミックアーティストとして活躍している。
彼のウェブサイトはこちら→https://www.omerporat.com/contact