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Art

失われた創造力を再教育する。イスラエル人アートセラピスト、Nona Orbach(ノナ・オーバック)氏

独占インタビュー|ノナ・オーバック


アートの世界にはルールはありません。それにもかかわらず、大多数の人々は、創造することに良し悪しがあると教えられて育ちます。アーティストとして、Nona Orbach(ノナ・オーバック、以下ノナ氏)は、さまざまな技法と媒体を活用して自由に創造し、彼女のアートで既存の考え方を越え、創造力を呼び起こす方法を確立しました。アートセラピストであり教師でもあるノナ氏は、人々に、物事にとらわれずに自分を表現する自由を再教育し、「自分らしくあるための許容」の重要性を説いています。ISRAERUは、彼女の最大の人生の教訓、アートワーク、そして国際的な教育者、セラピストとしての彼女のキャリアについてノナ氏と話すことができました。



ノナ氏の芸術的プロセス

ノナ氏は、プロジェクトを実現する際に独自のプロセスを持っています。プロジェクトのメッセージと全体像についてしっかりとした計画を立てる代わりに「本能に委ねる」。これが彼女がアートを創る際のプロセスです。


「朝、私のスタジオで、『何をしたいの?』と自分の手をみながら尋ねます。そして私はそれに従うのです。このようにして、私は自然で本物のアートを創りだすことができます。必ずしも完璧とは限りませんが、創作にストレスや期待はありません。大規模なシリーズに取り組んでいるので、次に何を展示するかを選びます。」



ノナ氏はこの創作プロセスの効果を信じ、今では彼女のアート活動だけでなく、自身の教訓とセラピーの基礎にもなっています。


自分らしくあるための許容

「愛の最も深い意味は、あなたが順応しようとしたり、誰かになりすまそうとしたりするのではなく、あなたが自分自身を愛することだと思います。」


ノナ氏はこれを「自分らしくあるための許容」と呼んでいます。これについて彼女は自身の新しい著書「The Good Enough Studio」に示しています。彼女は、学生やクライアントに自分の創造性を自由にコントロールさせ、特定の作品を創作することを期待せずにアートを瞑想的な体験tとして捉えることが重要であると信じています。


ノナ氏は教師としてのキャリアの中で、多くの生徒が創作に対する指示に依存していることに気づきました。


「東京では、日本のアートセラピストと教育者のためのワークショップを開催することができました。このワークショップでは、目を閉じてアートを作る練習を始めました。ワークショップに参加した全員が非常に長い間作業をし、止める気配がありませんでした。私が参加者に止めるタイミングを知らせるのを参加者たちは待っていて、彼らが感情的になりすぎても、私が指示を出さない限り絵を描き続けていることに気づきました。」


これはノナ氏にとって、故郷のイスラエルと日本の文化の違いを理解する上で重要な瞬間でした。


「日本の人々はとても思いやりがあり、アートの面で他の国の人々とどのような違いがあるのかを見るのは興味深いことでした。」


「自分らしくあるための許容」の考え方に沿い、ノナ氏は、教示することは単なる提案であり、芸術を行う上での絶対的な正しい方法を教えるものではないと断言しています。


「私の洞察は私にとっての有効な提案にすぎないことは、生徒とクライアントも理解しています。彼らは私の提案から自分自身が望むものを選ぶことができます。そして、私は彼らに創造性を促す自身の方法を発見することも強く勧めています。」


ノナ氏の日本とのつながり

ノナ氏は、日本でセラピーワークショップを実施しているだけでなく、日本を重要な場所として捉えています。


「私にとって、日本は魔法のような国です。」


ノナ氏は日本を訪れる前から日本に親しみを持っていました。


「美術学校で勉強していたとき、第二次世界大戦前の日本について勉強した陶芸の先生がいました。彼女は私の手に何かを置くまで目を閉じておくように私に言いました。目を開けると、美しい彫刻が施された石が見えました。先生から、これは古くからの楽家(雅楽を伝承してきた家系)が作った日本の茶碗の破片だと言われました。」


そして、ノナ氏は続けました。


「美しい陶器の茶碗の背後にある文化、人々、歴史についての質問がすぐに頭に浮かびました。私は興奮と畏怖の念を持って震えていました。これが私と日本との初めての出会いです。」


これ以来、ノナ氏は日本とのより深いつながりを確立しようと努めました。そして 2008年、ノナ氏は東京で開催された展覧会で自身のアートを展示することができました。


「私のアートを日本で展示するのはとても素晴らしい経験でした。驚いたことに、日本の人々は私の仕事にとても興味を持っていて、意義のある質問を沢山いただきました。私のアートに本当に興味を持っている人々に出会うのは最高の気分です。」


この展覧会は、ノナ氏と日本の繋がりをさらに強くし、2008年から京都の展覧会に出品し、日本の学生にアートを教え始めました。彼女にとって日本は、京都のように、訪れては心を清めるインスピレーションの場としての役割も果たしました。



「京都は私の神社です。街を訪れると、行ったことのない界隈で冒険に出かけます。これらの旅行の間、私は途中で人々と話し、考えを書き留めています。私が毎年京都で行う瞑想的な経験なのです。」


パンデミックのため、ノナ氏は日本を再訪することができませんでしたが、できるだけ早く訪問したいと考えているそうです。


ノナ氏の人生のゴール

「私は世界により良いものをもたらすために一生懸命働いています。」


過去6年間、ノナ氏はイスラエルの教育システムをより柔軟にし、創造性を育むためにたゆまぬ努力を重ねてきました。彼女はさまざまな団体や組織と協力して、世界中でそれを必要とする多くの人々に彼女の人生の教訓を教えることを目指しています。


「私はできるだけ場所を選ばずに教えるのが大好きです。実際、イタリアや他の多くの国で教えていますし、これからも続けていくつもりです。」


共有すべき知識がたくさんあるというノナ氏。生徒やセラピーのクライアントに教えることで、生まれながらの創造性で自分を表現する能力を再燃させることができるそうです。最後に、人生のゴールについてノナ氏は次のように話しました。



「他の人から学び、年齢を重ねるごとに得た知識を共有することが人生の目的だと思います。私のワークショップで参加者の方々に多くの刺激を与えたいと思っています。」


ウェブサイト

http://www.nonaorbach.com/

アートブログ

http://nonaorbach.com/blog/

スタディグループ

https://www.facebook.com/groups/2004295959798489

The Good Enough Studio

https://www.amazon.com/Good-Enough-Studio-Nona-Orbach/dp/B08HT867JM