人工知能(AI)をより身近に、より高速に、より低消費電力化するために欠かせない「エッジAIチップ」。AIの未来を語るうえで欠かせないエッジAI分野で、イスラエル発のスタートアップ Hailo(ハイロ)がグローバルな存在感を急速に高めています。
エッジAIとは、スマートフォンのような私たちの身近な機器の中で、AIを直接動かす技術のこと。ChatGPTなどのAIがクラウド(インターネット上)で動いているのに対し、エッジAIはネットの“端(エッジ)”にある実際のデバイスで処理を行うため、こう呼ばれていています。電力効率が高く、高性能な専用半導体チップは、このエッジAIを支える重要な技術の一つ。小さなチップに驚異的な演算能力と省エネ性能を搭載し、AIの可能性をクラウド外にまで広げている同社の技術はいま、世界中のスマートカメラや自動運転、ロボティクスの現場で新たな標準となりつつあります。

エッジAIチップ分野注目のスタートアップHailo
Hailoは、AIとハードウェアにおいて高い専門性を持つイスラエル国防軍のエリート技術部隊出身者たちにより、2017年にテルアビブで創業されました。設立から数年で Intelなどの巨大企業とも比較されるようになり、「イスラエル版NVIDIA」と称されるスタートアップに成長しています。
Hailoが開発しているのは、主に小型デバイスやエッジ環境向けのAI推論用チップ。中でも代表的なプロダクトである「Hailo-8」は、消費電力が非常に低く、限られた電力環境でも安定して動作するという強みを持ちます。手のひらサイズながら毎秒26兆回の演算(TOPS)を可能にする、AI処理に特化したアーキテクチャで、スマートカメラやドローン、自動車、産業用ロボットなど、さまざまな分野で採用が進んでいます。

HailoのエッジAIチップがもたらす変革
私たちが日常的に利用しているAI技術の多くはクラウド上で動作していますが、その一方で通信の遅延やセキュリティ上のリスクも抱えています。HailoのAIチップはそうした課題を回避し、たとえば自動運転車や防犯カメラ、工場内の機械などリアルタイム性が求められる現場で、デバイスそのものを使った AI処理の完結を可能にしています。2023年にはスマートカメラ専用に設計された「Hailo-15」を発表。カメラそのものが映像を理解し、必要なデータのみを判断して処理するという、まさに次世代のAI活用を可能にするこの製品により、交通監視やスマートシティ、物流分野への展開をさらに加速させました。
日本市場とHailo エッジAIチップの親和性
少子高齢化による労働力不足から、自動化需要が高まる日本にとって、Hailoのような低消費電力かつ高性能なエッジAIチップは非常に相性のよい技術。すでに日本企業との連携も始まっていて、今後ますます拡大されることが予想されています。こうした成長を背景に、Hailoは2022年の資金調達ラウンドで約12億ドル(約1800億円)の企業評価額に達し、ユニコーン企業の仲間入りを果たしました。
さらに、気候変動への対応やエネルギー効率の向上が求められる現在、Hailoは持続可能な未来を支える重要なプレイヤーとしての役割も期待されています。ESG投資の観点から見ても、同社は今後も注目され続けるスタートアップといえるでしょう。
WazeやMobileyeといったグローバル企業を生み出してきた、イスラエルのハイテク産業における次のスター候補である、 Hailo。エッジAI技術の進化を加速させ、日常の中でより多くの可能性を切り開いていく同社の挑戦にぜひ注目してみてください。
■ Hailo 公式ウェブサイト:https://hailo.ai/