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SECURITY

スマホでテロの脅威を検知? イスラエル企業が開発する新たなAIセキュリティ技術

by ISRAERU 編集部 |2026年10月28日

イスラエルのセキュリティ企業SDSが、スマートフォンで乗務員のリスクを検知するAIシステム「TruthAI」を開発しました。数分で検査できる手軽さが注目される一方、誤判定やプライバシー保護など、実用化に向けた課題も残されています。


空港で駐機中のフライドバイ航空機と搭乗風景

航空機の安全を脅かす「内部からの脅威」

航空機の安全対策では、乗客が武器や危険物を機内に持ち込むことを防ぐため、空港での保安検査が行われています。しかし、厳重な検査を通過した乗務員自身が危険な行動を取ろうとした場合、従来の仕組みだけでは防ぐことが難しいという問題があります。


2015年には、ジャーマンウイングス9525便が副操縦士の意図的な行為によってフランス・アルプス山脈に墜落し、乗客・乗員150人全員が亡くなりました。この事故は、通常の採用審査や定期的な健康確認だけでは、将来の危険な行動を確実に予測できないことを浮き彫りにしました。


こうした背景から注目されているのが、イスラエル企業のSuspect Detection Systems(SDS)が開発する「TruthAI」です。スマートフォンを使った新しい保安検査の仕組みで、乗務員などの回答をAIで分析し、潜在的なリスクを検知することを目指しています。


顔認識技術とAIによるリスク評価システムをイメージしたセキュリティ検査

スマートフォンで数分間のセキュリティ検査

TruthAIでは、検査対象者がスマートフォンの画面に表示される一連の質問に回答します。システムは回答に伴う認知的・心理生理学的な反応を分析し、機械学習によってリスクを評価します。従来のように身体にセンサーを装着する必要がなく、数分程度で検査できる点が特徴です。


SDSによると、この技術の基盤には、同社が長年開発してきた「COGITO」という検査システムがあります。同社は、2001年の米同時多発テロ以降に高まった保安対策への需要を背景に、従来のシステムを発展させてきました。これまでに蓄積した技術やデータを活用し、スマートフォンだけで実施できる検査を目指しています。


同社の技術は、情報機関や警察、航空関連企業などでの活用を想定してきました。イスラエル国内でも、財務省が関わる非接触型セキュリティ検査技術の検討プロジェクトに同社が参加したと報じられています。


航空機の乗務員に限らず、空港や国境施設など、迅速な本人確認とリスク評価が求められる場所での応用も考えられます。


フライドバイ便のテロ容疑者、ハマム・アル=ハマミ
フライドバイ便のテロ容疑者、ハマム・アル=ハマミ

高い利便性の一方、誤判定のリスクも

ただし、AIによる検査が人間の意図を正確に見抜けるとは限りません。
同社が示す非接触型検査の数値では、危険性がない人を誤って疑わしいと判定する「偽陽性」が4%、危険性のある人を見逃す「偽陰性」が10%とされています。ただし、これらの数値については、検証方法や対象者、実際の運用環境などを確認する必要があります。


仮に偽陽性率が4%であれば、1,000人を検査した場合、危険性のない人が誤って疑われる可能性があります。一方、偽陰性率が10%なら、危険性のある人の一部が検査を通過してしまう計算です。実際の結果は検査対象者の構成や判定基準などによって変わります。


特に航空業界では、誤判定によって乗務員が不当に勤務から外されたり、追加調査を求められたりする可能性がある一方、脅威を見逃せば重大な事故につながりかねません。AIの判定だけで乗務員の適性や危険性を決めるのではなく、追加確認や人間による判断を組み合わせることが重要です。


また、心理的な反応は、緊張や疲労、質問の受け止め方など、悪意以外の要因によっても変化します。こうした反応から危険性をどこまで正確に推定できるのかは、慎重に検証されるべき点です。


空港施設で行われる保安検査とセキュリティチェックの様子

プライバシーと国際的なルールが壁に

もう一つの大きな課題が、プライバシーと法規制です。心理的な反応を分析する技術は、本人の内面や行動傾向を推測するために使われる可能性があります。そのため、検査データの保存期間や利用目的、第三者への提供、本人への説明などについて、明確なルールが必要です。


欧州では、一般データ保護規則(GDPR)に加え、EUのAI法(AI Act)がAIによる感情認識などに厳しい制限を設けています。ただし、すべての心理分析技術が一律に禁止されているわけではなく、利用目的や場所、対象者、システムの分類などによって適用される規制は異なります。TruthAIのような技術が実際にどの規定に該当するかについても、個別の検討が欠かせません。


イスラエルでは、テロ対策や国境警備における新技術の活用が重要な課題となっています。TruthAIが航空保安の現場で採用されれば、従来の検査を補完する手段になる可能性があります。しかし、国際線で運用するには、各国の法制度や航空会社の基準との整合性も求められます。


スマートフォンを使って短時間で検査できるという利便性は、大きな魅力です。一方、AIが示す「疑わしさ」を、そのまま危険性の証明とみなすことはできません。
テロ対策の高度化と個人の権利をどう両立させるのか。SDSの技術は、イスラエルのセキュリティ技術が切り開く新たな可能性を示すと同時に、AIを安全対策に導入する社会が向き合うべき課題も浮き彫りにしています。


*本記事はイスラエルメディアynetの報道をもとに構成しています。