前編では、SASEとそのメリットについて詳しくご説明いただきましたが、後編ではSASEとその導入に関する様々な疑問に対して、Cato Netoworks(ケイト・ネットワークス)日本法人カントリーマネージャーの田島弘介さんに一問一答形式でお答えいただきました。
―――ガートナー社は今後2025年までに70%の企業がSASE導入計画を立てると予想していますが、日本での現状の導入率はどの程度なのでしょうか?
導入「率」を正しく把握することは難しいので、個人的な感想となってしまうのですが、先ほどお話しましたように、以前は「SASE」という言葉自体が存在しませんでした。私は、ガートナーがSASEという言葉を発表した半年後の2020年の春にCato Networksに入社したのですが、その頃はSASEを即座に検討したい、導入したいというモチベーションのあるお客様はまだ主流ではなく、SASEという言葉は聞いたことがあるが、という反応の方がまだまだ多くありましたね。
同時期には、Cato Networksを含むベンダーは既にSASEという言葉を使いはじめていましたが、エンタープライズのお客様でもかなりアンテナを張っている方だけがSASEを意識していたという状況でした。全て統合してしまうという考え方があるんだとご理解いただいて、検討してみたいというお客様が増え始めたのが同じ年の秋頃からで、少しづつ理解が進んできたなと感じはじめました。
当社のSASEに関して言いますと、その頃は従業員数が数千〜1万名で、売上規模が8,000億円位の企業や、それより小さな規模の企業にお問い合わせいただくことがが多かったです。しかしその後SASEという言葉が世の中に認知され、かつCato Networksの認知度も上がってきたため、2021年から2022年にかけてさらに大手の企業からのSASEに関する問い合わせや導入が一気に広がり、現在では日本国内だけでも従業員数万人という様な大手企業でも、多くご採用をいただいています。
―――日本で認知が広がりはじめて約2年が経過したというところでしょうか。
仰る通りです。また去年からは、次世代ネットワークやセキュリティ基盤を検討する企業からいただくRFP(※1)、RFI(※2)に、私が知る限りほぼすべてのケースで、SASEやゼロトラストといった言葉がキーワードとして入っていました。SASEを調べてみるとCato Networksに行き着いた、という流れでお声がかかりだしました。
―――現状、大企業のほとんどが導入を検討されている状況にあるということでしょうか?
はい、どの企業からもSASEという言葉を聞くようになりましたし、パロアルト、VMWare、Cisco等のネットワークセキュリティの会社が、自社製品をSASEであるとしてPRしています。先程も申し上げました通り、SASEはポイントリューションを統合するというのがコンセプトのひとつなんですけど、当社のビジネスモデルとしてCatoクラウドは元々シングルプラットフォームを採用しています。一方、元々ポイントソリューションの製品を扱っている会社は自社製品をSASE化しなければいけないので、不足している部分を付け足さないといけない。そこで足りない部分は別の会社を買収したりすることで統合して、SASEソリューションという見せ方をしています。ですからSASEと一言で言っても、全部がシングルソリューションで出来るケースもあれば、いろいろ組み合わせることによってSASEになっているケースもありますので、見極めも大事になってきています。
―――サービスを選ぶ側はどのような見極めが必要なのでしょうか?
お客様にもよるのですが、例えば一言でSASEといっても、実はSD-WANにフォーカスしているというケースもあれば、セキュリティの特定機能にフォーカスしている場合もあります。ただ、最近はそのような特定機能の解決のみだけではなく、中長期的にネットワーク、セキュリティインフラ全体をどのように展開していくのが最も良いのか検討されているケースが増えてきていると感じます。
―――全てをシングルソリューションで提供しているCatoサービスが、大きなアドバンテージを持っていることが分かりました。新しい概念であるにも関わらず、かなりの数の企業が導入を検討されているんですね。
ネットワークセキュリティというキーワードでシステムを考えると、現状必ずSASEに行き着く状況にありますので、今後もこの流れは続き、需要は増え続けると思っています。
またCato Networksのソリューション提供にあたり、国内のパートナーエコシステムが確立されつつあります。日本でも既にCato Networks製品をかなりの数のパートナーに扱っていただいているので、お客様にとっても選びやすかったり、ローカルでのサポートを受けやすいというメリットも大きいと考えています。
日本法人は、私が入社してから半年後の2020年秋に設立されましたが、2017年から既に国内でのビジネスを展開しており、当初はマクニカネットワークスが代理店として、またIIJ グローバルソリューションズ、日立システムズ、NRIセキュアテクノロジーズ等が主なリセラーとして稼働していました。その後2020年以降はSCSK、兼松エレクトロニクス、KDDI等より多くのリセラーがパートナーとして当社の製品の取り扱いをはじめ、より国内で製品の提供・購入がしやすい環境が整ってきています。
―――どのような企業がSASEへの移行を急ぐべきと言えますか?
特にポイントソリューションでの対応にボトルネックを感じているお客様、またサプライチェーンが拡大したり、グローバル展開の結果グループ会社が増えてガバナンスが効きにくくなっていることに問題を感じているお客様にとっては、ソリューションを個別に選んでいくよりも、当社のようなシンプルなプラットフォームを選んでいただいたほうが、デメリットを排除してメリットも享受いただけると思います。
―――SASEは海外に多くの拠点を持つ、グローバル企業だけに導入を必要とされる概念なのでしょうか?
実はそんなことはないのです。グローバルに展開している企業の導入例は勿論多いですが、例えば国内のユーザーの例では、1000箇所を超える拠点を持っているが、国内でのみ展開している企業も含まれています。拠点が比較的短期間しか使われない建築関係の現場事務所だったり、不動産関連の企業等では、専用線を各拠点に引くよりも導入がしやすいということで重宝されています。最近は小売りやサービス業での導入例も増え、例えばドラッグストアのように国内だけで数百の店舗展開をしているようなクライアントにCato Networksをお選びいただくことも増えています。
またユーザー数の下限を設けているベンダーもありますが、当社は1拠点10リモートユーザーからサービス提供をしています。実際数十〜数百ユーザー規模の企業でも導入例は非常に多いですし、企業規模にかかわらず、複数ソリューションを積み上げることに起因する煩雑性は変わりません。また小規模企業は人材への依存度が高く、特定の人材が辞めてしまうと色々わからなくなってしまうケースも多いですから、Cato SASEのメリットは大企業と変わらず大きいと思います。
―――現在の日本企業のセキュリティ対策への懸念を教えてください。
サプライチェーンのサイバーリスクに関して、関連会社がサイバーアタックを受けたりするケースがが近年増えています。実際海外展開している大企業でも、実は海外拠点のセキュリティ対策は現地で行われていて、本社のI T部門などではよく把握できていないというケースは多く、そういった状況下でセキュリティ対策の十分でないどこかが1カ所でもサイバーアタックを受けると、本社を含め別の拠点も当然影響を受けてしまいます。実際、海外のネットワーク、別地域のネットワークまで日本の本社がちゃんとリーダーシップを持って取り組んでいるという企業だけではなく、言葉の壁の問題もあって、現地に任せきってしまっているパターンは結構多いのです。
また、企業買収などにより、異なるネットワーク、セキュリティーポリシーで複数のシステムを運用をされているケースも多くなってきています。その様なケースでは運用の煩雑さやコストが問題になり、システムの共通化を検討されるケースが多くなり、S A S Eのコンセプトに魅力を感じていただける企業が増えてきています。この様に既存の複数のシステムだけではなく、将来的な買収等による企業の規模拡大などの場合にもフレキシブルに運用を統合していくことが容易になります。
―――貴社サービスの代表的な導入事例を教えて下さい。
例えば、国内ですと大手旅行代理店のHIS様、生活用品大手のライオン様、早稲田大学様などにも当社サービスを導入いただいています。HIS様では、グローバル展開している海外拠点のネットワーク/セキュリティの属人化、ブラックボックス化をS A S Eを導入することで、可視化、一元管理の実現を行いました。ライオン様ではCOVID-19でリモートワークが必要になったこと、また長期的に見たWANの移行ということも含めて導入いただきました。早稲田大学様でも、やはり導入によりセキュリ対策や、リモート環境の向上を実現されております。
―――最後に、SASE導入を検討しているセキュリティリーダーたちにアドバイスが有ればお願いします。
ネットワークセキュリティをポイントソリューションで選びながら、確実に満たしていくというのはもう現実的ではなくなってきて、それらを一本化することが命題となっています。また従来型のオフィスで働く環境ではなく、リモートアクセスの環境や、外部クラウドへのアクセス等、それら全てを包含して考えていかなければいけないところにきています。ですからこれまでのポイントソリューションの積み重ねではなく、シングルプラットフォームのSASEを導入するメリットはこれからもどんどん大きくなってきます。ガートナーのメッセージにもあるように、長期で考えると導入は必然となってくると思います。是非一度導入についてご相談頂ければと思っています。
※1:RFP(Requset For Proposal)、ベンダーにシステムの提案を作成してもらうための提案依頼書。
※2:RFI(Requset For Informattion)、入札や調達の事前準備として、ベンダーに保有製品や提供可能なサービスの概要、あるいはその組み合わせや実績などの情報を提供してもらうための情報提供依頼書。